お役立ちコラム お墓の色々
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浄土真宗の宗祖・親鸞聖人は何をした人?誕生を祝う「親鸞聖人降誕会(宗祖降誕会・御誕生会)」を解説

日本の仏教のさまざまな宗派の中でも、門徒数・寺院数ともに最も多いといわれる浄土真宗。その宗祖として知られる親鸞聖人(しんらんしょうにん)の誕生日を祝う行事があることをご存じでしょうか。
開祖や宗祖の誕生を記念して行う法会を「降誕会(ごうたんえ)」や「御誕生会(ごたんじょうえ)」といいます。4月にお釈迦さまの誕生日を祝って各地の寺院で開かれる法会は、「花まつり」や「灌仏会(かんぶつえ)」と呼ばれて広く知られていますが、浄土真宗の宗祖である親鸞聖人の誕生日にも、同様の行事が行われています。 今回は、親鸞聖人の生涯とともに、全国各地の浄土真宗の寺院で毎年開催されている「親鸞聖人降誕会(宗祖降誕会・御誕生会)」についてご紹介します。
浄土真宗の宗祖・親鸞聖人の降誕会とは?
「親鸞聖人降誕会」は、浄土真宗の宗祖として知られる親鸞聖人の誕生(降誕)を祝い、その功績や阿弥陀如来の教えに感謝するために営まれる法要です。浄土真宗において、大切な行事の一つとされており、寺院によっては、「宗祖降誕会」や「親鸞聖人御誕生会」などとも呼ばれます。
親鸞聖人は旧暦4月1日に誕生されたと伝えられており、この日付に合わせた4月1日や、旧暦の日付を現在の暦(新暦)に換算した5月21日頃を中心に、各地の浄土真宗の寺院で法要が営まれます。また寺院によっては、いくつかの重要な法要を数日かけて営む春の行事「春の法要」が行われ、その中で親鸞聖人の御誕生会が勤められることもあります。
法要では、読経や法話が行われるほか、寺院によっては、能や雅楽の奉納、お斎(おとき)と呼ばれる食事の振る舞い、抹茶の接待などが用意されることもあり、門信徒や地域の人々が集うにぎやかな行事となっています。
乱世の中で庶民のための仏教を伝えた親鸞聖人
親鸞聖人の誕生と出家
親鸞聖人は、1173年(承安3年)4月1日(旧暦)、京都・日野の里に下級貴族の子として誕生。幼くして父母を亡くしたことから、人生の無常や死への不安を抱き、9歳で出家したと伝えられています。
出家後は天台宗の僧侶として、天台宗の総本山であり修行道場でもあった比叡山延暦寺に入り、約20年にわたって厳しい修行に身を投じました。
しかし、どれだけ修行を重ねても自分の中の煩悩が消えないことに悩み、次第に修行の限界を感じて、29歳の頃に比叡山を下り、新たな道を求めることになります。
法然上人との出会い
比叡山を下りた親鸞聖人が出会ったのが、生涯の師となる浄土宗の開祖・法然上人でした。
親鸞聖人が生きた平安時代末期から鎌倉時代にかけては、貴族中心の社会から武士の時代へと移り変わる激動の時代。源平の争いなどの戦乱に加え、地震や飢饉、疫病などが相次ぎ、多くの人々が不安の中で暮らしていました。
また、当時の仏教は、厳しい修行を積むことのできる一部の僧侶や、天皇・貴族といった地位の高い恵まれた人たちにとっての個人救済や現世利益が主体であり、武士や庶民にとっては救いを実感しにくいものだったのです。
こうした時代の中で法然上人が説いたのが、「南無阿弥陀仏」と念仏することで、誰もが阿弥陀如来の救いを受け、身分や善悪に関係なく極楽浄土へ往生できるという教えでした。これは「専修念仏」と呼ばれ、それまでの仏教とは異なる、すべての人に開かれた教えでした。親鸞聖人はこの教えこそが、苦しみの中にあるすべての人のための仏道であると確信し、法然上人の弟子となります。
しかし、念仏さえ唱えれば救われるという教えは、厳しい戒律や修行が重要視されていた当時の仏教界から強い反発を受け、朝廷による弾圧が起こります。法然上人と親鸞聖人を含む弟子たちは流罪となり、僧籍も剥奪。法然上人は土佐国(現在の高知県)へ、親鸞聖人は35歳で、越後国(現在の新潟県上越市)へ流されることになりました。
浄土真宗の教えを確立
親鸞聖人らは、流罪から5年後に赦免されました。それからまもなく、師である法然上人は亡くなってしまい再会は叶いませんでしたが、親鸞聖人は関東へ移り、約20年にわたって念仏の教えを広めます。その後、60歳を過ぎて京都へ戻ると、多くの著作を執筆し教えをまとめていきました。
晩年の親鸞聖人は、念仏を唱えることで往生できるとする「専修念仏」の教えをさらに深め、阿弥陀如来の「すべての人を必ず救う」という誓い(本願)を信じて身を委ねることで誰もが往生できると説きました。そして、念仏はその救いへの感謝として唱えるものと位置づけました。この教えが多くの人々に受け入れられ、後世にまで伝えられているのです。
親鸞聖人は、1262年(弘長2年)11月28日(旧暦)、90歳で生涯を閉じたと伝えられています。
浄土真宗の各地の寺院では毎年、この命日に合わせて、阿弥陀如来の教えに感謝し、その教えを広め導いてくれた親鸞聖人への恩に報いる「報恩講(ほうおんこう)」という行事も行われています。 報恩講については、こちらの記事で詳しくご紹介していますので、あわせてご覧ください。
浄土真宗の広まり
浄土真宗の宗祖とされる親鸞聖人ですが、親鸞聖人は自ら新しい宗派を開こうとしたわけではなく、自ら寺院を開くこともありませんでした。あくまでも法然上人の教えを受け継いだものと考えていたようです。しかしその教えは、親鸞聖人の入滅(死去)後に弟子たちによって体系化され、親鸞聖人を宗祖とする浄土真宗として広まっていったのです。
現在の浄土真宗の教えとお墓の意味
浄土真宗は現在、門徒数、寺院数ともに日本で最も多い宗派と言われており、修行や努力ではなく、すべてを阿弥陀如来にゆだねることで万人が救済されるという「絶対他力」や、人が亡くなるとすぐに極楽浄土に往生し仏様になるという「往生即成仏(おうじょうそくじょうぶつ)」の教えを中心に、広く知られるようになっています。
このように浄土真宗では、「死後に迷いの世界をさまよう」という考え方がなく、生きている人が功徳を積んで故人の冥福を祈る「追善供養」の概念もありません。
そのため、お墓についても、故人やご先祖さまの魂が宿る場所とは考えず、極楽浄土へ往生して仏となった故人やご先祖さまを偲びながら、万人を救う阿弥陀如来の慈悲の心に触れる場所とされています。
こうした考え方は、お墓の形式や呼び名にも表れています。墓石には「〇〇家之墓」や「先祖代々」ではなく「南無阿弥陀仏」や「倶会一処(くえいっしょ)」と刻まれ、亡くなった際に授かる名前も「戒名」ではなく「法名」と呼ばれます。その法名などを刻み、墓石の横に建てる石板も、「霊標」や「戒名板」ではなく「法名碑」と呼び、卒塔婆を用いないことも浄土真宗の特徴です。
浄土真宗のお墓の特徴、他の宗派との違いなどについて、より詳しく知りたい方は、こちらも合わせてお読みください。
親鸞聖人降誕会では何をする?〜代表的な寺院を紹介〜
親鸞聖人降誕会は、特定の寺院だけで行われるものではなく、全国の浄土真宗の寺院で広く営まれている行事です。法要といえば読経や法話が基本ですが、寺院によっては親鸞聖人の誕生を盛大に祝い、様々な催しが開かれています。特に多くの参拝者が訪れる代表的な寺院と、行われている催しについて紹介していきます。
西本願寺(龍谷山本願寺/京都府京都市下京区堀川通)
浄土真宗本願寺派の本山で、「お西さん」とも呼ばれている西本願寺(正式名称は龍谷山本願寺)では、5月20日の逮夜(たいや)法要、21日の日中法要と、2日間にわたって「宗祖降誕会」が営まれ、多くの門徒や参拝者が訪れます。
読経や法話(布教)のほか、国内最大規模とも言われる雅楽の演奏や、国の重要文化財となっている屋外能舞台での祝賀能、普段は非公開となっている国宝建築・飛雲閣(ひうんかく)での抹茶接待など華やかな催しが行われ、普段とは違うお寺の雰囲気を味わうことができます。
近年では、法要の様子がライブ配信などで公開されており、現地に訪れることが難しい方でも、その様子に触れることができるようになっています。
東本願寺(真宗本廟/京都府京都市下京区烏丸通七条)
同じく京都にある真宗大谷派の本山で、「お東さん」とも呼ばれている東本願寺(正式名称は真宗本廟)では、旧暦の日付に合わせ、毎年4月1日に「親鸞聖人御誕生会」が営まれています。法話や記念講演とあわせて、親鸞聖人の功績を讃える讃歌の合唱などが行われ、この教えに出会えた喜びを音楽で表現する、音楽法要という形式が取られているのが特徴です。こちらも、当日の様子がライブ配信などで公開されています。
この法要は、4月1日〜3日にかけて「師徳奉讃法要」「全戦没者追弔法会」などいくつかの重要な法要を行う「春の法要」の1つとして営まれており、期間中は、お釈迦さまの誕生を祝う「花まつり」や、お寺から少し離れた飛地境内地にある庭園・渉成園(しょうせいえん)での粥膳の接待などの催しも行われています。
築地本願寺(東京都中央区築地)
西本願寺を本山とし、関東を代表する浄土真宗本願寺派の寺院、築地本願寺でも、毎年5月21日に「宗祖降誕会」が盛大に執り行われています。法要では、読経、法話(布教)のほか、仏教讃歌などのコーラスの披露、雅楽の演奏、お斎と呼ばれる食事の接待や抹茶の接待、花や書の展覧会などが行われ、参拝者との交流や日本文化を楽しめるひとときにもなっています。
まとめ
親鸞聖人降誕会は、ただ誕生日をお祝いするだけではなく、その教えや、逆境の中でも庶民に寄り添い、すべての人々のための仏教を広めた親鸞聖人の功績に想いを寄せる行事でもあります。
親鸞聖人が説いた教えは、阿弥陀如来の「すべての人々を救う」という本願を信じるという分かりやすさや、身分や性別などに関わらず等しく救われるという考え方から、庶民の目線に立った信仰として日本各地に広まりました。
人生の中では、思いがけず辛く苦しい出来事に直面することもあります。そのような日常に寄り添う教えが、多くの人々の心に響き、今も受け継がれているのでしょう。
親鸞聖人降誕会は、本山の寺院だけでなく、各地の身近な寺院でも行われている行事です。お住まいの地域の寺院でも営まれていることがありますので、機会があれば足を運び、親鸞聖人の教えに触れてみるのも良いでしょう。また、5月は全国的に気候が安定し、出かけやすい時期です。仏様やご先祖様への感謝を込めて、お墓参りへ行くのもおすすめです。
仏教の開祖であるお釈迦様や、真言宗の開祖である弘法大師・空海の降誕会についても紹介しています。また、5月のお墓参りに良いタイミングなどを解説している記事もありますので、合わせてご覧ください。