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彼岸花(曼珠沙華)はお墓にお供えしてもいいの?名前の由来や花言葉、仏教との関係を解説

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彼岸花(曼珠沙華)はお墓にお供えしてもいいの?名前の由来や花言葉、仏教との関係を解説

日暮れが少しずつ早まり、秋の風を感じるようになる9月。お彼岸の頃になると、土手や田んぼの畦道などに彼岸花が咲き始めます。お墓の周りに咲いているのを見たことがある方もいらっしゃるかもしれません。日本人に馴染みの深いこの花は、大人気アニメ『鬼滅の刃』でも、不思議なパワーを秘めた花として登場しています。

どこか、切なく妖しげな雰囲気を感じさせる彼岸花。実は仏教とも関わりの深い花だということをご存知でしょうか?

今回は、秋を代表する彼岸花について、お墓にお供えしても良いのかということを、名前の由来や花言葉、仏教との関係やお墓の周りに咲いている理由などと合わせて解説していきます。

彼岸花はどんな花?

彼岸花の特徴

ヒガンバナ(彼岸花)は、9月のお彼岸の頃になると赤や白の花を咲かせる、球根植物です。かなり古い時代に中国から伝わり、自生するようになったと考えられています。まっすぐ伸びた茎の先に、数個の小花が放射状に咲きます。細長い花びらが大胆にそり返り、それぞれの小花から糸のような雄しべ雌しべが上に向かって伸びた、ふんわりと咲く姿が神秘的です。

開花時期がお彼岸と重なることから、「彼岸花」と呼ばれるようになったと言われています。

彼岸花の色や品種

日本では鮮やかな赤色の花がよく知られていますが、彼岸花には花の形や色が少しずつ違ったたくさんの仲間(品種)があり、白や黄色のものもあります。園芸種は「リコリス」と呼ばれ、ピンクやオレンジ系のものもあります。

ちなみに、大人気アニメ『鬼滅の刃』には、ストーリー中の重要アイテムとして「青い彼岸花」が登場しますが、こちらは残念ながら実在していません。ただ、私たちのよく知る彼岸花(学名:リコリス ラジアータ)とは別の品種に、「リコリス スプレンゲリー」や「リコリス ブルーパール」という淡いブルーがかった花を咲かせる品種があり、神秘的な姿が園芸家の間で人気があります。

球根には強い毒性が

彼岸花は、すべての部分に毒性のある植物です。特に球根には強い毒成分があり、子どもやペットが誤って口にしてしまうと、重症の場合には神経の麻痺を起こし、死に至る可能性もあるとされています。(大人の場合はキロ単位で大量に摂取しない限り、基本的には重症化することはありません)

昔は、地中に住むモグラやネズミが、毒のある彼岸花を避けることから、作物を守るために田畑の畦(あぜ)や土手などに植えていたとも言われています。

口にすると危険な彼岸花ですが、その球根からは良質なでんぷんが取れます。球根の毒は水に溶けやすいことから、水にさらして毒抜きをすることで、非常食として用いられることもあったようです。飢饉の時や戦時中には、貴重な食糧にもなることから、田畑の周辺などに植えられたとも言われています。

お墓の周りでよく見かける理由

彼岸花は、寺院やお墓の周りでもよく見られる花です。
その理由として、一説には、土葬が一般的だった時代に、埋葬した遺体が動物に荒らされるのを防ぐために、毒のある彼岸花をお墓の周りに植えるようになったのが始まりと言われています。
また、名前の通り、あの世とこの世が近づくとされるお彼岸の時期に咲くことから、あの世(彼岸)とこの世(此岸)の境目として、集落と墓地の境界にあるあぜ道や、お墓の近くに植えられたとも言われています。

後に解説しますが、彼岸花は仏教に由来する花とも言われており、このことも、寺院やお墓に植えられた理由の一つと考えられています。

別名は1000以上。「不吉」「怖い」というイメージも

「不吉」「怖い」というイメージがある理由

彼岸花は別名が多く、各地方で伝えられる呼び名や方言も含めると、その数は1000を超えると言われています。

中には不吉なものもあり、「葬式花」「墓花」「死人花」「地獄花」「幽霊花」「火事花」など、怖いと感じるような呼び名も少なくありません。これは、毒があり食べると命を落とす(死後の世界である彼岸へ行く)と言われていたことや、古くから墓地の近くに植えられてきたこと、鮮やかな赤色の花の様子が「血」や「炎」を連想させることなどから、彼岸花に不吉なイメージを持つ人が多かったためと考えられています。

また、昔は石を置いて彼岸花を植えただけというようなお墓もあり、彼岸花の根っこを掘り返したら、実際に骨が出てきたなどのエピソードから「死人が出る」とも言われたようです。子どもが間違えて口に入れないように、「持ち帰ると火事になる」「摘むと手が腐る」などと言い聞かせていたことも、多くの人が怖いイメージを持つようになった理由の一つではないかと言われています。

日本以外での呼び名やイメージは?

お隣の国、韓国では、先に花だけが咲き、花が枯れた後に葉が出るという様子から、「葉は花を想い、花は葉を想う」という意味で「相思華(サンチョ)」と呼ばれ、「両思い」のシンボルとされているようです。

西洋諸国では、ギリシャ神話に登場する海の精霊「リュコリアス」に由来した学名である「リコリス・ラジアータ」から、「リコリス」とも呼ばれており、たくさんのカラフルな品種が開発され、多くの園芸家に愛されています。

仏教ではおめでたい意味を持つ「曼珠沙華(マンジュシャゲ)」

彼岸花の別名といえば、「曼珠沙華(まんじゅしゃげ/まんじゅしゃか)」がよく知られています。この名前は、仏教と深いつながりがあり、とてもおめでたい意味があります。

「曼珠沙華」という名前は、サンスクリット語で「美しい花」「赤い花」「葉に先立って赤い花を咲かせる」といった意味を持つ「manjusaka(マンジュシャカ)」が語源と言われており、仏教の経典の中で、蓮の花と並ぶ「天界に咲く花」として伝えられています。

「法華経(ほけきょう)」という経典には、「お釈迦様が説法をしていると、曼珠沙華を含む赤白の大小4種類の花が頭上から降り注いだ」という言い伝えが残されており、「おめでたいことが起こる兆しに天から降ってくる花」とも言われています。

これらのことから、仏教において彼岸花は、おめでたく尊い花と考えられているのです。
ちなみに、仏教のルーツとなっている古代インドにおいて、「曼珠沙華」は柔らかな白い花と考えられていたとも言われています。その関係もあってか、白い彼岸花には、「シロバナマンジュシャゲ」という名前がつけられています。

彼岸花の花言葉

彼岸花の花言葉には、「独立」「情熱」「悲しい記憶」「諦め」「再会」などがあります。
中でも、「悲しい記憶」「諦め」「再会」は、墓地でよく見かけることや、お彼岸に咲き亡くなった人との再会を感じさせるということにちなんで、つけられているようです。

この他、色別の花言葉もあり、白は「また会う日を楽しみに」、黄色は「深い思いやりの心」「陽気」「元気な心」、ピンクは「快い楽しさ」、オレンジは「妖艶」などがあります。

寂しげなイメージもある彼岸花ですが、明るく温かい花言葉も多くあることを知っていただけたのではないでしょうか。黄色の品種などは、ブーケやアレンジメントとして人気があるようです。

お墓や仏壇にお供えしてもいいの?

秋のお彼岸ごろになると咲き始める彼岸花。仏教との繋がりも深く、お墓や仏壇にお供えしたいと考える方もいらっしゃるかもしれません。しかし、前述したように彼岸花は毒を持っているため、お供えにはふさわしくないとされています。
また、彼岸花に対して不吉なイメージを持つ人も少なくないため、他の参拝者に配慮する意味でも、お供えは避けた方が良いでしょう。

故人が好きだったために、どうしてもお供えしたいと思う場合には、自分が手を合わせる間だけお供えして持ち帰る、仏壇にだけ飾るようにするなど、周りに配慮するようにしましょう。

秋のお彼岸のお墓参りには、定番の菊のほか、秋を代表するリンドウやコスモス、秋の七草に数えられるフジバカマなどを選ぶと、季節感を出すことができます。
そのほか、秋のお彼岸のお墓参りにおすすめの花は、こちらの記事で詳しく紹介しています。
花言葉からみる、お墓参りにおすすめの花【秋の花編】

まとめ

真っ赤な色や、その花の姿から、不思議と私たちの心を惹きつける彼岸花。実はタネを作らず、球根が分かれることでのみ増えることから、人の暮らしと共に日本全国に広がったと考えられています。数えきれないほどの呼び名があることからも、昔から人々のそばにあり、生活に根付いていた花だったことがうかがえます。

いつの時代の人々も、お墓のそばや道端に咲き、美しさの中に少し切なげな雰囲気を感じさせてくれる彼岸花を見て、亡くなった大切な人を思い出すことがあったのではないでしょうか。そう考えると、秋のお彼岸に合わせて咲く彼岸花は、故人やご先祖様の供養のタイミングを知らせてくれる花とも言えるかもしれません。

全国には、彼岸花の名所と言われる寺院や公園がたくさんあります。9月のお彼岸の時期には連休もありますので、一度足を運んでみてはいかがでしょうか。

秋のお彼岸の日程や、お墓参りについてはこちらの記事で詳しく解説しています。
(令和6年)春と秋のお彼岸はいつ?お墓参りの方法やお供えについて紹介します

仏教やお墓と関わりの深い花について他にも紹介していますので、ぜひ合わせてご覧ください。
お墓と桜の関係は?花言葉から探す追悼や悲しみをあらわす春の花
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