お役立ちコラム お墓の色々
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- 供養をきわめる -
一度は見ておきたい重要文化財シリーズ・愛媛の旅編・その2
日本では、国内にある建造物、美術工芸品、考古資料、歴史資料等の有形文化財の中で、歴史上・芸術上の価値が高いもの、または学術的に価値の高いものを、文化財保護法に基づき重要文化財として指定、保護しています。
全国各地にある石仏や石塔の中にも、重要文化財の指定を受けているものがいくつもあり、その所有者や地域の人々によって、石仏や石塔に込められた想いや由来が語り継がれてきたことで、今もなお私たちに歴史や文化の息吹を感じさせてくれます。
今回は「一度は見ておきたい重要文化財/石塔シリーズ」と題し、歴史的価値、学術的価値の高い石仏や石塔をご紹介し、その魅力に迫っていきます。
観光情報も添えていますので、ぜひ実際に足を運んでいただき、その雰囲気を肌で感じ、目で愉しみ、心で歴史に触れてみてはいかがでしょうか?
野間覚庵(かくあん)五輪塔 (愛媛県今治市野間甲761)
JR今治駅から6km程の日吉神社横から少し入った田地の一角に建つ、大小2基の五輪塔がこれからご紹介する野間覚庵五輪塔です。
この五輪塔のある野間地区は、昭和30年まで乃万村(のまむら)と言われた地区の一部で、この旧乃万村地区には国の重要文化財に指定されている石造物が16基現存しており、その内、覚庵五輪塔を含む4基が野間地区にあります。
五輪塔とは
五輪塔は平安時代に誕生したといわれる墓石デザインです。
上段から「空輪」「風輪」「火輪」「水輪」「地輪」と呼ばれる墓石があり、それぞれ自然の五大元素を表しています。
五輪塔を建てると亡くなった人はみな、最高の位と最高の世界へゆけるとされ、今日もなお宗派を問わず「ありがたい最高のお墓」とされています。
五輪塔について詳しくはこちらの記事をお読みください。
◆五輪塔の歴史と特徴をわかりやすく解説します
特徴
向かって右の大きい塔の総高は2.6m、左の小さい塔は2.43mで、どちらも花崗岩製。大きさは多少違いますがほぼ同じ形で、1つの基壇上に並んで建てられています。
空・風輪は鎌倉時代特有の形をしています。笠となる火輪の勾配は緩やかで、軒の線は反った形状をしており、真反りという工法で造られています。水輪は最大径が少し丈夫にあり裾がすぼんだ壺型です。
梵字や刻銘などは刻まれていません。
歴史
建てられた様式から、鎌倉時代後期のものと考えられています。
また、ここから東に徒歩7分ほどの場所に建つ「野間・馬場(ばば)・五輪塔(嘉暦元年 1326年)」と特徴が似ており、これも近い時代である鎌倉時代後期のものとされる理由です。
平成元年10月~平成2年3月に行われた解体修理で、二基とも造塔以降の積み替えがないことが確認されています。
地元では、重茂山(現在の大西町山之内)の城主である岡部十郎夫妻の供養塔と伝わっており、「野間の双ツ墓」とも呼ばれています。
昭和29年(1954年)3月20日、同野間地区にある野間・馬場(ばば)・五輪塔と共に国の重要文化財に指定されました。
周辺の観光情報
前述したように、野間地区を含む旧乃万村地区には国の重要文化財に指定されている16基をはじめ、多くの石塔残されています。それらの石塔を辿ることができる道は「石造物と野間馬の小路」と呼ばれ、それぞれに看板や案内板が建てられていることからも、地域で大切にされてきたことが伺えます。石塔のある土地を訪れ、石塔に残る歴史や人々の供養の心に触れてみてはいかがでしょうか。
また、今治市には、今治市役所から500m程の場所にある四国八十八箇所第55番札所別宮山南光坊をはじめ、四国八十八か所の霊場となっている寺院が複数あります。歴史ある街を楽しみながらの旅も良いのではないでしょうか。
交通アクセス
<公共交通機関>
瀬戸内バス
JR今治駅前バス停から菊間線で約12分、「野間」下車 徒歩約25分
<自動車>
JR今治駅より約13分
松山市方面:松山市街より約55分
高松市・徳島・高知方面:今治小松自動車道「今治湯ノ浦IC」より約20分
広島・岡山方面:西瀬戸自動車道「今治IC」より約10分
善福寺宝篋印塔(愛媛県今治市宮窪町友浦)
広島県尾道市と愛媛県今治市を結ぶ「瀬戸内しまなみ海道」で結ばれ、村上水軍ゆかりの地としても知られる「大島」。ここは、西日本を代表する高級墓石材の一つとして知られる「大島石」が産出されることで有名な島です。
青みを帯びた美しく上品な石肌を持つ大島石は、花崗岩の中でも群を抜く硬さと品質を誇るだけでなく、風化に強く歳月を重ねるごとに青磁のような美しい青みが増すことから、墓石としての価値が高く評価され、大変人気があります。
その品質の高さから、墓石のほか国会議事堂や迎賓館赤坂離宮、京都四条大橋、愛媛県庁舎、道後温泉、出雲大社など多数の著名建造物にも使用されています。
大島石の魅力について動画で紹介しています。
墓石について詳しく紹介している記事もありますので、よろしければ合わせてお読みください。
◆墓石といえば御影石、国内産地などについて紹介します
◆お墓に使われる『御影石』ってどんな石?
この大島には、島人たちに守られてきた、「島四国(しましこく)」と呼ばれる八十八ヶ所霊場がありますが、その大島島四国19番札所に当たるのが「薬師堂」「お薬師さん」とも呼ばれている善福寺です。善福寺の境内に、鎌倉時代に造られ国の重要文化財に指定されている宝篋印塔があります。
宝篋印塔とは
宝篋印塔(ほうきょういんとう)は、供養塔や墓碑塔などに使われる仏塔の一種です。
「一切如来心秘密全身舎利宝篋印陀羅尼経(宝篋印陀羅尼)」という経典を体現したもので、子孫が宝篋印塔を礼拝供養することによって、亡くなった人が現世で犯した罪を「滅罪」し極楽浄土へ往生できるとされています。礼拝の際は「宝篋印陀羅尼」を唱え、塔の周りを右繞三匝(うにょうさんそう/仏に対して右回りに3回まわる参拝の作法)することで効力を発揮すると伝えられています。
宝篋印塔の形は、上から、細長い柱のような相輪(そうりん)・笠(蓋)・塔身・基礎・基壇で構成されています。方形(四角形)の塔身の上にのせられた笠が階段状になっており、その四隅に隅飾(すみかざり)と呼ばれる馬耳形の突起があるのが特徴です。
相輪とは、お釈迦様のお骨を納め供養する建物である「ストゥーパ(仏塔)」に起源を発するもので、石塔の場合は宝珠(ほうじゅ)・請花(うけばな)・九輪(くりん)・請花(うけばな)・伏鉢(ふくばち)・露盤(ろばん)という部分から成ります
特徴
善福寺宝篋印塔は花崗岩製で、花崗岩の塔の大きさが2.12m、基壇を含めた総高は2.69m、現在も完全な形で保存されています。
塔は、3段の基壇の上に建っています。笠の部分は下2段、上6段の段型で、隅飾は輪郭のついた二弧となっています。
塔身の4面それぞれには、胎蔵界四仏(大日如来を囲む四方の仏)の種子(仏を意味する呪文)である梵字が刻まれており、基礎の3面には鎌倉様式の格狭間が、背面には「嘉暦元年丙寅七月日願主養通」との銘文が刻まれています。
歴史
基礎背面の「嘉暦元年丙寅七月日願主養通」という銘文により、鎌倉時代末期の「嘉暦(かりゃく)元年(1326年)寅7月」に建てられたと考えられます。また、塔の形式や技法などから見ても、鎌倉時代の特色を示しています。
なお、この宝篋印塔は、上で紹介した野間覚庵五輪塔と同日である昭和29年(1954年)3月20日、国の重要文化財に指定されました。
周辺の観光情報
瀬戸内しまなみ海道には、日本初の海峡を横断できる全長約70kmの自転車道「しまなみサイクリングロード」が整備されています。この道は「サイクリストの聖地」とも呼ばれ、CNNの「世界の最も素晴らしい7大サイクリングコース」の1つに選ばれました。
ルート上には、瀬戸内海に浮かぶ島々やそれらを結ぶ橋が織りなす美しい景色が広がり、また沿線の様々な観光スポットやグルメスポットに立ち寄ることもでき、海風を感じながら、ゆっくりと絶景や観光を楽しむことができます。
自転車で走りやすいよう、道路や150以上休憩所「サイクルオアシス」が整備され、10箇所以上のポイントで貸出・返却が可能なレンタサイクルも利用できるので、初心者でもサイクリングを楽しむことができます。
歴史ある場所で先人を大切に供養する心にも触れつつ、瀬戸内の美しい風景や、しまなみ海道の島々の特徴ある観光スポットを目指してみてはいかがでしょうか。
交通アクセス
<車>
本州側から:しまなみ海道(西瀬戸自動車道)大島北ICより約10分
今治側から:しまなみ海道(西瀬戸自動車道)大島南ICより約15分
<バス>
本州側から:高速バスしまなみライナー「大島BS」下車、大島島内バス(下田水港~宮窪~早川・友浦線)にて約16分「友浦」下車、徒歩約5分
今治側から:「今治駅前」(松山・今治〜三大島線)にて約30分、「石文化公園」下車、大島島内バス(下田水港~宮窪~早川・友浦線)にて約13分「友浦下車」 徒歩約5分
<船>
芸予汽船「今治港」より約20分、「友浦港」より徒歩約5分
<自転車>(しまなみサイクリングロード)
本州側から:最寄サイクリングターミナル「宮窪レンタサイクルターミナル」、最寄自転車道出入口より約30分(橋名:伯方・大島大橋)
今治側から:最寄サイクリングターミナル「吉海レンタサイクルターミナル」、最寄自転車道出入口より約90分(橋名:来島海峡大橋)
まとめ
今回は、今治市に遺されている野間覚庵五輪塔と善福寺宝篋印塔をご紹介しました。
それぞれ時代を感じられる造りとなっており、状態の良さからも人々に大切に守られてきたことが伝わる石塔です。
丁寧な造りが今でも残っている背景には、人々の間で受け継がれてきた、供養の心、仏様を大切にする心の現れでもあります。
ご紹介したスポットへぜひ足を運んでみて、今なお残る歴史の息づかいを体感してみてください。
愛媛県には、歴史的・学術的価値の高い石塔が多数残されています。「愛媛の旅編・その1」では、「石手寺五輪塔」、今回ご紹介した野間覚庵五輪塔と同じ地区に建つ「野間・馬場・五輪塔」をご紹介しています。是非合わせてお読みください。
◆一度は見ておきたい重要文化財シリーズ・愛媛の旅編・その1