お役立ちコラム お墓の色々
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- 供養をきわめる -
後悔しない離檀をするために
「檀家制度」というものをご存じでしょうか。「檀家(だんか)」とは特定の寺院に属する家のことを言い、所属している寺院のことを「菩提寺(ぼだいじ)」といいます。
檀家は、菩提寺にお墓の管理や法事の一切をお願いする代わりに、お布施で金銭的な支援をします。これを「檀家制度」といいます。
檀家は先祖代々受け継がれることが多いため、自身が申し込んでいない場合でも檀家になっている場合があります。お墓が寺院の墓地にあれば、その寺院の檀家となっている場合がほとんどです。
そして、その菩提寺からお墓を移転・撤去して檀家(だんか)を離れることを「離檀(りだん)」といいます。
近年、さまざまな理由で「離壇」を考える方が出てきています。今回は「後悔しない離壇をするために」と題し、離壇について悩まれている方へ、お悩み解消のヒントとなる情報をお伝えいたします。
檀家制度の歴史
檀家制度のはじまりは、江戸時代に徳川幕府によって定められた寺請制度(てらうけせいど)までさかのぼります。寺請制度とは、いずれかの寺院を菩提寺と定め、その檀家となることを民衆に義務付けるものです。民衆は、菩提寺から檀家であることを証明する寺請証文(てらうけしょうもん)受け取り、同時に、当時禁教とされていたキリスト教徒ではないことを証明しました。
菩提寺となった寺院は「お布施」を檀家から受け取り、葬式や法要の一切を執り行います。お布施により経済的基盤が整う一方で、檀家となった住民の動向や戸籍の管理を請け負う義務が生じました。
つまり、寺請制度は「宗教の管理」と「戸籍の作成と住民管理」の役割を担っていたのです。
寺請制度は、1871年に明治政府によって廃止されますが、戸籍の作成は家ごとに作成される「過去帳(一種の葬儀記録)」へと形を変え、また、檀家と菩提寺という関係性も残るなど、寺請制度の名残が現在の檀家制度となっています。
よくある離檀の理由は?
現在は、憲法20条で「信教の自由」が保障され、必ず檀家にならなければならないわけではなく、檀家を辞めたり、他の寺の檀家になったりすること自体には何も問題はありません。
離壇をする理由はさまざまですが、主に以下の5つの場合が大多数を占めます。
・引っ越し等で菩提寺が遠方になりお墓参りがなかなかできなくなった
・高齢化により、お墓参りをすること自体が体力的に困難になってきた
・お墓を守ってくれる後継者がなく、撤去せざるを得なくなった
・宗教離れが進み、檀家である必要性を感じなくなった
・寄付や檀家料などの経済的負担が大きくなった
離檀の際に必要な手続き
寺院にあるお墓は、寺院の土地を借りて建てています。遺骨を勝手に持ち出したり、散骨したりすることはできません。お墓を移転または、撤去するためには以下の手続きが必要です。
1. 現在のお墓の管理者から「埋蔵証明書」を発行してもらう。
2. 「改葬許可申請書」を、現在のお墓がある各市区町村の役所に出す。
3. 「改葬許可申請書」と引き換えに「改葬許可証」をもらう。
※市区町村によっては、次のお墓の「受入証明書」が必要な場合もある。
4. お墓の魂抜き(閉眼供養)を行い、遺骨を取り出す。
※寺院の過去帳に記されている情報(収められている遺骨の数や名前、命日や納骨日など)をひかえておく。
5. お墓の撤去や移転を行う。(石材店と事前に相談する)
後悔しない離檀をするために
「離壇をしたい」と思うのは、何らかの問題があるからこそです。その問題はひょっとすると離壇しなくても解決できることかもしれません。離壇という決断をする前に、まずは親族や菩提寺の住職とコミュニケーションをとってみましょう。あらかじめ意思疎通をはかっておくことで、その後のトラブルを防ぐことにもつながっていきます。逆をいうと、意思疎通が不十分であることが、トラブルの元となることも少なくありません。菩提寺とのコミュニケーションには可能な限り時間をかけてみるようにしてください。
離檀に伴う主なトラブルと対処法
離壇に伴う主なトラブルとして離檀料が挙げられます。離檀料とは、離檀の際に寺院に渡すお布施を指します。もともとは改葬、お墓のお引越しや、墓じまいをして永代供養を頼む際に包むお布施の意味合いで存在していました。そのような成り立ちから、契約書も存在しないことが一般的なので、ごく稀ではありますが、離檀を希望する方の中には、数百万円から一千万円を超えるような高額の離檀料を請求されたケースもあるようです。
まずは一人で悩まず、親族や寺院との付き合いが深い地域の石材店に相談し、問題が大きくなった場合は、法律の専門家や本山などに解決を依頼してみると良いでしょう。
まとめ
檀家制度の成り立ちを見てもわかるとおり、檀家と菩提寺の関係は密接なものです。だからこそ、その関係を断つことは容易なことではありません。一方で、社会のあり方が大きく変化していく中で、檀家を離れるという苦渋の決断をせざるを得ない方も増えてきています。
時代時代でお墓や供養のあり方は変化していきますが、十人十色の理想のあり方がきっとあるはずです。一人で抱え込んで悩まずに、ぜひ周りとよく相談して、あなたにとっての理想のお墓や供養のあり方を見つけていきましょう。