お役立ちコラム お墓の色々
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ご本尊とは?種類や宗派ごとの違い、仏様の役割を詳しく解説

お寺を参拝したとき、本堂の中央にお祀(まつ)りされている仏様を見て「この仏様は、一体どのような存在なのだろう?」と疑問に思ったことはありませんか?
お寺の中心にお祀りされている「ご本尊(ほんぞん)」は、その場所で最も大切にされ、尊崇・信仰の対象となる仏様のことです。
言葉自体は耳にしたことがあっても、その本来の意味や、なぜ宗派によって異なる仏様がお祀りされているのかを詳しく知る機会は意外と少ないものです。
実は、ご本尊としてお祀りされているのは「仏像」だけではありません。文字で表された「名号(みょうごう)」や、仏の世界を描いた「曼荼羅(まんだら)」など、ご本尊は宗旨宗派によってさまざまです。
今回は、ご本尊の基礎知識から、主要な宗派ごとの違い、そして阿弥陀如来や釈迦如来といった代表的な仏様の意味について、詳しく解説します。
ご本尊がどういった存在なのかを知ることで、次にお寺を訪れた際、仏様の教えや歴史の深みを、より一層感じられるようになるはずです。
ご本尊とは?
ご本尊とは、お寺の本堂や仏壇などにお祀りして、手を合わせる対象となる仏様のことです。
「本仏(ほんぶつ)」や「本師(ほんし)」とも呼ばれ、その場所における信仰の拠り所となる存在を指します。
基本的には一尊の仏像がお祀りされることが多いですが、左右に「脇侍(きょうじ)」や「眷属(けんぞく)」と呼ばれる随行者(ずいこうしゃ)を従えていることもあります。このように三尊一組でお祀りされる形式を「三尊(さんぞん)」と呼び、その際中心にいらっしゃる仏様を「中尊(ちゅうそん)」と言います。
代表的な例としては、釈迦如来を中心にお祀りする「釈迦三尊(しゃかさんぞん)」や、薬師如来を中心とする「薬師三尊 (やくしさんぞん) 」などが知られています。
仏教において、仏様は「一尊、二尊…」と数えられ、三尊という言葉もこの数え方に由来しています。
ちなみに、日本固有の信仰である神道の神様は、「一柱(ひとはしら)、二柱…」と数えます。これは、古来より神様が木に宿ると信じられていたことに由来しています。
お寺のご本尊とは別に、生まれの干支で決まる「守り本尊」というものがあります。ご自身の守り本尊は何か気になった方は、こちらの記事をお読みください。
◆生まれの干支で決まる「守り本尊」あなたを守護してくれる仏様とは
ご本尊の種類とは?
ご本尊には、さまざまな種類があり、代表的なものは以下の3種類です。順に見ていきましょう。
お姿をかたどった「仏像」
最も一般的な形で、仏様のお姿を直接拝むことで、その慈悲をより身近に感じられるとされています。
仏像の材質はさまざまで、木を彫って作られる「木彫(もくちょう)仏像」のほか、銅などの金属で鋳造された仏像、さらには漆(うるし)、石、土などが用いられることもあります。
代表的な仏像: 釈迦如来、大日如来、阿弥陀如来(座っている「坐像」や、立っている「立像」などがあります)
お名前や聖句を記した「名号(みょうごう)」「題目(だいもく)」
仏様のお名前や、お経のタイトルを文字で記したものです。主に掛け軸の形で安置されます。
- 名号: 仏様の名を記したもので、名号本尊とも呼ばれます。浄土宗・浄土真宗では、「南無阿弥陀仏(なむあみだぶつ)」を「阿弥陀如来そのもの」としてお祀りします。
- 題目: お経の題名を記したものです。日蓮宗では、教えの核心として「南無妙法蓮華経(なむみょうほうれんげきょう)」が最も大切にされています。
これらは、仏像の代用品ではなく、文字そのものが信仰の対象です。
「目に見えない仏様の救いの力を、言葉として表したもの」であり、そのお姿をかたどった仏像と同じく尊いものとして大切にされています。
南無阿弥陀仏と南無妙法蓮華経は、宗派によって唱える言葉が変わります。意外と知られていないポイントですが、ご本尊の違いはお参りの作法にも影響します。詳しくは、こちらの記事で紹介しています。
◆お墓参りで唱えるのは、南無阿弥陀仏?それとも南無妙法蓮華経?
仏様の世界を描いた「曼荼羅(まんだら)」
仏教の悟りの世界や宇宙の真理を、絵画や文字で凝縮して表現したものです。
真言宗や天台宗などの密教では、宇宙の真理を視覚化した図像としての曼荼羅を重視します。
- 図像の曼荼羅: 真言宗などで用いられ、宇宙の中心である大日如来を中心に、多くの仏様が整然と並ぶ様子が描かれます。
- 大曼荼羅(だいまんだら): 日蓮宗で用いられる、文字によって仏様の世界を表現したご本尊です。文字曼荼羅とも呼ばれます。
大曼荼羅(だいまんだら): 日蓮宗で用いられる、文字によって仏様の世界を表現したご本尊です。文字曼荼羅とも呼ばれます。
本尊としてお祀りされる仏様と各宗派のつながり
ご本尊にはさまざまな形があることをお伝えしましたが、ではご本尊としてお祀りされるのはどのような仏様なのでしょうか?
ご本尊はそれぞれの宗派が掲げる教義や理想とする救いの形が違うことから、宗派や宗旨、地域やそれぞれのお寺によって異なります。
また、天台宗(てんだいしゅう)など、特定のご本尊を定めていない宗派もあります。
仏教の世界では、仏様をその役割や悟りの段階によって「如来」「菩薩(ぼさつ)」「明王(みょうおう)」といった尊格(階級)に分けて考えています。
代表的な仏様とその役割を、ひも解いていきましょう。
如来
如来は、仏教における最高の境地(悟り)に達した存在です。
元々は、厳しい修行の末に悟りを開いたお釈迦様がモデルとなっています。
如来は、仏の真理の世界から来た者といわれており、完全な悟りを得た仏の中の仏です。
お姿の特徴:すべての欲望を捨て去ったことを表すため、装身具は一切身に着けず、衣一枚というシンプルな姿をしています。またその身体には、「金色相(こんじきそう)」と呼ばれる金色に輝く体色をはじめ、「手足指縵網相(しゅそくしまんもうそう)」と呼ばれる一人も漏らさず救い上げるために手足の指の間に水かきのような膜があるなど、「三十二相(さんじゅうにそう)」という32個の一般の人とは異なる優れた特徴や吉相があるとされています。
代表的な如来と宗派:
- 阿弥陀如来: 生きとし生けるものを極楽浄土へ導く仏様。歴史上の人物ではありませんが、すべての人を救うと誓った慈悲の仏様です。
【本尊とする宗派】浄土宗、浄土真宗、天台宗(多くの場合)など
- 釈迦如来(釈迦牟尼仏): 仏教の開祖であり、歴史上に実在したお釈迦様です。
【本尊とする宗派】曹洞宗、臨済宗、日蓮宗、天台宗など
- 大日如来: 宇宙の真理そのものとされる、密教における最高仏です。
【本尊とする宗派】真言宗
- 薬師如来: 病気を治し、心身の苦しみを取り除く仏様です。
【本尊とする宗派】天台宗、真言宗などの古い寺院に多く見られます
- 盧舎那仏(るしゃなぶつ)・毘盧遮那仏(びるしゃなぶつ): お釈迦様が悟りを開いた宇宙の真理そのものを神格化した存在です。
【本尊とする宗派】華厳宗、律宗
菩薩(ぼさつ)
悟りを求めて修行しながら、如来を補佐し、人々を救うために活動している存在です。
大乗仏教では、悟りを開く力がありながら、苦しむ人々を救うためにあえてこの世に留まっている慈悲深い仏様とされています。
仏像や仏画では、出家前の王子時代のお釈迦様がモデルの場合が多く、きらびやかなアクセサリーを身に着けています。
代表的な菩薩と宗派:
- 観音菩薩: 慈悲のはたらきを象徴する仏様です。救いたい相手に合わせて「千手観音(千の手と目で漏らさず救う)」など、様々な姿に変身して現れます。
【本尊とする宗派】天台宗など
- 地蔵菩薩: お釈迦様が亡くなった後の世界で、弥勒菩薩が現れるまでの間、私たちを守ってくれる仏様です。地蔵菩薩は、装飾品を身に着けず、頭を丸めた僧侶の姿をしています。
本尊とする宗派】律宗など
- 弥勒菩薩(みろくぼさつ): お釈迦様が亡くなった56億7千万年後の未来に現れ、人々を救うことが約束された仏様とされています。お釈迦様の次に悟りを開くものとして敬われています。
【本尊とする宗派】法相宗など
明王(みょうおう)
如来の教えに耳を貸さない人々を、力ずくでも正しい道へ導くために恐ろしい姿をしています。
弁髪や、燃え盛る激しい怒りによって髪の毛が逆立った怒髪になっている明王もいます。いくつもの顔や手に持った複数の武器、髑髏(どくろ)をつないだ首飾りや蛇を巻き付ける姿など、その迫力で見る者の迷いを圧倒します。
代表的な明王と宗派:
- 不動明王: 大日如来の使い(化身)として、燃え盛る炎を背負い、迷いを断ち切る仏様です。青黒い身体に、大きく見開かれた眼ときつく結ばれた口元で、怒りをあらわにした憤怒(ふんぬ)の相をしています。
【本尊とする宗派】真言宗など
- 愛染明王:人間が持つ愛欲や執着といった煩悩を、否定することなく向上心や信仰のエネルギーへと昇華させる救いの力を持った仏様です。真紅の身体に三つの目と六本の腕を持ち、憤怒の相をしています。
【本尊とする宗派】真言律宗など
ご本尊を拝観できない場合もある?参拝前の注意点
お寺を訪れた際、すべてのご本尊を直接拝観できるわけではありません。 参拝の前に知っておくと、よりお参りが感慨深くなるポイントをご紹介します。
秘仏(ひぶつ)と御開帳(ごかいちょう)
ご本尊の中には、普段は「厨子(ずし)」と呼ばれる扉の中に納められ、公開されていないケースも少なくありません。これを「秘仏」と呼びます。
- 有名な例:信州善光寺(阿弥陀三尊像)、浅草寺(聖観音菩薩)、清水寺(十一面千手観音)、西大寺愛染堂(愛染明王)など
数年、あるいは数十年、ときには数百年に一度、一定期間のみ扉が開かれることを「御開帳」と言います。
なぜ隠されているのかというと、次の理由があります。
(しんぶつしゅうごう)の歴史の中で、仏様も同様に「安易に拝むことのできない尊い存在」として、神秘性を保つために、お姿を隠すようになりました。
・貴重な文化財の保護:多くの秘仏は、国の重要文化財などに指定されている極めて貴重な宝です。それらを盗難などの被害から守り、後世へ確実に引き継ぐため、厳重に管理されています。
・像の劣化を防ぐ:秘仏の多くは木彫りで作られており、光や湿気に非常に弱いという特徴があります。普段は扉を閉めて外気を遮断することで、木材の劣化や色あせを防ぎ、千年前のお姿を今に伝えているとされています。
常時拝観できるご本尊
一方で、いつでも私たちを迎え、そのお姿を拝ませてくださるご本尊もいらっしゃいます。お寺の本堂の中に安置された仏様を、開門時間内であればいつでも見ることができます。
・有名な例:東大寺 大仏殿(毘盧遮那仏)、興福寺 中金堂(釈迦如来)、唐招提寺 金堂(盧舎那仏)、薬師寺 金堂
お寺のご本尊を知ることは、そのお寺で何を大切に守り、供養してきたかを知ることに通じます。同じように、故人の命日にその人を偲ぶことは、供養を届ける大切な時間になります。命日のお墓参りや弔問のマナーをこちらの記事でご紹介しています。
◆友人・知人の命日、どうすればいい?マナーや注意点を徹底解説
まとめ
お寺を参拝するとき、「ここのご本尊はどの仏様だろう?」と、ふと意識を向けてみる。それだけで、今まで何気なく通り過ぎていた本堂の景色が、少し違って見えてくるはずです。
ご本尊を知ることで、そのお寺が大切にしている教えや願いを知ることができます。
私たちが静かに合掌し、心を落ち着かせるその先に、仏様はいらっしゃいます。
ご自身のおうちの宗派のご本尊を改めて知ったり、そのお姿を思い浮かべながらお参りすることで、手を合わせたときの心のあり方も変わり、より一層想いのこもった供養にすることができるでしょう。
宗派によってご本尊が異なるように、お墓の形も異なることをご存知でしょうか?宗派によるお墓の違いは、こちらの記事でご紹介しています。
ご本尊にお参りする際の基本の作法が合掌です。「なぜ手を合わせるの?」を知ると、お参りがもっと深まります。
ご自身の宗派のご本尊や、心惹かれる仏様を身近に感じられる仏像もあります。