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お墓と桜の関係は?花言葉から探す追悼や悲しみをあらわす春の花

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お墓と桜の関係は?花言葉から探す追悼や悲しみをあらわす春の花

全国的に桜が満開になる時期を迎え、暖かく過ごしやすい季節となってきました。

卒業や入学など春のお祝いのシーンでよく登場する桜ですが、慰霊や鎮魂の意味を込めて植えられることも多ということをご存知でしょうか。桜の名所と言われるお寺の名前を聞いたことがあったり、お墓参りの際に周りで咲き誇る満開の桜を見たことがあったりする方もいらっしゃるかもしれません。

桜の他にも、亡くなった方への追悼や、大切な人を亡くした悲しみを表す意味や花言葉を持つ花はいろいろあります。今回は、なぜお寺や墓地・霊園に桜が多く植えられているのかの理由とともに、花に込められた意味や花言葉から見た、春のお墓参りにおすすめの花もご紹介していきます。

お寺や墓地・霊園に桜が多い理由

日本各地には桜が植えられている寺院や墓地・霊園が多くあります。徳川家の菩提寺とされる東京都港区芝公園の増上寺(ぞうじょうじ)、約1500本もの桜が咲き誇る京都の清水寺、さくら通りと呼ばれる道路が春には桜のトンネルのようになる東京都台東区の谷中霊園などのように、「桜の名所」として知られる寺院・霊園もあり、桜が満開の時期には、お花見を兼ねてお墓参りをされる方も少なくありません。

災害や戦争などで亡くなった多くの方々のために、慰霊や平和などの願いを込めて桜が植えられることもあります。また、近年増えている「樹木葬」のシンボルツリーとしても、桜は人気があるようです。

桜の名所と言われる寺院や霊園についてはこちらの記事でも紹介しています。

増上寺
『どうする家康』関ヶ原に遅参?江戸幕府の礎を築いた2代将軍・徳川秀忠のお墓

谷中霊園
観光地にもなっている墓地・霊園をご紹介

お寺や墓地・霊園など、亡くなった方のそばや供養の場所に桜が多く植えられるのはなぜなのでしょうか?

桜は神聖なものと考えられていた

桜は、厳しい冬の終わりと春の訪れを告げる花だったためか、神聖なものと考えられ信仰の対象とされていた時代もあったようです。弥生時代には桜の咲き具合で稲作の豊凶を占っていたとも言われています。

また、「さくら」の語源には、農耕の神様を意味する「さ」(稲)と、神様の居場所を意味する「くら」(座)という言葉が合わさったという説、日本の神話に登場する女神で、富士の山頂から桜の種を蒔いたとされている木花咲耶姫(コノハナサクヤヒメ)の「さくや」をとったという説などがあり、ここからも、昔から人々が桜を神聖なものと考えていたことが伺えます。

桜の姿が日本人の美意識や死生観と重なる

桜の、満開になりながらも儚く散っていく姿は、美しさと同時に、「潔い生き方」や「命の儚さ」、「名残惜しさ」を感じさせ、多くの人の胸を打ちます。これは、季節や自然の移り変わりを大切にしてきた日本人の心に根付いている、美意識や死生観に触れるものがあるためなのでしょう。そんな桜だからこそ、亡くなった方への言葉にならない気持ちを重ねることができ、思いを馳せたり悲しみを癒すきっかけとなったりするのかもしれません。

また、桜は、散ってもまた翌年には咲き誇り、その美しさを再び思い出させてくれます。亡くなった方やその出来事を忘れない、風化させないという意味合いが感じられることも、鎮魂や追悼のために植えられる理由の一つと言えそうです。

美しい桜を故人やご先祖さまに見せてあげたい

日本人の美意識について少し触れましたが、桜は日本の春の象徴とも言える花となっていて、多くの人の心をと惹きつける美しさがあります。

お墓に供える花には、故人への供養の気持ちを表したり、故人やでも自分自身の心を清らかにしたりするという意味合いが込められていますが、同じように、「故人やご先祖さまに美しい桜を見せてあげたい」「毎年満開になる桜に見守っていてほしい」という思いもあるのではないでしょうか。

土葬の時代からの風習

昔、日本で土葬が一般的だった時代には、桜の木の近くがよく選ばれていた歴史もあり、そのような場所が今日の墓地に発展していったという説もあります。
そのような時代から、桜の儚さや美しさに人の生死を重ねたり、毎年春が巡ってくると咲く桜に鎮魂の思いを託したりしていたのかもしれません。

桜の花言葉

桜の花言葉は「精神の美」「優美な女性」「純血」です。「精神の美」は、花が咲く姿だけでなく、花びらが舞う美しさを日本人の精神に現したとされています。

花言葉に、慰霊や鎮魂の意味はありませんが、桜の姿に命の美しさや儚さを感じ、「亡くなった方のそばに桜を植えたい」と考える心は、日本人の精神と言えるのではないでしょうか。

欧州の方に行くと、「私を忘れないで」という花言葉もあります。日本人の感覚では、少し怖い印象を持つ方もいらっしゃるかもしれません。しかしこれは、桜が散りゆく儚い姿に、恋の終わりや恋人との別れの切なさを重ねた言葉と言われ、悲しみや切なさといった人の気持ちを表す、欧州らしく美しい表現と言えそうです。

花言葉からみる、春におすすめの供花

亡くなった方への追悼などを意味する花は、桜だけではありません。
菊や百合といった、供花の定番と言える花の他に、追悼や悲しみという意味や花言葉をもつ、春のお墓参りにおすすめの花をご紹介していきます。

カーネーション

母の日の定番となっているカーネーション。
開花の時期は4月〜6月ですが、秋に返り咲く種類もあります。
花言葉は「純粋な愛情」ですが、色によっても違う花言葉があります。

ピンク・・・「感謝」「女性の愛」
白・・・「亡き母を偲ぶ」

花言葉の通り、母親が亡くなった際には白いカーネーションを贈ることも多く、両親への仏花として人気のようです。四十九日までは白い花を備え、その後はピンクを供えるのも良いでしょう。

キンセンカ

オレンジや黄色の明るい花で、開花の時期は3月〜5月中旬頃です。
花言葉に、「別れの悲しみ」「寂しさ」があります。

キク科なので、菊と同じように長持ちしやすく、お墓のお供えにもおすすめです。悲しみや寂しさに寄り添いつつ、明るい色味で、お墓を明るく彩ってくれるでしょう。

スターチス

カラフルな色合いが特徴で、ドライフラワーにもよく使われます。
開花の時期は4〜7月頃ですが、ほぼ通年出回っているようです。
花言葉は、「変わらぬ心」、「途絶えぬ記憶」。

「変わらぬ心」ということで、「いつまでも故人を忘れず思っている」という意味でお供えにもよく使われます。また、色の種類が多い上に、少ない水分でも枯れづらいという点でも、お墓に備える花として人気があります。

アリウム・ギガンチウム

花葱(はなねぎ)とも呼ばれるネギの仲間で、長く伸ばした茎の先に、小さな花集まり、大きなボールのように丸く集まって咲く花で、開花の時期は5〜6月頃です。
花言葉は「深い悲しみ」「正しい主張」「不屈の心」「円満な人柄」「優しい」

「深い悲しみ」ということで悲しみに寄り添ってくれる花としても選ばれます。また、円満、優しいといった人柄を表す花言葉もあるので、故人の人柄に合わせて選んでも良いかもしれません。
「アリウム」と呼ばれる花の種類は「ギガンチューム」以外にもいろいろあります。丸くて可愛く美しい花なので、普段のお墓の雰囲気に変化を出すこともできるでしょう。

ライラック

枝先に小さな花を穂のように咲かせる花で、お供え用の造花にもよく用いられています。開花の時期は4〜6月頃です。
ライラックの花は「友情」「思い出」「謙虚」「純潔」という、人間関係の深い絆や心の純粋さを象徴するものです。

「思い出」の花言葉にちなんで、大切な人との思い出を大切にする気持ちで供えるのも良いでしょう。小さな花が密集して咲くので、春らしく華やかな雰囲気を感じられます。花もちが良いところも、お墓のお供えに適していると言えそうです。

まとめ

桜を始め、慰霊や追悼などの意味を持つ春の花についてご紹介してきました。
昔から人々の暮らしや心に寄り添ってきた桜は、人が亡くなった後も見守ってくれる存在として、そして生命の美しさを感じさせてくれる存在として、日本各地で大切に守られています。墓石として用いられる石にも、その淡いピンクの色合いが桜を思わせることで「さくら御影」とも呼ばれる「万成石(まんなりいし)」があります。散ることのない桜として、お墓に用いる方もいらっしゃり、日本人に桜が愛されている様子が伺えます。

万成石(さくら御影)についてはこちらで紹介しています。
灰色や黒だけじゃない墓石の色。どんな色があるの?

霊園によっては、お花見と合わせたお墓参りをお勧めしているところもあります。不謹慎にならないか?と悩む方もいらっしゃるかもしれませんが、お墓に花を供えることと同じで、美しい花に故人を偲ぶ心を重ねて過ごすことも供養につながります。年に一度の桜の季節。お花見の際には、故人やご先祖様に思いを馳せてみてはいかがでしょうか。

春を代表する花である桜や梅は、お墓にお供えすることもできます。注意点などはこちらの記事を参考にしてください。
【あり?なし?】桜や梅の花をお墓にお供えしてもいいの?

仏花として定番の菊や、花と一緒に備えるシキミについても解説していますので、ぜひ合わせてお読みください。
お墓に菊をお供えするのはなぜ?
樒(しきみ・しきび)と榊(さかき)の違い〜樒をお供えする意味や使われ方を紹介します〜

お墓に供える花には、相応しくないとされているものもあります。避けた方がいい花や、お供えの際のマナーなどについては、こちらで詳しく解説しています。
お盆のお墓参りで避けた方がいい花5選
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