お役立ちコラム お墓の色々
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- 供養をきわめる -
馬頭観音をまつるお寺はどこ?〜石碑や石仏の意味、ご利益や代表的なお寺をご紹介します〜

2026年は午(うま)年ということで、馬にゆかりのある場所に足を運ぶ人が増えています。そうした中、馬をはじめとした動物を救済する、旅行の安全を守るなどのご利益があるとされ、その名の通り馬の頭を頭上に乗せた「馬頭観音(ばとうかんのん)」にも注目が集まっています。
各地の寺院で祀られているほか、古い集落近くの道端などに、馬頭観音と刻まれた石碑や石仏を見かけたことがある方、競馬場や牧場の近くに供養のために建てられているのをご存知の方もいらっしゃるかもしれません。
一方で、古くから人々の暮らしの中で信仰されてきた馬頭観音ですが、「なぜ道端に祀られているの?」「どんなご利益があるの?」と、詳しくは知らないという方も多いのではないでしょうか。
今回は、馬頭観音の成り立ちや歴史、道端で見かける石碑や石仏の意味などとあわせて、そのご利益や、馬頭観音を祀る代表的な寺院についても紹介していきます。
馬頭観音とは?
頭上に馬の頭を乗せた観音様
馬頭観音は、その名の通り、頭上に馬の頭を冠のようにいただいた姿の観音菩薩(観音様)です。観音菩薩は、千手観音や十一面観音など様々な姿に変化(へんげ)して人々を苦しみから救うと考えられており、馬頭観音も観音菩薩の変化した姿の一つとされています。
馬が大量の草を食べるように、人々の煩悩や災難を食べ尽くして救済する仏様として信仰されてきました。
また、馬頭観音は、「六観音(ろくかんのん)」の一尊にも数えられています。仏教で「六道(りくどう)」と呼ばれる、死後に転生する迷いと苦しみの6つの世界それぞれにおいて、生きとし生けるもの全てを救うとされるのが六観音です。その中で、鳥・獣・虫などの生き物の世界である畜生道で迷い苦しむ者を救済するとされています。
慈悲を表す、激しい怒りの表情
観音菩薩の多くが穏やかな表情をしているのに対し、馬頭観音は、不動明王のような憤怒(ふんぬ)の形相を取ることが多いため、「馬頭明王」と呼ばれることもあります。(一部には穏やかな表情の作例もあります。)
ただし、この怒りの表情は人を罰するためのものではありません。人々の苦しみや迷い、煩悩を断ち切るために、あえて強い姿で現れているのです。 その“憤怒”こそが、馬頭観音の深い慈悲を表していると考えられています。
炎のような髪、手には煩悩を断ち切る剣や斧
そのほかの特徴として、仏像や仏画によって違いはありますが、三面四臂(さんめんしひ)や四面八臂(しめんはっぴ)と呼ばれ、複数の顔や腕(臂/ひじ)を持つ姿が多くみられます。また、髪は炎が燃え上がるように逆立つ「焔髪(えんぱつ)」、額には第三の目があり、手には煩悩を断ち切るための剣や斧、棒などのほか、蓮華のつぼみを持つ例もあります。
馬頭観音の広がり
起源は古代インド
馬頭観音の起源は、仏教が生まれた古代インドにあるとされています。
ヒンドゥー教の神話には、最高神の1柱であるヴィシュヌ神が、頭が馬という姿のハヤグリーヴァ(馬の頭という意味)神の姿となって悪を打ち倒したという伝承があります。
この馬頭の神の言い伝えが、のちに仏教に取り入れられ、馬頭観音へと発展し、中国を経て日本に伝わったと考えられています。
馬の守り神として人々の間に広まる
日本では古くから、農耕や運搬、軍事などに馬を用いており、馬が生活の一部となっていました。
特に馬の生産が盛んだった関東から東北にかけては、馬の守り神である駒形神(こまがたのかみ)を祀る神社が今も各地に見られ、神仏習合の時代には、駒形神と馬頭観音が融合したことで、馬頭観音が祀られていた例もあったと伝えられています。
特に馬の生産が盛んだった関東地方から東北地方にかけての地域には、馬の守り神である駒形神(こまがたのかみ)を祀る神社が各地にあり、かつては神仏習合の流れの中で駒形神と馬頭観音が融合し、馬頭観音が祀られていたところもあったと伝えられています。
こうして馬頭観音は、馬の守り神としても人々の暮らしの中に広まっていったようです。
馬を供養するための石仏や石碑
馬頭観音は寺院で祀られているだけでなく、関東地方を中心に、古い集落の道端などで石仏や石碑を目にすることもあります。
これらは、馬が移動や荷運びの重要な手段となっていた江戸時代ごろ、途中で亡くなった馬の供養塔として、また馬たちの無病息災や道中安全を願って建てられたものと言われています。 馬頭観音の姿を浮き彫りにした石仏や、自然石に馬頭観世音などの文字を刻んだ石碑も多く、石仏は、一般的な馬頭観音の姿のほか、馬にまたがった姿のものも見られます。
このように、馬頭観音は、馬を守護し供養する仏としても信仰されるようになっていきました。現在でも競馬場や牧場などには、馬の安全を願うとともに、亡くなった馬を弔うために、馬頭観音の石碑や仏像が建てられていることがあります。
馬頭観音のご利益は?
馬頭観音には、主に以下のようなご利益があると言われています。
- 厄除け・・・怒りの形相で悪いものを寄せ付けず、また打ち砕き、頭上の馬が草を食べるように人々の煩悩を食い尽くすことで救済すると言われています。
- 無病息災・病気平癒・・・特に、健脚な馬や、馬頭観音の持つ第3の目にあやかって、足腰や眼の健康にご利益があると言われています。
- 旅行安全・交通安全・・・馬は人々の移動の手段として足元を支える存在であったことから、旅の道中を守ると言われています。
- 物救済・ペット供養・・・動物の世界である畜生道に迷う者を救済する仏様として、家畜やペットなどの動物を守護し、亡くなった時には供養してくれる存在としても信仰されています。
- 大願成就・必勝・合格祈願・・・馬力や俊足にあやかり、その力やスピードで大願の成就を後押しし、迅速に勝利に導くとも言われています。
馬頭観音を祀る代表的な寺院7選
馬頭観音を祀る、全国の代表的な寺院を7箇所ご紹介します。
普門坊(山形県長井市)
普門坊(ふもんぼう)は、馬頭観音を本尊とする真言宗豊山派(ぶざんは)の寺院で、高さが2m近くある観音菩薩像が安置されています。御開帳が60年に1度という秘仏とされ、次に見ることができるのは2062年と言われていますが、2011年(平成23年)に300年ぶりに修復が行われたことを記念して、2014年(平成26年)に特別に御開帳が行われました。また、昭和20年代まで行われていた午の祭りでは、馬たちが本堂の回廊を歩いて健康祈願するなど盛大に行われていたようです。
日光山 輪王寺(栃木県日光市)
輪王寺(りんのうじ)は、徳川家康の墓所の一つとして知られる日光東照宮、縁結びで人気のある日光二荒山(ふたらさん)神社などとともに「日光の社寺」として世界遺産にも登録されている寺院です。本堂である三仏堂には、阿弥陀如来・千手観音、そして馬頭観音の、高さ7.5mにもなる三体の大仏が安置されています。
浅草寺 駒形堂(東京都台東区)
雷門で知られ、浅草観音とも呼ばれている浅草寺(せんそうじ)にも、馬頭観音が祀られています。場所は、浅草寺の境内から少し離れた、隅田川にかかる駒形橋の傍らに建てられている駒形堂で、この地は、浅草寺の本尊である聖観音菩薩像が見つかった、浅草寺発祥の場所とも言われています。
中山寺(福井県高浜町)
福井県の中山寺(なかやまでら)は、若狭富士とも称される青葉山の中腹にある、馬頭観音を本尊としていることで知られる寺院です。山門からは若狭湾の絶景を見ることができ、北陸三十三ヶ所観音霊場第1番にもなっています。
安置されている馬頭観音菩薩像は、室町時代に作られたとされ、33年に一度開帳される秘仏となっています。
妙高院(兵庫県神戸市)
妙高院は、毘沙門天(びしゃもんてん)を本尊とする寺院ですが、動物愛護の精神から、高さが6mにもなる、屋外に建つ中では日本最大級の馬頭観音菩薩像が建てられている寺院です。亡くなった動物の供養のほか、競馬の名馬の供養でも多くの人が訪れます。
本山寺(香川県三豊市)
四国八十八カ所霊場の中で唯一の馬頭観音を本尊とする寺院が、第70番札所となっている本山寺(もとやまじ)です。五重塔のある寺院としても知られています。鎌倉時代に再建された本堂は国宝に指定されており、弘法大師が一夜で建立したという伝説も残されています。
観世音寺(福岡県太宰府市)
観世音寺(かんぜおんじ)は、7世紀後半に建立されたとされる歴史ある寺院で、空海が中国から戻った際に身を寄せたとの言い伝えがあるほか、源氏物語にも登場します。 ここには、高さが5mにもなる国内最大の木造馬頭観音立像が残されており、平安時代に作られたとされるこの仏像は、国の重要文化財にも指定されています。
まとめ
馬頭観音は、厄除けや無病息災、交通安全を願う仏様として、また動物を守護し供養する存在として、今も人々の暮らしの中で信仰されています。
馬は、古くから、人々の暮らしの中で多くの役割を担い、生活を支えてきた大切な存在でした。各地に残る馬頭観音の石仏や石碑には、人と馬との絆や、馬の優しさ・力強さに寄せる感謝の思いが息づいています。
もしお近くに馬頭観音をお祀りしている場所があれば、その由来や背景にも思いを向けながら、静かに手を合わせてみてはいかがでしょうか。
馬頭観音を訪ねることは、命を大切に思う気持ちを、改めて見つめる時間にもなります。こうした供養する心に触れることは、ご自身のご先祖様や家族のお墓を見直すきっかけにもつながるでしょう。
お墓の継承や建て替え、墓じまいなどについて気になることがあれば、石材店に相談してみるのも一つの方法です。
お付き合いのある石材店が特にない場合は、以下の記事を参考に、ご自身に合った石材店をお探しになってみてはいかがでしょうか?
動物の供養ということで、競馬場の馬頭観音や、名馬のお墓、ペットの供養についてもまとめています。また、生まれの干支に合わせて守護してくれる仏様について紹介している記事もございますので、あわせてご覧ください。