お役立ちコラム お墓の色々
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日本百観音とは?日本の名刹を巡る観音巡礼の旅
お寺巡りと言えば四国八十八ヶ所が有名ですが、関西~関東の広大な範囲でお寺を巡る「日本百観音」という巡礼行があることをご存知でしょうか。全部回るのは大変かもしれませんが、だからこそ、その達成感はひとしお。また、関西~関東の観光も兼ねて回れるのも魅力的です。
本記事では、日本を代表する巡礼行・日本百観音を紹介いたします。「四国八十八ヶ所を結願した方」「西国三十三所・坂東三十三所・秩父三十四所のいずれかを結願した方」「お寺の好きの方」は、ぜひご一読ください。
日本百観音とは?
西国三十三所・坂東三十三所・秩父三十四所を合わせた、100ヶ所の観音巡礼を指します。
観音巡礼とは、観音様(観音菩薩)を本尊とする寺院を巡礼することです。大小含めると全国には数百のコースがありますが、その中でも歴史が古く、代表的なものが西国三十三所・坂東三十三所・秩父三十四所です。京都の清水寺・東京の浅草寺など、東西の名刹を回る巡礼となります。
観音巡礼の由来
インドにおいて、修行僧がお釈迦様とゆかりのある聖地を巡ったことが、観音巡礼の発祥とされています。日本の場合、平安時代から観音信仰が盛んになり、僧侶が霊場を巡るようになりました。江戸時代になると、観光や旅行も兼ねて庶民の間にも広まっていきます。
また、日本の巡礼行としてもっとも歴史の深い西国三十三所では、その発祥は以下のように伝えられています。
「養老2年(718)、大和長谷寺の徳道上人は、閻魔大王より起請文と三十三の宝印を授けられ、世間の悩み苦しむ人々を救うために、三十三の観音霊場を開き、観音菩薩の心に触れる巡礼を勧められた」。
以降、「北海道三十三観音」や山形の「最上三十三観音」など、西国三十三所に倣った巡礼行が日本各地に生まれます。
西国三十三所・坂東三十三所・秩父三十四所とは?
本項では、それぞれの巡礼の概要と特徴を紹介します。
西国三十三所(さいごくさんじゅうさんしょ)
西国三十三所とは、京都府・滋賀県・大阪府・奈良県・兵庫県・和歌山県・岐阜県に点在する33ヶ所の観音霊場を指します。その霊場を順番にお参りすることを「西国三十三所観音霊場巡礼」といいます。全部周ると約1000kmもの工程になります。
日本でもっとも古い巡礼行であり、その巡礼地には京都の清水寺(第16番)や奈良の興福寺南円堂(第9番)など、立派なお寺が中心になっているのが特徴です。
坂東三十三所(ばんどうさんじゅうさんしょ)
坂東三十三所とは、神奈川県・埼玉県・東京都・群馬県・栃木県・茨城県・千葉県にある33ヶ所の観音霊場のことです。全行程は約1,300kmと、3つの巡礼行の中では最大です。鎌倉幕府の創設者・源頼朝によって考案されたと考えられています。
観音様を厚く信仰していた頼朝は、西国三十三所に倣って、足元の関東に巡礼コースを作りました。その後、三代将軍の源実朝によって各札所が定められたとされています。
有名なお寺としては、東京の浅草寺(第13番)、栃木の日光山中禅寺(第18番)などが含まれています。西国三十三所とは、異なる趣のお寺巡りを楽しめます。
秩父三十四所(ちちぶさんじゅうよんしょ)
秩父三十四所とは、埼玉県秩父地方にある34ヶ所の観音霊場です。こちらも鎌倉時代に始まったとされています。江戸時代に入ってからは、江戸庶民が近場で回れる観音巡礼として賑わいました。
秩父地方とは、埼玉県西部の山間地を指します。他2つの巡礼行と比べると、全行程は約100kmと遥かに短いですが、山腹や渓谷など、豊かな自然の中を行く巡礼コースは秩父三十四所ならではのものです。
また、上記の3つの巡礼行によって100ヶ所すべてのお寺を巡った後は、御礼として長野県の善光寺と北向観音を参拝するのがしきたりとなっています。
日本百観音・巡礼の素朴な疑問
日本百観音の概要はお判りいただけたかと思います。しかしここまで読んだら、逆に疑問も湧いてきたとお察しします。本項では、巡礼の「なぜ?」にお答えします。
宗教的行事の観音巡礼がなぜ庶民に広まったの?
仏教が生活に根づいていったという背景もありますが、実は以下のような裏事情もあります。
封建制度の江戸時代は、武士も庶民も、道中に設けられた関所によって、移動が厳しく制限されていました。そのため、現代のように気軽な旅行はできません。しかし、『寺社仏閣巡り』が目的の場合は、その制限が緩められたのです。つまり、江戸時代の庶民にとって、観音巡礼は貴重な旅行のチャンスでもあったのです。
順番に回らなければいけないの?
西国三十三所・坂東三十三所・秩父三十四所どこから始めても構いません。また、一番から三十三番(あるいは三十四番)どこのお寺から巡っても大丈夫です。
歩いて回ったほうがいいの?
四国お遍路のイメージだと、歩いて回る姿が印象的ですが、車やバス・電車の利用が禁止されているわけではありません。バスツアーがあるくらいですので、こうした交通期間も有効利用しましょう。
巡礼の服装は?
こちらも四国お遍路の「白衣・輪袈裟・金剛杖」を身に着けた姿が印象的ですが、特に服装に決まりはありません。ただし、お寺の敷地内は階段があったり、砂利が敷いてあったりすることも多いので、歩きやすい靴や動きやすい格好がよろしいでしょう。
持ち物は?
ぜひとも用意したいのが、納経帳です。納経帳とは、いわゆる御朱印帳と似たようなものです。お寺にお願いすると、そのお寺をお参りしたことの記録をつけていただけます。日本百観音の場合、西国・坂東・秩父それぞれの納経帳を用意しても良いですが、日本百観音専用の100ヶ所分のお寺で記録できるものもあります。全て回り終えたあとは、一生の宝物になるでしょう。ただし、スタンプラリーのように、納経帳を埋めることが目的になってはいけません。お寺では必ず参拝しましょう。
なぜ秩父だけ34ヶ所なの?
三十三という数字は、「観音様は三十三の姿に変身できる」という言い伝えに由来しています。そのため、実は秩父の巡礼行も、もともとは33ヶ所でした。しかし、西国33ヶ所と坂東33ヶ所と合わせると、全部で99という数字になってしまいます。「これではキリが悪い」ということで、後に1ヶ所足されて、秩父は34ヶ所になったといういきさつがあります。
巡礼行の計画も楽しみのうちに
2021年9月現在では、コロナウィルスの流行で、気軽には外出できない状況が続いています。すぐにお参りに向かうことは難しいかもしれませんが、一方でワクチンの普及など明るい兆しも見えています。また安心して外出できる時を心待ちに、今は旅の計画を立てることを楽しんでみてはいかがでしょうか。
旅行雑誌を開きながら、地図上で辿る事前旅行に、きっと胸がはずむことでしょう。
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