お役立ちコラム お墓の色々
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- 供養をきわめる -
鏡餅とお供え餅の違いは? 由来・意味・お供えの仕方までわかりやすく解説

2025年の暮れも近づき、2026年の幕開けとなるお正月がすぐそこまで来ております。年末年始の風物詩といえば、神棚にお供えされた鏡餅を思い浮かべる方も多いでしょう。
また、お正月には鏡餅を仏壇にお供えする家庭も見られます。一方で、仏壇へのお供え物として鏡餅ではなく「お供え餅」を選ぶ地域や家庭もあります。
どちらも丸餅をお供えするため、同じようなものだと思われがちですが、実は由来や意味、お供えする目的には明確な違いがあります。
今回は、鏡餅とお供え餅のそれぞれが持つ由来と意味、お供えの仕方まで順に解説していきます。
鏡餅とは
鏡餅の由来
鏡餅は、昔の鏡(銅鏡/青銅製の丸い鏡)に由来します。古来より鏡は神聖な道具とされ、「神様が宿るもの」と考えられてきました。
鏡餅は新年に訪れる「年神様(としがみさま)」をお迎えするための依り代(よりしろ)としてお供えされ、家にいらっしゃる神様が鏡餅に宿り、家族の健康や豊作をもたらすと信じられてきたのです。
鏡餅の形状や飾りにはそれぞれ縁起の良い意味があります。
・2段の丸餅:月(陰)と太陽(陽)を表し、「福が重なる」 「円満に年を重ねる」象徴
・餅の上にのせる橙(ダイダイ):家が「代々(だいだい)」栄える願い
・裏白(うらじろ):古い葉が落ちずに新芽が出ることから、長寿と繁栄の象徴
・ゆずり葉:親から子へ、延々と世代が受け継がれる願い
また、1月11日は「鏡開き」という行事があり、お供えしていた鏡餅を下ろして、家族の無病息災を願い、鏡餅を食べます。源氏物語に鏡餅と捉えられる表現があることから、平安時代には既に存在していたと言われています。
鏡餅はいつどこにお供えする?
鏡餅は必ずしも1つに限定されるわけではなく、家の中で年神様をお迎えしたい場所に、複数お供えしてもよいとされています。
・メインの鏡餅:床の間、リビングなど家族が集まる場所
・小さめの鏡餅:仏壇、神棚、台所、子どもの部屋など
お供えする高さは、「神様を見下ろさないように」やや高めの位置が良いとされています。向きはその年の恵方、または南向き・東向きが吉とされます。ちなみに2026年の恵方は南南東、2027年は北北西となっています。
お供えする時期は「正月事始め」とされる12月13日以降で、大掃除が終わった後にお供えします。
ただし縁起が悪いとされる以下の日にお供えするのは避けるのが一般的です。
・12月29日:苦餅(苦持ち)・二重苦
・12月31日:一夜飾り
しかし地域によっては、29日を「ふく」と読み、福を呼ぶよう12月29日にお供えする場合もあります。
お供え餅とは
お供え餅の意味
お供え餅は、墓前や仏壇にお供えする餅のことです。
こうして墓前や仏壇にお供えする行為には、故人やご先祖様を偲ぶ思いと、家族が平穏に過ごせるよう願う気持ちが込められています。
仏教において、お供えものは「五供」と呼ばれ、次の5種類から構成されています。
・香(線香)
・花(供花)
・灯明(ろうそく・提灯)
・水(浄水)
・飲食(食べ物)
餅は「飲食」にあたります。餅の原料である米は「稲の霊」が宿ると信じられており、米をついて作る餅は特に神聖な食べ物とされ、仏飯につぐ高位のお供えものとされています。
お供え物「五供」については、こちらの記事で詳しく紹介しています。
お供え餅はいつどのようにお供えする?
お供え餅は線香や水とは違い、常に置くものではありません。
主に年3回下記の節目にお供えします。
・お盆
・お正月
・法事
ただし、宗派や地域ごとの慣習によっては、特別な行事や特定の時期にお供えする場合もあります。また、お盆は故人や先祖の霊が帰宅すると考えられているため、ぼたもちや白団子をお供えする地域もあります。
お供え餅は主に弔事で使われるため、清らかさを示す白い餅が選ばれることが多いです。紅白の餅は慶事で用いられるため避けましょう。ただし、仏壇を新たに購入して「仏壇開き」をする場合は紅白の二段餅や紅白一対の餅をお供えします。
お供え餅の数には、これといった明確な決まりはありませんが、宗派やお寺によっては具体的に個数が定められていることもあるため、事前に確認しておけるとよいでしょう。
お供え餅は何の台にも載せずにそのまま置くこともありますが、仏具に乗せてお供えするのが正式な作法です。仏具は、供笥(くげ)や三方(さんぽう)、高杯(たかつき)などが使われます。使用する仏具は宗派によって異なるため、こちらも事前に確認しておけると安心です。
お盆の風習やお供えについて詳しくは、こちらの記事でもご紹介しています。
◆お盆とはどういう行事?起源や時期、風習に込められた意味を解説します
四十九日には特別な餅を供える
仏教では亡くなってから49日目に故人がこの世を旅立つと考えられています。そのため、宗派によっては、追善供養として四十九日の法要を行う習わしがあり、その際に「四十九日餅」と呼ばれる特別な餅をお供えする場合があります。
この際、お供え餅ではなく、「傘餅(かさもち)」という傘のように広がった形の餅を用意することもあります。傘餅のお供えの仕方は宗派によって異なり、諸説ありますが故人を守るものとしてお供えされます。
四十九日法要までの準備についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
◆四十九日までの過ごし方 〜すべきこと、してはいけないこと〜
仏壇に鏡餅をお供えしてもよい?
お正月は餅をお供えする節目の一つであり、墓前や仏壇に鏡餅をお供えすることには、「新しい年を迎える節目として、家族とともにご先祖様にもお正月を迎えていただく」という想いが込められています。
本来、鏡餅は年神様をお迎えする正月飾りですが、餅は飲食にあたるため、仏壇に鏡餅をお供えしても差し支えありません。ただし、宗派や地域によって習慣が異なるため、心配な方は事前に確認しておきましょう。また、喪中の場合は鏡餅をお供えするのは避けるのが無難でしょう。
お供え餅を下ろす時期は?
お供え餅を下ろす時期に明確な決まりはありません。一般的にはお参りが済んだ後や、お供え餅が痛む前に下ろします。お供え餅を長時間放置してしまうと、カビが発生し食べられなくなる可能性もあるため、適切なタイミングで下ろすことを忘れないようにしましょう。
下ろしたお供え餅は、鏡餅と同じく「お下がり」として家族で分けて食べることが一般的となっています。
お正月にはご先祖様へのご挨拶も忘れずに
鏡餅は年神様をお迎えするための依り代、お供え餅は故人やご先祖様へ感謝や思いを伝えるためのお供え物です。鏡餅もお供え餅も日本の伝統文化として、今も変わらず受け継がれており、願いや祈りを届ける大切な行事です。
故人やご先祖様への感謝、新しい年への願い。鏡餅とお供え餅には、どちらも日本人が大切にする「思いやり」の優しい気持ちが込められています。故人やご先祖様にも思いを向けながら、お正月に向けて準備し、新しい年を迎えることは、家族のつながりを改めて感じる大切な時間になるのではないでしょうか。
お正月にはお墓参りをして故人やご先祖様への新年のご挨拶も忘れずに行えるといいですね。
年末年始やお正月のお墓参りについてはこちらの記事をあわせてご覧ください。