お役立ちコラム お墓の色々

お役立ちコラム お墓の色々

- 供養をきわめる -

懐石料理とは?歴史や由来、食べ方のマナー、会席料理との違いを解説

供養・埋葬・風習コラム

秋の行楽シーズンには紅葉狩りをして、旅館に泊まり温泉と秋の味覚を満喫したいと考えている人もいるのではないでしょうか。

旅館のおもてなしメニューとしてよく名前が挙がる懐石料理ですが、なぜ「懐」に「石」と書くのか不思議に思ったことはありませんか。

実は懐石の由来は、茶道や仏教と関係があります。

そこで今回は懐石料理を食べる前に知っておきたい由来や歴史、会席料理との違い、食べ方のマナーなどをわかりやすく解説します。

本来の懐石料理とは?意味と代表的な献立

懐石料理とは、もともと茶会の際、抹茶を飲む前に食べていた食事のことです。

抹茶をより楽しんでもらいたいという配慮から提供されるものですので、食事の量は本来少なめです。

旬の食材を使う、素材のよさを生かす、お客様をもてなすという3つの原則を大切にして作られており、献立は一汁三菜(いちじゅうさんさい)が基本。

現在ではもう少し品数が多く、下記のような順番で出されることが一般的です。

  • 折敷(おしき)

ご飯、汁物、刺身などの向付(むこうづけ)の3品が載っているお膳

  • 椀盛(わんもり)

煮物が入ったお椀

  • 焼き物

切り身の焼き魚が多い

  • 預け鉢

酢の物などの惣菜

  • 強肴(しいざかな)

もともとは上記の料理に加えて、あえて(強いて)勧められる品でしたが、現代は強肴も惣菜の一つとして提供されるようになりました

  • 箸洗い

口の中や箸をすすぐという意味で出される吸い物

  • 八寸(はっすん)

八寸とは約24cm四方のお盆に盛り合わせた料理のこと。海の幸と山の幸を両方盛り合わせる

  • 湯桶(ゆとう)、香の物(こうのもの)

湯桶とはご飯のおこげにお湯を注いで食べる料理。香の物は漬物を指す

  • 茶菓子と抹茶

料理を食べ終わったあとに茶菓子と抹茶を楽しむ

なお本来の懐石料理はあくまで茶会のための食事でしたが、現代では旅館などで出される豪華なもてなしの料理も懐石料理と表記されていることがあります。

茶懐石という言葉もありますが、茶懐石は茶道の茶会で食べる料理、懐石料理は茶道以外の場面で食べる料理というイメージで使い分けられているようです。また懐石料理の中でも特に京都の食文化の影響を強く受けたものは京懐石と呼ばれています。

英語で懐石料理と表記したい場合、懐石の読み方をそのまま使った「Kaiseki Cuisine」、会席料理と区別するために茶懐石の読み方を使った「Cha-Kaiseki Cuisine」、伝統的な日本のコース料理という意味の「Traditional Japanese Multi-Course Meal」などを使います。

現代では懐石料理をアレンジした創作料理も多く、フランス料理の要素とかけ合わせたフレンチ懐石も人気となっています。

懐石料理の歴史・由来

懐石料理の歴史や由来には、仏教と茶道が深く関わっています。

歴史と意味

懐石料理は、安土桃山時代に茶道を確立した千利休(せんのりきゅう)が、僧侶の食事である「精進料理」をもとに考案したと伝えられています。

千利休といえば「わびさび」という言葉を思い出す人も多いでしょう。

豪華なものよりも質素なものや静かなもの、完璧ではないものに美しさを感じるわびさびの精神でお客様をもてなすために誕生したのが懐石料理です。

また茶道では濃茶(こいちゃ)と呼ばれる、日常で飲むお茶よりかなり濃い抹茶を飲むことがあります。この濃茶を空腹の状態で飲むと胃を傷める恐れがあるため、先に懐石料理を食べてもらうという意味も存在します。

なお精進料理は仏教の戒律を守り肉や魚、卵などを使用しませんが、懐石料理ではこうした食材も使用しており、焼き魚や刺身などがよく登場します。

実は、特別な日の会食やもてなしなどに利用される松花堂弁当(しょうかどうべんとう)も懐石料理の一種です。大きな器を十字に仕切った形の弁当箱を使っているのが特徴で、懐石料理の各メニューを味が混ざらないように盛り付けてあります。

見た目は幕の内弁当と似ていますが、気軽に食べられる幕の内弁当より格が高い食事とされ、昭和初期に考案されたと言われています。

茶道の歴史については下記で詳しく解説しています。

茶道とは?歴史や基本的な道具・作法をわかりやすく解説

精進料理については下記をご覧ください。

精進料理とは?特徴やメニュー、食べ方について解説

名前の由来

懐石料理という名前の由来は諸説あるものの、僧侶が使用していた温石(おんじゃく)がもとになっているという説が有名です。

かつて仏教では、僧侶の食事は正午までの1日1食か2食のみで、それ以降の時間に食べてはいけないとされていました。そこで僧侶たちは空腹感をまぎわらすために、温石という温めた石をカイロのようにして懐に入れていたようです。

この風習から、「温めた石を懐に入れる程度の軽い食事」という意味で懐石料理と呼ばれるようになったと言われています。

懐石料理と会席料理との違い

どちらも読み方は「かいせきりょうり」ですが、会席料理と懐石料理では歴史や食べる目的が異なります。

会席料理はお酒を楽しむための料理として生まれました。武家の正式なもてなしの料理である本膳料理(ほんぜんりょうり)を簡略化して、江戸時代に発展したとされる、宴会などで食べる華やかな食事です。

本膳料理は室町時代に確立され、現代の和食のもとになりましたが、現代では伝統的な本膳料理を食べられる機会はほとんどありません。

会席料理の基本的な構成は、懐石料理と同じく一汁三菜(いちじゅうさんさい)ですが、もっと品数が多いこともあります。

懐石料理との大きな違いは料理が出される順番で、まずお酒や先付け(お通しのようなもの)が出され、その後さまざまな惣菜が提供されてから、最後にご飯と汁物が出されるパターンが一般的です。

現代の旅館などで出される豪華な食事は、どちらかというと会席料理に近く、旅行会社のサイトでは両者を併記して「懐石料理・会席料理」としていることもあります。

もしどちらの「かいせき」料理なのか気になった場合には、ご飯と汁物が出されるタイミングを一つの目安にしてみましょう。基本的に懐石料理では最初、会席料理では最後になります。

懐石料理に関するマナー

懐石料理は格式の高い伝統料理であるため、食べるときにはマナーを守ることも大切です。

場所によって細かい部分は異なりますが、ここでは基本的なマナーを解説していきます。

服装や持ち物について

洋服の場合、スーツやワンピース、ロングスカートなど落ち着きのある服装がおすすめです。

着物の場合は、お店の雰囲気や懐石料理を食べる目的を考慮して、ふさわしい格の着物を選びます。

Tシャツやジーンズのようなカジュアルすぎる服や、肌の露出が多い服、派手な色やデザインの服は避けましょう。

和室で食べる場合は、裸足ではなく靴下やストッキングを履いておきます。

懐石料理では食器を大切に扱う必要があるため、傷をつける恐れがあるアクセサリー類はつけないようにしましょう。

また料理の香りを楽しむために、香水や匂いのある整髪料も避けてください。

持ち物として懐紙を用意しておくと、食事の際、小皿代わりにしたり口元を拭いたりするときに便利です。

和室での過ごし方について

懐石料理は和室で食べることが多いため、一般的な和室でのマナーを確認しておきましょう。以下が和室の基本的なマナーとなります。

  • 敷居(ふすまの下にあるレール部分)や畳のへり(畳の端にある模様が入った部分)を踏まない
  • ふすまの開け閉めは座った状態で静かに行う
  • 座布団を踏んだりまたいだりしない
  • 上座や下座などの席順を意識する

基本的に入口から遠いほうが上座、入口に近いほうが下座となると覚えておけば良いでしょう。

下座・上座について詳しくは下記をご確認ください。

お墓における上座・下座

食器の扱い方について

伝統的な日本料理において食器は単なる容器ではなく、料理を引き立てるために必要な存在です。丁寧に扱うことを心がけましょう。

基本的に小さな食器やご飯を持った器、汁物の器は手で持って食べます。

ただし箸を持った状態で食器を持つことは行儀が悪いとされるため、先に食器を持ってから箸を取りましょう。

蓋つきのお椀の場合、蓋を取ったら内側を上に向けて置きます。蓋を器に立てかけることは避けましょう。

平皿や大きめの食器は、持たずに置いたまま食べてください。

ただし食器に顔を近づけて食べるのはよくありません。背筋を伸ばし、小皿などを使って口元に近づけて食べましょう。

また一見行儀がよいのではと思える、手皿(汁などが落ちないよう手を皿代わりにして受けようとする動き)も実は避けるべき行為です。

ちょうどいい小皿がないときには、懐紙を小皿代わりに使いましょう。

食器同士が触れて傷がつくことを避けるために、食べ終わったあとの食器類は重ねないことも大切です。同様の理由から、お椀の蓋を上下逆にした状態で元のお椀に乗せることも避けましょう。蓋は提供されたときの状態と同じようにかぶせておきます。

箸の使い方について

箸に巻紙がついている場合、紙を破らずに、箸を引き抜いて取り出します。

食事中は、箸の先をできるだけ汚さないことを心がけましょう。汚れのある場所が先端の3cmを超えないことが目安です。

また基本的な箸の使い方を確認しておきましょう。

刺し箸(料理を箸で刺して食べること)や渡し箸(食器の上に箸を乗せること)など、伝統的に箸の使い方でやってはいけないとされることは避けます。

おしぼりについて

懐石料理では、おしぼりはあくまで両手を拭くためのものです。

ついやってしまいがちですが、首や顔、テーブルの水滴を拭くのはマナー違反となります。口元を拭ったり、テーブルを拭いたりしたいときは懐紙を使いましょう。

まとめ

懐石料理はもともとお茶をより楽しんでもらうために生まれたもてなしの料理です。僧侶たちが食べる精進料理がもとになりました。

懐石料理には知っておくべきマナーがたくさんありますが、これは一緒に食事をする皆が気持ちよく過ごすために、日本で受け継がれてきた独自の文化「おもてなしの心」から来ています。

旅館などで懐石料理を食べる機会があったら、一緒に食事をする人への気づかいも忘れずに、食事を楽しんでみましょう。

懐石料理が生まれるきっかけとなった茶道や伝統文化に興味が湧いたら、お寺で開催されている体験会に参加するのもおすすめです。

紅葉が美しいお寺も数多くあります。静かな空間の中で紅葉を見ながらお茶を味わえば、日常のストレスから解放され、気持ちを落ち着けることもできるでしょう。

お寺では茶道以外に、写経や座禅などさまざまな体験会も開かれています。興味のあるものに参加して、日本の伝統文化を体感してみてはいかがでしょうか。