お役立ちコラム お墓の色々

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- 供養をきわめる -

神道と仏教のお墓の違い

葬祭基礎知識

神道と仏教のお墓の違い

かつての日本には「神仏習合/神仏混合」の時代があり、「神」と「仏」互いの存在をそれぞれの解釈のもとで同一視していました。
そして、明治時代の神仏分離令により、「神道と仏教」「神と仏」「神社と寺院」は、はっきりと区別されるようになりましたが、今もなお身近な存在としてあり続けています。
では、神道と仏教、それぞれのお墓にははっきりとした違いがあるのでしょうか?あるとすればどのような違いなのか、見てまいりましょう。

神道とは

神道は古代日本に起源をたどることができるとされる宗教で、教典や具体的な教えはなく、開祖もいません。

古代の日本人は、農耕や漁などで自然と関わりながら生活をしていました。自然の恵みにあやかる一方で、台風や日照りなどの自然の脅威にもさらされるため、人々は自然現象に神を感じるようになりました。

森羅万象、ありとあらゆるものに神が宿る…その考えは、海や山といった自然界や自然現象のみにとどまらず、商売や学問、縁結びなどの人間関係…などへも広がり、その数と種類の多さから「八百万の神(やおよろずのかみ)」(やお=数が多い、よろず=様々)と言われています。

また、血縁集団でつくられた古代の村落では、自らの土地の守り神を氏神として各々で祀り、大和朝廷が形作られた5世紀末頃には、大王の下に村落の首長が従うのにあわせ、地方の神々も王家の守り神の親戚や家来筋の神とされていきます。

このような民俗信仰・自然信仰・祖霊信仰を基盤として、神道は徐々に成立していき、日本国家の形成に影響を与えていったとされています。

神道のお墓の特徴は?

神道においても仏教においても、「お墓を建てる」という行為自体は、祖先を敬う風俗習慣からきているため、神道と仏教のお墓の形状に大きな違いはありません。

神道のお墓の特徴としてよく見られるのは「角兜巾(かくときん)型」と呼ばれる形で、家名などが刻まれる棹石の先端がやや細くなっています。4面を斜めに切って三角形に仕上げたこの形状は、名古屋市にある熱田神宮の御神体「天叢雲剣(あまのむらくものつるぎ)/草薙剣(くさなぎのつるぎ)」をかたどっていると言われています。三種の神器の1つである天叢雲剣は、『古事記』や『日本書紀』などの神話において、素盞嗚命(すさのおのみこと)が八岐大蛇(やまたのおろち)を退治した際に、その尾から出てきたとされる神剣のことです。墓石をこの形にする理由には所説ありますが、御剣の守護にあずかるためという説や、お墓自体を神器と捉えているという説などがあります。

また、お墓の付属品にも違いがあります。神道では焼香しないため香炉を置きません。代わりに、八脚案(はっきゃくあん)、神饌台(しんせんだい)、八足(はっそく)などと呼ばれる、白木素材の8本の足で作られた、供物台を模した物置を置くのが特徴です。

神道では戒名を用いない

神道と仏教のお墓で明確に異なるところがあります。それは「戒名(法号)」を用いないという点です。

なぜなら、神道には仏教で見られる「居士」や「大姉」などの戒名自体が存在しません。一方で、戒名と同じような意味合いで「諡(おくりな)」というものが存在します。

男性には、稚郎子(幼児)、郎子(少年)、彦(青年)、大人(成人)、翁(老年)という諡が、女性であれば、稚郎女(幼児)、郎女(少女)、姫(青年)、刀自(成人)、媼(老年)という諡が年代によってつけられ、例えば、72歳の男性ならば「○○翁命(○○おきなのみこと)」と生前の名前の後ろに追加されます。

またお墓に刻まれる文字ですが、「〇〇家之墓」などと仏教のお墓で刻まれることが多いのに対し、神道のお墓では「〇〇家奥津城」または「〇〇家奥都城」と刻まれることが多いです。「奥津城/奥都城(おくつき)」はもともと、日本に仏教が浸透する前の時代の「奥まった場所にある神聖な区域や城」を指す言葉で、「津」は一般信徒、「都」は神官や氏子、またはその家系の場合に使われると昔から言われていましたが、実際はそうでない場合も多く、現在では「神道式のお墓」を表す言葉として使われているようです。

神道では神社の敷地内にお墓を建てない

仏教が各宗派の寺院の敷地内や、隣接する場所にお墓を建てますが、神道の場合は、神社の敷地内にお墓を建てません。ここには、仏教と神道との「死生観」の違いが表れています。

宗派によって解釈に差はありますが、仏教では死後「別の世界に生まれ変わる」「苦しみから解放される」といった考え方があるのに対し、神道では、魂を主とし、身体はその入れ物と捉え、肉体的な死は災いや穢れ(けがれ)を表すといった考え方をします。

そのため神道では、穢れたものとされる死にまつわることを遠ざけるため、神社の敷地内にお墓を建てません。神道のお墓は、神社から離れた霊園にあることが多く、新たにお墓を建てる場合、公営や民営の霊園で使用許可を取得し、建てることになります。

ただし、霊園、特に宗教が異なる寺院墓地では、神道式のお墓の建立を許可していないところもあるため、事前の確認は必要でしょう。神道専門の墓地も増えていると言われていますので、探してみるのも1つの手です。

まとめ

今回は神道と仏教のお墓の違いをご紹介いたしました。神仏習合の時代があったこともあり、どちらも近しい存在として捉え、実際に似ている部分もありました。一方で、それぞれの考え方に基づく決定的な違いもあります。
近年では仏教のお墓や供養の形態も多様化してきていますが、神道も同様、時代の変化に伴って墓石の形など自由度が増してきています。自然石に家名を刻んで用いたもの、土饅頭の形にした墳丘型と呼ばれるもの、墓前に鳥居を設けたものなどいろいろあります。由来や伝統などを理解し、考えを深めることでより満足のいく供養ができると思います。地域の慣習などもあるので、そういった事情に詳しいお近くの石材店と相談しながらお墓を選ばれることをおすすめいたします。