お役立ちコラム お墓の色々

お役立ちコラム お墓の色々

- 供養をきわめる -

足元に宿る美・石畳とは?込められた意味や敷き方の種類、家紋の由来になった石畳紋までご紹介します

墓地・墓石コラム

神社やお寺の参道を歩くとき、私たちの足元を静かに、そして確かに支えてくれている「石畳(いしだたみ)」。

日本の格式高い道としてはもちろん、ヨーロッパの美しい古い街並みを思い浮かべる方も多いのではないでしょうか?普段は意識せず通り過ぎてしまう道ですが、雨の日のぬかるみを防ぐ生活の知恵や、神聖な空間を形作ってきた歴史が隠されています。

今回は、石畳の知られざる歴史や敷き方に込められた意味、さらには家紋とのつながりまで、足元に宿る「石の美と文化」をご紹介します。

そもそも石畳とは?敷石・飛び石との違い

広場や道路、街道や神社、お寺の参道など様々な場所にあり、普段はそれぞれの違いを意識することはないかもしれませんが、その形状や目的によって呼び名が分かれます。

石畳(いしだたみ)

自然石やキューブ状に整形された石(ピンコロ)などを、表面が平らになるように隙間なく敷き詰めた舗装のことです。言葉の通り語源は和室の畳にあり、石を「畳(たたみ)」のように綺麗に敷き並べることに由来します。

古くは「石を畳み上げる」という意味から神社仏閣の石段そのものを指すこともありました。

西洋における石畳状の舗装の歴史は非常に古く、紀元前の「ローマ街道」まで遡ります。馬車や人が泥にまみれず、滞りなく行き交うための交通や流通の基盤として発展していきました。

日本でも、江戸時代に東海道の箱根峠などの難所に、ぬかるみや滑りを防ぐ実用的な手立てとして整備された歴史があります。(箱根の石畳は一般的に「石畳道」と呼ばれますが、「敷石」や「石置き道」と称されることもあります。)

また、神社やお寺では、雨の日の歩きやすさを保つとともに、神聖な空間の格式を高める役割も担ってきました。

敷石(しきいし)

形状を問わず、「平らな石」を地面に並べたものの総称です。

敷き詰めて平らな面を作る石畳に対し、敷石は用いられる石そのものが平らです。石畳に比べてやや規模が小ぶりなものや、和の空間に用いられるものを指すことが多く、足元に格調高い風格や高級感を演出する際に重宝されます。

また、茶の湯の世界では、茶室へ至る手前の庭(茶庭・露地)において、門から茶室への入り口(露地口)までの間に設ける敷き詰められた道を「敷石」と呼び、露地の敷石は「歩幅・歩く速度・気持ち・所作を整える」という意味もあります。

飛石(とびいし)

隙間なく敷き詰めるのではなく、あえて歩幅に合わせた間隔を空けて点々と配置した石の道のことです。

室町末期から安土桃山期にかけて茶の湯の庭で用いられたのが始まりとされ、雨や土で着物の裾や草履(ぞうり)が汚れないようにという実用的な目的のほか、茶室へと向かう客人の歩みを自然に導くおもてなし(格式や役割を持たせた石の配置)としての役割も担っていました。

神社やお寺で見かける玉砂利(たまじゃり)ですが、お墓のまわりにもよく砂利が敷かれています。お墓に砂利を敷く理由や効果については、こちらの記事で詳しくご紹介しています。

墓地の周囲を彩る「砂利」について

石畳のメリット

足元に天然石を敷き詰めることには、見た目の美しさだけでなく、数々の実用的なメリットがあります。

圧倒的な耐久性と経年変化の美しさ

天然石は基本的に何十年、何百年と形を保ち続ける耐久性を持っています。

人工的な素材に比べて、紫外線によって色あせしずらく、経年劣化により急激にもろくなったりすることもほとんどありません。歳月を重ねてわずかに苔がむすことで、むしろ味わい深い風合いへと変化していきます。

雑草・ぬかるみ対策

植物の生命力は非常に強く、抜いても抜いても生えてきます。

地面を石畳や敷石でしっかりと覆うことで日光が遮られ、雑草の発生を抑えることができます。また、雨や雪の日でも地面がぬかるまないため、衣類や履物を泥で汚さないようにできます。

滑りにくさと歩きやすさの両立

ツルツルとした石は滑りやすいと思われがちですが、石の表面に「割肌(わりはだ)」や「ビシャン仕上げ」と呼ばれる細かな凹凸(おうとつ)を刻む加工を施すことで、歩きやすくなります。表面に細かな凹凸があると、雨水が乗っても靴底との間に水が逃げる隙間ができるため、滑る原因となる水の膜ができにくくなります。これにより、雨や雪の日であっても足元が滑るのを抑えることが可能です。

滑りにくい加工を施した石が使われているとはいえ、雨の日の移動は晴れの日よりもいっそう足元に注意したいものです。雨の日にお参りをする際の大切な心がけや、気をつけるべき点については、こちらの記事で詳しく解説しています。

雨の日のお墓参りはよくないって本当?メリットや注意点をご紹介します

高いコストパフォーマンスと部分補修の容易さ

初期費用こそコンクリートなどより高めになりますが、風雨に強く経年劣化しにくいため、長い目で見れば非常に費用対効果に優れています。万が一、部分的に破損したりズレたりした場合でも、全体を取り壊さず、その石だけを個別に取り外して交換したり、美しく据え直したりすることができるため、将来にわたる維持管理の負担を最小限に抑えることができます。

石畳によく使われる石の種類

御影石(みかげいし・花崗岩)

墓石の代名詞でもある御影石は、圧倒的な硬度と耐久性を誇ります。

足元に敷く場合は、日本ではおよそ9センチメートル四方のサイコロ状に切り出されたピンコロと呼ばれる石や、平らに美しく整えられた板石(いたいし)がよく使われます。

耐久性に優れた御影石は、何世代にもわたって受け継がれる大切なお墓の石としても、信頼され選ばれ続けている特別な存在です。そんな御影石の特徴について、こちらの記事で詳しく解説しています。

お墓に使われる『御影石』ってどんな石?

鉄平石(てっぺいせき)

板状に薄く剥がれやすい「板状節理(ばんじょうせつり/はんじょうせつり)」という独特の性質を持つ、長野県で産出される、日本を代表する天然石ですが、採掘量が限られており、近年では輸入材が広く流通しています。

 落ち着いた青灰色の中に、鉄分が酸化することで生まれる錆色(さびいろ)や赤褐色が不規則に混ざり合い、一枚一枚が異なる色彩を放ちます。

砂岩(さがん)

砂が長い年月をかけて水底に堆積し、自然の圧力によって固まって生まれた石です。

生成(きなり)色や淡い赤み、薄茶色といった、大地の温もりをそのまま映し出したような優しい色合いと、手で触れたときに感じるしっとりとした柔らかな質感が特徴です。

意味と格式が宿る「敷き方のバリエーション」

敷石の並べ方は、見た目の美しさだけでなく、空間を広く見せる効果や縁起の良い意味が込められています。

子孫繁栄を願う「市松模様(石畳型)」

正方形の石を縦横に交互に敷き詰める模様です。平安時代には「霰文(あられもん)」と呼ばれて貴族の衣装に使われ、江戸時代に歌舞伎役者の佐野川市松がこの模様の袴を愛用したことから「市松模様」の名で広く定着しました。

この柄はどこまでも途切れないことから「永遠」や「子孫繁栄」を意味する縁起の良い敷き方です。

寺院の格式を受け継ぐ「四半敷き(しはんじき)型」

正方形の石畳を斜め(45度)に傾けて敷く手法です。

禅寺の本堂や参道に用いられる伝統的な敷き方で、斜めに走る目地(めじ:石の継ぎ目)によって視線が奥へと自然に抜け、限られた広さの墓所でも空間を広く見せる効果があります。

自然の美を活かす「乱張り(らんばり)型」

不規則な形状の天然石をパズルのように組み合わせる手法です。ナチュラルな風合いが魅力で、個性的で温かみのある雰囲気を足元に与えてくれます。

どこにも馴染む「馬踏み(うまふみ)型」

レンガを積み上げるときのような、長方形の石を半分ずつずらしながら横方向に敷く手法で、安定感があり、歩きやすさが特徴です。これを縦方向にした「縦張り千鳥目地型」は、長い参道の圧迫感を和らげるために用いられることがあります。

視線を導く「短冊型・重ね網代(あじろ)型」

長方形の石を縦長に敷く「短冊型」や、縦横交互に組む「重ね網代型」は、神社やお寺で用いられる場合に、視線と歩みを中央の本尊へと心地よく誘導する効果があります。

遊び心のある「破れ目型」・「バスケット型」

正方形を半分ずつずらす「破れ目型」や、長方形を2枚1セットで縦横交互に敷く「バスケット型」は、視線を分散させて圧迫感をなくし、柔らかく落ち着いた雰囲気を演出します。

お寺で見かける枯山水も独特な石の置き方がされています。その理由について、こちらの記事でご紹介しています。

枯山水とは?石や砂の意味や特徴をわかりやすく解説

足元に受け継がれる「石畳紋・石紋」の歴史

神社仏閣の舗装として使われていた石畳は、時代とともに衣服の文様や家紋へと形を変えていきます。

神社の加護を表す「石畳紋(いしだたみもん)」

平安時代には、敷石を模した「石畳文様」が貴族の衣装に用いられました。当時は「甃(しきがわら)」や、黒と白の石を交互に配したような「霰紋(あられもん)」とも呼ばれ、格式高い幾何学模様として愛されました。

鎌倉時代以降に誕生した「石畳紋(石畳文)」は、神聖な神社の敷石をモチーフにしたため、社家(神主の家柄)や信仰深い氏子たちが神仏の加護を授かるお守りとして使用しました。戦国時代には、神官出身の武将や、土屋氏・山本氏・斎藤氏などの多くの諸氏に愛された歴史があります。

石畳紋を使った代表的な武将である「山本勘助」や「土屋昌恒」は、どちらも武田信玄の家臣です。武田信玄のお墓があるお寺について、こちらの記事でご紹介しています。

『どうする家康』『大奥』でも注目!武田信玄と柳沢吉保の墓がある恵林寺

武将たちの陣に翻った「石紋(いしもん)」

家紋の中でも比較的珍しい部類に入りますが、石畳のパターンだけでなく、「三つ石」や「丸に一つ石」など、石そのものの強固さをモチーフにした「石紋(石文)」も存在します。例えば、戦国武将・鵜殿長照(うどのながてる)の陣には「細輪に三つ石」の紋が掲げられていたことが記録に残るなど、石の持つ変わらぬ堅固さを家の象徴として重ね合わせた武家たちによって、誇り高く受け継がれてきました。

私たちが日常で名前を耳にする石といえば、国歌(君が代)に出てくる「さざれ石」ではないでしょうか。さざれ石の成り立ちや実際に観賞できる場所については、こちらの記事で詳しく解説しています。

国歌にも出てくるさざれ石とは?成り立ちから見られる場所まで分かりやすく解説します

日本の伝統的な石畳の名所

  • 善光寺(長野県): 江戸の豪商が誤って突き殺してしまった愛息の菩提(ぼだい)を弔うため、門前に安山岩を寄進したという悲しき供養の伝説が息づく美しい石畳です。仲見世通りから山門下まで敷き詰められたこの石は、古くから伝承で「7777枚」と謳われ、現在も6400枚を超える石板が参拝客の足元を支えています。
  • 香保温泉(群馬県): 戦国時代から続くみかげ石の石段街で、「温泉街が1年365日賑わうように」との願いを込めて365段に整備され、与謝野晶子の詩が刻まれた風情ある佇まいが特徴です。今の石段は昭和55年から5年をかけて大改修されたもので、御影石が敷かれています。
  • 金刀比羅宮(香川県): 本宮まで785段、奥社までは合計1,368段もの長い石段が続く全国的な聖地で、一段ずつ踏みしめながら神聖な領域へと上っていく日本を代表する信仰の道です。
  • 大神山神社(鳥取県): 厳かな杉木立の中に約700メートルにわたって続く「日本一長い石畳の道」で、江戸時代に造られた荒々しくも力強い自然石の風情が今なお息づいています。
  • 釈迦院御坂遊歩道(熊本県): 全国から集められた名石や御影石をふんだんに使用して築かれた「日本一の石段」で、その段数は圧巻の3,333段に及びます。

足元にも目を向けてみては?

私たちが普段、神社仏閣の境内やお墓などで何気なく歩いている石畳は、ただの通路としての役割にとどまりません。

その足元の景色は、古くから神仏のご加護を願う「石畳紋」や、強固な守護を託した「石紋」といった家紋にまで昇華され、多くの先人たちに愛され、今日までつながっています。  次に神社やお寺を訪れたり、大切なお墓に手を合わせたりする際には、ぜひその「足元」にも少しだけ目を向けてみると、先人たちの知恵や歴史のロマンを感じながら歩くことができるでしょう。

雨風に耐えながら今も私たちを支えてくれる美しい石畳の温もりを感じに、お参りへ出かけてみてはいかがでしょうか?

お墓参りの基本や代表的な岩石の特徴や違いについて、分かりやすく解説した記事もあります、参考にしてください。