お役立ちコラム お墓の色々

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一度は見ておきたい重要文化財シリーズ・滋賀の旅編

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一度は見ておきたい重要文化財シリーズ・滋賀の旅編

日本では、国内にある建造物、美術工芸品、考古資料、歴史資料等の有形文化財の中で、歴史上・芸術上の価値が高いもの、または学術的に価値の高いものを、文化財保護法に基づき重要文化財として指定、保護しています。

全国各地にある石仏や石塔の中にも、重要文化財の指定を受けているものがいくつもあり、その所有者や地域の人々によって、石仏や石塔に込められた想いや由来が語り継がれてきたことで、今もなお私たちに歴史や文化の息吹を感じさせてくれます。

今回は「一度は見ておきたい重要文化財シリーズ」と題し、歴史的価値、学術的価値の高い石仏や石塔をご紹介し、その魅力に迫っていきます。

観光情報も添えていますので、ぜひ実際に足を運んでいただき、その雰囲気を肌で感じ、目で愉しみ、心で歴史に触れてみてはいかがでしょうか?

一度は見ておきたい重要文化財シリーズ・滋賀の旅編

正法寺石造宝塔(滋賀県蒲生郡日野町鎌掛)

正法寺(しょうぼうじ)は、滋賀県蒲生郡日野町にある、十一面観音菩薩を本尊とする臨済宗妙心寺派の寺院です。

もとは八坂神社の脇にあった観音堂を、元禄5年(1692年)に普存(ふぞん)という禅僧が、現在の地に移して再興しました。

境内には、京都の仙洞御所から移されたという藤の苗が植えられ、樹齢は300年を超えています。この藤の品種は「ノダフジ」で、正法寺山はその昔「後光山(ごこうざん)」と呼ばれていたため、その名をとって「後光藤(ごこうふじ)」と呼ばれています。

なお、本堂は文化11年(1814年)に再建され、境内は明治初期に整備されました。
その本堂の山手に、国の重要文化財に指定されている石造宝塔があります。

宝塔とは

筒型もしくは瓶や壺型の柱(塔身)の上に一重の笠(屋根)が乗り、笠の上に相輪(仏塔の頂上の飾り)を立てたものです。なお、石でつくられた宝塔は平安時代から江戸時代に数多く作られています。

相輪とは

五重の塔など仏塔の最上部にある部分のことを相輪(そうりん)といいます。インドの仏塔の傘蓋(さんがい) が発展したものです。
相輪は、上から宝珠(ほうじゅ)・竜舎(りゅうしゃ)・水煙(すいえん)・九輪(くりん)・請花(うけばな)・伏鉢(ふくばち)・露盤(ろばん)で構成されます。
また、九輪のみを指すこともあります。

特徴

花崗岩製で、塔高は約2.75m。切石の基壇の上に建立されています。
基礎は4面とも輪郭を巻き、格狭間(こうざま)と呼ばれる装飾が入り、正面のみ開花蓮が浮き彫りにされています。

塔身は胴部に扉形の線が刻まれ、上方には縁が作られ、首部は太く作られ2段あります。

屋根は軒付が厚くて勾配はゆるく作られ、相輪の請花や宝珠なども美しい作りです。

歴史

塔身背面に「正和二二年」の刻銘があり、鎌倉時代後期・正和4年(1315年)の作であることが明らかになっています。「四年」を「二二年」としているのは、四が死につながるためと考えられています。
なお、1960年2月9日に国の重要文化財に指定されました。

周辺の観光情報

正法寺の本尊である十一面観世音菩薩は、33年に一度の開帳がある秘仏であり、昔から安産の守護仏として深く信仰されています。
また正法寺は別名「藤の寺」とも呼ばれ、房の長さは1m以上にもなり、毎年5月上旬〜中旬には、美しい花を棚いっぱいに咲かせます。
花の名所は他にもあり、同じ日野町鎌掛には約4万平米に及ぶホンシャクナゲの群生地があります。標高350m前後の山間に約2万本が自生していて、国の天然記念物に指定され、4月下旬から5月上旬にかけて花が咲く姿を楽しめます。

交通アクセス

<鉄道>
近江鉄道本線・日野駅からバスで25分「鎌掛」停留所下車

<自動車>
名神「八日市IC」より国道421・307号経由で約25分
新名神高速「甲賀土山IC」より国道1号経由で約20分

一度は見ておきたい重要文化財シリーズ・滋賀の旅編

少菩提寺跡 石造多宝塔(滋賀県湖南市菩提寺)

少菩提寺は、興福寺の別院として天平3年(731年)に良弁(ろうべん/奈良時代の華厳宗の僧。東大寺を開いた。)により建立されました。

聖武天皇以後、歴代天皇の勅願所(時の天皇や上皇の勅命により、鎮護国家・玉体安穏などを祈願する神社・寺院)となっていましたが、元亀元年(1570年)に、織田信長と戦って敗残した六角氏の兵により寺院が焼き討ちにされ、廃寺となり、今に至っています。

県道27号線沿いには菩提寺集落が建ち並び、民家脇の小道を山手に少し登ると右手に大きい三体地蔵が見えてきます。

その左手にある高台に、竹林を背にすくっと建った多宝塔があります。

多宝塔とは

宝塔は笠が(屋根)が一重なのに対し、多宝塔は二重になっています。
木造建築の多宝塔はかなり多く残されていますが、石塔としての多宝塔は少なく貴重なものです。

特徴

花崗岩製で、総高約4.5m。新しく造られたと思われる基壇の上に建てられています。
基壇上には、広く低い基礎部があり、基礎を囲むように室町時代後期のものとされる多くの小石仏が置かれています。
基礎の上には平石が南北に置かれ、少し背の高い初層軸部、初層部屋根があり、その上部は木造多宝塔を模した造りになっています。

歴史

基礎西面、初層軸部北面に「仁治二年(1241年)辛丑七日」の造立銘がある鎌倉時代の多宝塔です。銘のある多宝塔は全国的にも数が少なく、形も珍しい種類となっています。

また、初層軸部北面には「願主僧良善、施主日置氏(へきし)女(むすめ)」とも刻まれており、豪族の日置氏の女(むすめ)が施主となり、この石塔を造立したとされています。

1961年3月23日に国の重要文化財に指定されました。

周辺の観光情報

少菩提寺跡の背後にある菩提寺山からは、近江富士(おうみふじ)として有名な三上山(みかみやま)(標高432m)が眼の前にせまります。遠くは琵琶湖まで見渡せて、非常に眺めのよいところです。

三上山の山麓には御上(みかみ)神社があります。祭神は天御影之神(あめのみかげのかみ)で、この神様が三上山に降臨したのを祀ったのが始まりといわれています。本殿は国宝に、楼門・拝殿は国の重要文化財に指定されるなど、歴史的価値が高く、深い老樹の木立に囲まれた境内は、長い信仰と歴史を物語るのにふさわしい威厳と風格を漂わせています。

交通アクセス

<鉄道>
JR草津線・甲西駅から車で15分
JR草津線・石部駅から車で10分

まとめ

今回は、滋賀県にある正法寺石造宝塔と少菩提寺跡石造多宝塔をご紹介いたしました。

多宝塔は平安時代に密教が最澄・空海によって伝えられた後に出現した建築です。

天台宗では、初め「法華経(ほけきょう)」を「法舎利(ほうしゃり)」とし、それに胎蔵界(たいぞうかい/密教で説く2つの世界の1つで、金剛界に対して、大日如来の理性の面をいう)の五仏を祀った多宝塔を建立しました。

また、真言宗では大日如来(だいにちにょらい)を祀る建物として多宝塔が建設されています。

密教が重んじる、積み重ねた祈りの体現ともいえる宝塔・多宝塔。その佇まいを、ぜひ現地に足を運んで体感してみてはいかがでしょうか。