お役立ちコラム お墓の色々

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散骨をするために押さえておきたい5つのこと

墓地・墓石コラム

散骨をするために押さえておきたい5つのこと

価値観や考え方の変化により、近年では遺骨をお墓に納めず、山や海に散骨する方もいらっしゃいます。「お墓の下で眠るよりも自然に帰りたい」と考える方や「故人の好きだった海や山で眠らせてあげたい」と考えるご家族には魅力的に思われるかもしれませんが、お墓での納骨と比べて新しい葬送方法なので課題も多いものです。本記事では、必ず検討すべき5つのポイントに沿って、散骨についてご説明します。

散骨とは

ご遺体を火葬した後の焼骨をさらに細かく粉末状にし、山や海に撤く葬送方法で、自然葬のひとつです。お墓で行う「焼骨の埋蔵」とは法律上の定義が異なり、安易な行動は違法行為になってしまうので注意が必要です。日本の法律では、墓地として指定された場所以外での「焼骨の埋蔵」が禁止されていますので、散骨の際に遺骨を埋めたり、落ち葉をかけたりすることは違法行為にあたります。また、散骨した場所に植樹をしたり、石を置いたりすると墓標と見なされ、その場所が墓所と定義されるので、こちらも違法行為となってしまいます。つまり、散骨で許されているのは、本当に遺骨を撒くだけです。

1、遺骨をどうやって粉末化するか

散骨するためには、骨であることがわからなくなるまで細かくする必要があります。骨であることがわかる状態で散骨してしまうと、見つけた方が事件と勘違いするかもしれませんので、十分注意してください。
この作業を自分で行うのは大変な労力が必要です。精神的に辛く感じる方もいるでしょう。散骨業者に依頼することもできますが、大切な遺骨を預けるのですから、信頼できる業者選びが大切です。対応などに少しでも不信感を感じたら業者選びをやり直し、可能であれば作業にも立ち会ったほうが良いでしょう。

2、散骨場所をどこにするか

遺骨をどこに撒くかは、非常にデリケートな問題ですので注意が必要です。
散骨の場所は法律上、特に定められていません。だからといって、どこにでも撒いていいわけではなく、周辺地域や環境への配慮が不可欠です。また、北海道長沼町や埼玉県秩父市など、農作物への風評被害を防ぐ為に、条例によって散骨が規制されているところもあります。散骨を希望する地域にそのような条例がないか、よく確認しましょう。
代表的な散骨場所と注意点をご紹介します。

山や森林

山や森林には必ずその土地の持ち主がいます。所有者の許可なしで撒いてはいけません。国有地であっても管理者の許可が必要となります。

海に所有権はありませんが、どこにでも撒けるわけではありません。「漁業権」を侵害しない場所を選ぶ必要があります。漁場、養殖場、船の航路の近くは避けなければいけませんが、それ以外の場所でも水産物の風評被害を恐れる地域の方々とのトラブルに発展する可能性もありますので、十分ご注意ください。また、海水浴場の近くで撒くことも絶対に避けてください。

自宅や自分の所有地

自宅の庭などご自身の所有地で行う場合も、隣接する住宅などへ配慮しないと、思わぬトラブルに発展する可能性がありますのでご注意ください。

山や森林を所有している方ならともかく、散骨が可能な場所をご自身で探すのはなかなか難しいことでしょう。散骨業者では、所有者の許可をとって山や森林に撒くか、沿岸から離れた海上で撒く場合が多いようです。

3、費用の確認

業者に依頼した場合の相場をご紹介します。海上散骨の場合、船を貸し切りの状態で行う散骨で20~30万円、他の散骨希望者との相乗りで10万円前後、ご自身は参加せず、業者に散骨を任せた場合で5万円前後となります。人数を増やしたり、日時指定したりする場合には別途料金が発生することもあるのでお気をつけください。また、山や森林での散骨の場合、5~20万円と非常に幅広くなっています。

4、散骨に必要な書類や手続き

墓じまいからの散骨に必要な手続きと、散骨業者に提出する書類について説明します。

墓じまいに必要な手続き

現在のお墓からご遺骨を取り出す場合、自治体と墓地・霊園の管理者の許可が必要です。

この手続きは以下のような流れになります。
移転元の自治体から「改葬許可申請書」を受け取る

墓地・霊園の管理者から記入・捺印をもらう

自治体に提出し「改葬許可証」を発行してもらう

再度、墓地・霊園の管理者に提出して、改葬を認めてもらう

上記のものは「現在のお墓から新しいお墓に遺骨を移す場合」の手続きです。散骨の場合、「改葬には当たらない」という理由で、許可証を発行してくれない自治体もあるようです。その場合、墓地・霊園の管理者からも遺骨の取り出しを拒否されてしまう可能性があります。法律に規定されておらず、判例や公式見解でも明確に適法としめされていないグレーゾーンの部分なので、許可証を発行してくれない場合もあることを予め知っておくことも大切です。

散骨業者に提出する書類

火葬許可証・埋蔵許可証・改葬許可証

いずれかの提出を求められる場合が多いです。焼骨が手元にある頃には、火葬許可証も手元にあると思いますので、失くさないように保管しておきましょう。

5、後悔しないかよく考える

一度散骨したら、遺骨はもう戻ってきません。本当に散骨という形で良いのか、よく考えて決めましょう。

故人への気持ちを今後どう表すか

日常生活や人生の節目でふと故人を想い返したとき、お墓のように祈るものがないことを寂しく感じる人もいるでしょう。先祖や親への感謝は自分が年をとるごとに大きくなっていくものです。今は散骨に抵抗がなくても、年月が経ってから後悔する可能性はあります。

心の準備ができているか

だいたいの散骨場所は、山奥や海上など人里離れた場所です。静かで落ち着いた場所である反面、人の気配のない寂しい場所という印象を持たれる方もいるかもしれません。「本当にここに遺骨を置いていって良いのか」、散骨直前で迷いが生じる人もいると思います。後悔のまま散骨を終えること無いよう、海や山に遺骨を撒くということをしっかりイメージしてみましょう。

残された家族にとっても最善の形を

代々継承していくお墓と比べ、散骨は一度きりのセレモニーの要素が強いものです。残された家族がお参りする場所もなくなってしまってしまいますし、同じ場所で眠りたいと思っても散骨した場所を特定することは難しいものです。残された家族とのつながりが切れてしまわないように、一人で決めずによく周りと相談し、最善の形を選びましょう。