お役立ちコラム お墓の色々
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枯山水とは?石や砂の意味や特徴をわかりやすく解説

近年、外国人観光客が増加し、日本の伝統文化への注目度も高まっています。お寺などにある枯山水庭園もその一つで、ミュージシャンのデヴィッド・ボウイや、Appleの創業者でiPhoneの生みの親でもあるスティーブ・ジョブズも枯山水庭園を気に入っていたと言われています。
そこで今回は、外国の人々が注目する枯山水とは何か、意味や特徴、その楽しみ方について解説します。
枯山水とは?特徴と歴史
枯山水とは、庭園内に水を引かずに、山や川、島などの自然風景を表現した日本の伝統的な庭園様式のことです。
日本庭園は1つの庭の中に自然の風景を縮図として表現するという特徴があり、池など本物の水を使った池泉(ちせん)庭園、茶室までの道に作る露地(ろじ)とともに、枯山水庭園は日本庭園の代表的な様式として知られています。
水を流す代わりに、庭に敷き詰めた砂に砂紋(さもん)と呼ばれる模様を描くことで、見る人に水が流れていく様子を想像させる仕組みになっています。砂紋がある以外はシンプルに見えますが、実は石の置き方や植物の配置なども考えて細かく作り込まれているのが特徴で、様式や年代の違いによってさらに細かい分類もされています。
枯山水は臨済宗などの禅宗との関わりが深く、禅庭と呼ばれることもあります。英語では、「禅庭」を英訳した「zen garden」という表記がもっともよく利用されますが、ほかにも「rock garden」、「dry landscape garden」という表記が使われることもあります。
枯山水庭園そのものは禅宗が広まる鎌倉時代より前、飛鳥時代ごろからあったとされ、平安時代の書物では「枯山水(こせんずい)」という名前で紹介されています。
のちに鎌倉時代から室町時代に活躍し、世界遺産である天龍寺(てんりゅうじ)と西芳寺(さいほうじ)の庭園を改修したことでも名高い臨済宗の僧侶、夢窓疎石(むそうそせき)が作り上げた枯山水庭園が有名となり、枯山水は各地に広まりました。
枯山水庭園に水がない理由
理由は大きく分けて2つあると考えられています。
禅宗の考えを反映したため
鎌倉時代に広まった禅宗では、物事への執着、他人との比較、雑念などの余計なものを落として自分と向き合い、無我の境地に達する(心を無にする)ことを目標としています。
砂や石で構成されるシンプルな枯山水庭園は、まさに余計なものを削ぎ落とした存在です。
自分の中にある雑念を捨て、庭や自然と心を一つにすることで、禅宗が目指す無念無想の状態に近づけると考えられています。
禅の目的や考え方については下記で詳しく解説しています。
お寺の再建に適していたため
室町時代に起きた応仁の乱の影響で、京都では多くのお寺が焼けてしまいました。
その後、お寺を再建する際、水を引いた庭園よりも水の必要ない枯山水庭園のほうが作業しやすく費用も安くなるとして採用されたと伝えられています。
枯山水の意味と楽しみ方
予備知識がない状態で眺めても問題はありませんが、それぞれの石や砂の意味を知っていると、より深く楽しめます。
石
大小さまざまな石を並べることで、自然の風景以外に、神話や仏教的な風景、縁起物などまで表現することが可能です。
たくさんの石の中にそり立ったような石が置かれているなど、山を連想させる場所は、須弥山(しゅみせん)を表しています。須弥山は仏教において、世界の中心にあり、仏教の守護神たちが住んでいるとされる山です。
三尊(さんぞん)は真ん中に大きな石を置き、左右に少し小さい石を1つずつ置いて表現します。
三尊は仏や菩薩などを3人1組と見なしたときの呼び方で、たくさんいる仏や菩薩からどの3人を集めて三尊と呼ぶかはさまざまなパターンがあります。
石や土を小高く盛り上げたり、石を並べたりして島があるように見せている場所は、蓬莱山(ほうらいさん)です。不老不死の仙人が住むという理想郷で、周りには長寿の象徴である鶴や亀、蓬莱山に向かう船を表現した石が置かれていることがよくあります。
砂紋
砂の上に描いた砂紋は、水の動きを表しています。
直線は穏やかな水の流れ、波線は穏やかでも動きがある流れ、円形は水の上に波紋が広がっている様子などを表しており、実際に水が流れていなくても、まるで庭の中で水が動いているような感覚を味わうことができます。
また季節や時間帯が異なると、日光が当たる角度の違いから、砂紋の陰影にも変化が出ます。何度も足を運んで、自分好みの季節や時間を探してみるのもよいでしょう。
借景
借景とは、庭の外に見える山や林などの景色を借りて、一つの景色に見えるようにすることです。借景を利用することで、庭園自体はシンプルでも、自然豊かな景色を楽しめます。
季節によって山や林の景色が変わると、庭園の印象も変わります。そのため、同じお寺の枯山水庭園を季節ごとに訪れてみるのもおすすめです。
室内からの眺望
枯山水庭園は、通常の庭園のように庭の中を歩くのではなく、お寺の縁側など離れた場所から鑑賞します。
お寺によっては、窓越しに枯山水庭園を眺めることも可能です。景色を切り取る額縁のような窓も含めて一つの景色として鑑賞することで、また違った雰囲気を味わえるでしょう。
枯山水が有名なお寺
枯山水はさまざまなお寺にありますが、ここでは特に有名なお寺を紹介します。お寺の静けさの中でこそ感じられる枯山水の奥深さを堪能してみてはいかがでしょうか。
龍安寺(京都府京都市右京区)
龍安寺(りょうあんじ)は世界遺産で、枯山水庭園のあるお寺として世界的にも有名です。1975年にはイギリスのエリザベス女王が公式訪問し、龍安寺の庭を賞賛したことで世界に知られるようになりました。
庭には大きさの異なる15個の石が配置されていますが、どこから見ても15個すべてを同時に見ることはできないと言われています。
龍安寺の庭は誰がどんな意図で作ったのかわかっておらず、神秘的な謎を持つ庭となっています。
金剛峯寺(和歌山県伊都郡高野町)
金剛峯寺(こんごうぶじ)は、世界遺産の高野山にある、高野山真言宗の総本山です。
日本最大級の広さを持つ枯山水庭園「蟠龍庭(ばんりゅうてい)」では、雲海の中で雌雄一対の龍が向かい合い、奥殿を守っている様子が表現されています。
龍を表す石には、真言宗の開祖である空海の生誕地、四国の花崗岩(かこうがん)が使われています。
空海については下記の記事で詳しく解説しています。
◆弘法大師・空海は何をした人?空海の誕生を祝う「弘法大師降誕会」とは?
宝徳寺(群馬県桐生市)
宝徳寺(ほうとくじ)は、床に写り込んだ紅葉の景色「床もみじ」で有名なお寺です。
境内には蓬莱島と鶴、亀を表現した枯山水庭園があり、秋のライトアップ期間には、光と影のくっきりとしたコントラストを見ることができます。
本楽寺(徳島県美馬市)
本楽寺(ほんらくじ)は、吉野川と阿讃(あさん)山脈を借景とした枯山水庭園があるお寺です。川を借景としている日本唯一の枯山水庭園だと言われています。
鶴と亀、蓬莱島を表現した庭には塀がなく、目の前の山や川と一つになったような景色を楽しめます。
枯山水庭園は自分で作れる
枯山水は、自分で作れるのも魅力の一つです。仕事や家事の合間に枯山水庭園を眺めれば、雑念から離れリラックスできるでしょう。
自宅の庭に作る
自宅の庭に砂を敷くことで、難しい準備をしなくても簡単に枯山水庭園を作れます。
狭い場所でも問題ありませんが、人の行き来がない場所を選びましょう。
作りたい場所が決まったら雑草などを取り除き、防草シートを敷いて、その上から石を置き、砂を敷きつめます。好みに合わせて苔や石灯籠などを置くのもよいでしょう。
砂紋は、レーキを持って後ろ向きに歩きながら描きます。こうすることで、作った砂紋を踏んで崩してしまうことを避けられます。
石灯籠などの購入・設置は、石材店に依頼するのがおすすめです。
下記ページにて全国の石材店を紹介していますので、お近くの石材店をぜひ探してみてください。
ミニチュアキットで作る
自宅に庭を作れるスペースがなくても、ミニチュアの枯山水庭園を作れるキットがあれば、気軽に庭園づくりを楽しめます。
有名寺院の枯山水庭園を再現できるものや、両手で持てるサイズの箱に、砂や石、レーキ、装飾用の小物、さらに水やり不要のフリーズドライの苔までセットになっているものもあります。
枯山水庭園を眺めて落ち着く時間を
砂や石で形作られた枯山水庭園を鑑賞し、奥深い世界に触れてみると、普段感じている雑念から離れ、自分に向き合うきっかけになるはずです。
枯山水庭園は、京都などの有名なお寺だけでなく、全国のさまざまなお寺に存在します。調べてみると、あなたのお住まいの地域にもたくさんあるかもしれません。ぜひ訪れてみてください。
自分と向き合う時間がほしいと感じたら、座禅をやってみるのもおすすめです。
枯山水庭園のあるお寺は座禅を重んじる禅宗であることが多く、中には庭園を見ながら座禅体験ができるところもあります。
自分で作った枯山水庭園を見ながら、自宅でゆっくり座禅をしてみるのもよいでしょう。
座禅を通して気持ちを落ち着けながら枯山水庭園を見ると、日常の中では気づけなかった自分の本当の気持ちを発見できるかもしれません。
座禅のやり方については下記の記事で詳しく解説しています。