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石焼きいもの石はなんの石?石のチカラと美味しくなる理由を解説

秋から冬にかけて街中に響く、「石焼きいも〜お芋♪」という独特のメロディ。誰もが一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。
生のさつまいもと焼きいもを食べ比べてみると、その甘さには驚くほどの違いがあります。実は、さつまいもが限界まで甘くなる裏には、「加熱の温度と時間」、そして「石の性質」という深い関係が隠されています。
焼きいも自体は日本だけでなく、アメリカや台湾、韓国、アフリカなど世界中で親しまれている食文化です。海外では炭火焼のものや、スパイスを使用したもの、紫色やオレンジ色など鮮やかな色の品種を楽しむなど、国ごとのバリエーションも実に豊富です。
しかし、「石の熱を利用して、じっくり甘みを極限まで引き出す」という調理法は、日本ならではの食文化の知恵とこだわりが詰まった独自の技法なのです。
今回は、石焼きいもが甘くなる仕組みや使われている石の種類、ご自宅で安全に石焼きいもを作る方法を解説し、石の持つ凄さとおもしろさをお伝えします。
石焼きいもに石を使うのはなぜ?
石焼きいもとは、焼きいもの調理法のひとつで、さつまいもを熱した石に包まれるように置き、余分な水分や調味料を加えず、直火ではなく石の熱でじっくり加熱します。
石の熱がさつまいも全体を均一に包み込み、じっくりと時間をかけて火を通すことで、中までしっかり火が通り、甘みが最大限に引き出されるのです。
では、なぜ石を使うとそこまで甘く美味しくなるのでしょうか?
まずは、さつまいもが甘くなる仕組みから解説していきます。
甘さの秘密は「ショ糖」と「麦芽糖」にある
さつまいもの甘さをつくり出しているのは、主に「ショ糖」と「麦芽糖(ばくがとう)」という2つの糖分です。
・ショ糖(生のお芋に含まれる甘み):収穫後の貯蔵期間中に少しずつ増えていく成分です。ショ糖が多いさつまいもは、コクのあるしっかりとした甘みを感じられます。
・麦芽糖(加熱によって生まれる甘み):生のさつまいもにはほとんど含まれておらず、加熱の過程で爆発的に増える甘みです。麦芽糖が多い焼きいもは、すっきりとした甘みになる傾向があります。
焼きいもを極限まで甘くするためには、この「麦芽糖」をいかに大量に作れるかが最大のポイントになります。
低温でじっくり温めることで「麦芽糖」が生まれる
麦芽糖を生み出す鍵となるのが、さつまいもに含まれる「β-アミラーゼ」という消化酵素の存在です。この酵素が加熱によってデンプンを分解し、甘い麦芽糖へと変化させます。
ここで最も重要なのが加熱の温度帯です。
・ β-アミラーゼが最も活発に働く温度:約60〜70℃
・酵素が壊れてしまう温度:約70〜80℃以上
電子レンジなどで急速に加熱すると、お芋の内部温度が一気に高くなって酵素が壊れてしまうため、デンプンが分解されず甘みが引き出せません。
さつまいもの甘みを最大限に引き出すには、「60〜70℃という狭い温度帯をキープしながら、1〜2時間かけてゆっくり加熱すること」が不可欠なのです。
石の「高い蓄熱性」が理想的な温度帯をキープする
家庭の調理器具で70℃前後の温度を1時間以上も一定に保ち続けるのは容易ではありません。そこで力を発揮するのが「石」です。
石の性質を物理的な指標で見ると、熱を蓄える能力(熱容量)が非常に高く、身近な例では、秋田の郷土料理「石焼桶鍋」なども、石が持つ大きな熱容量を利用してスープを一気に加熱・保温しています。
一度しっかり温まった石は冷めにくく、安定して熱を保持できるため、熱した石の中にさつまいもを埋め込んで間接的に温められ、急激な温度変化を防ぎ、酵素が活発に働く60〜70℃の温度帯を長時間キープできるのです。
「遠赤外線」と「輻射率」で芯までふっくら焼き上げる
もうひとつの重要な要素が、石から放出される「遠赤外線」です。
・熱を光として放出する「輻射率(ふくしゃりつ)」:熱せられた石は、蓄えた熱を「遠赤外線(光の波長)」として外へ放出します。特に黒い石は熱を吸収しやすく、蓄えた熱を効率よく放射します。日光で温まりやすいのと同様に、蓄えた熱をお芋に効率よく伝えることができます。
・表面を焦がさず芯まで加熱:遠赤外線はお芋の表面だけでなく、内部までじんわりと浸透します。必要以上に水分を蒸発させずに中心部まで均一に加熱できるため、パサつかず「しっとり・ほくほく」とした食感に仕上がります。
さらに、熱した石に直接触れることで皮の表面が香ばしく焼け、パリッとした皮と甘くしっとりした中身という、石焼きいもならではの絶妙な食感と風味が生まれるのです。
日本には、石焼きいものように自然の力をうまく利用した独自の調理法や食文化が数多く存在し、お寺で親しまれてきた「精進料理」もその一つです。こちらで詳しく解説しています。
旅館でよく見かける懐石料理も歴史や由来があります。こちらの記事で解説しています。
◆懐石料理とは?歴史や由来、食べ方のマナー、会席料理との違いを解説
石焼きいもの歴史
秋の風物詩として親しまれている焼きいもですが、現在私たちがよく目にする「石焼きいも」のスタイルが定着したのは、実は日本の長い歴史の中でも比較的最近のことです。
江戸〜明治時代は「かまど」や「壺焼き」が主流だった
江戸時代後半、さつまいもは庶民に広く親しまれるようになり、当時は「かまど」で焼くスタイルや、大きな壺の中にお芋を吊り下げて蒸し焼きにする「壺焼きいも」などが主流でした。
戦後の1950年頃、「石焼きいも」が誕生し大ブームに
現在のように熱した石を使って焼く「石焼きいも」が登場したのは、太平洋戦争が終わった1950年以降です。
東京向島の三野輪万蔵氏が考案したとされる石焼きいもは、石の熱と遠赤外線による驚きの甘さと旨味で、瞬く間に人々を魅了しました。
さらに、専用の器具をリヤカーに乗せて移動販売するスタイルが確立されたことで、街中で手軽に買えるようになり一大ブームが到来し、全盛期には、東京だけで1000人以上の石焼きいも売りがいたと言われています。
その後、昭和40年代後半になると、食生活の変化や海外ファストフードの進出などの影響を受け、移動販売の石焼きいも屋さんは徐々に姿を減らしていきました。
平成〜現代:スーパーでの販売と「第3次焼きいもブーム」
平成に入ると、焼きいも専用オーブンの普及によってスーパーの店頭などで手軽に買えるようになり、再び焼きいもブームが到来します。
また、「安納芋」や「紅はるか」といった品種改良が進み、従来の「ホクホク系」だけでなく「ねっとり・しっとり系」など多様な食感が楽しめるようになりました。
石焼きいもの「石」は普通の石と違う?
「石焼きいもに使われている石は特別な専用石なの?」と疑問に思う方も多いのではないでしょうか。
実は、特別な専用石が採掘されているわけではなく、熱に強く、熱をしっかり蓄えられる性質を持った天然石や砂利が幅広く使われています。
石焼きいもによく使われる石の種類
焼きいも屋さんや家庭用で使われている代表的な石には、以下のようなものがあります。
・天然黒玉石(那智黒石・黒玉石など):建築の敷石や庭石としても人気のある黒く滑らかな玉石です。密度が高く、熱を蓄える能力も高いため、熱をしっかり蓄えて冷めにくく、石焼きいもを作るのに適しています。
・大磯砂利(おおいそじゃり):観賞魚用の水槽(アクアリウム)の底砂としてよく用いられる、丸みのある小粒の砂利です。ホームセンターや観賞魚店で「玉砂利3号」などの名称で安価に入手しやすく扱いやすいため、専門店でもよく利用されます。
・伊勢砂利(御影石の砂利):和風庭園や外構で人気の砂利です。手軽に入手できることから屋台などで使われることも多く、2cm程度のものがよく用いられます。
・溶岩石(玄武岩など):小さな穴がたくさん空いている(多孔質)のが特徴です。遠赤外線効果が非常に高く、熱を柔らかく伝えるため、甘くしっとりとした焼きいもに仕上がります。
・雨花石(うかせき):マーブル模様が美しい中国・南京特産の石です。「加熱しても割れにくく跳ねない(内部の気泡が少ない)」という焼きいも用の石としての優れた性質を持ち、怪我を防ぐための安全な焼きいも用石として販売・利用されています。
・安山岩・角閃石・麦飯石など:非常に緻密で熱を均一に伝える能力に優れています。焼きムラを防ぎ、芯までふっくらと仕上げるのに適しています。
焼きいもにも使われる「御影石(みかげいし)」は、耐久性の高さから古くからお墓の建材としても親しまれてきた石です。御影石の特徴や魅力については、こちらの記事で詳しく解説しています。
なぜ「黒くて丸い小石」が選ばれるのか?
焼きいも用の石を選ぶ際には、種類だけでなく「色・形・サイズ」も重要なポイントになります。
・「黒い石」が適している:黒い物体は熱を吸収しやすく、蓄えた熱を光(赤外線)として効率よく放散する性質(高輻射率)を持っています。そのため、黒っぽい石の方がお芋にしっかり熱を伝えられます。
・「丸くて角がない形」が適している:角が尖った石を使うと、お芋をかき混ぜたり動かしたりした際に皮を傷つけて刺さってしまいます。表面がツルツルとした丸い玉砂利の方が、お芋を傷つけずに均一に包み込めます。
・「2〜4cm(大豆〜うずら卵大)」のサイズがベスト:大きすぎる石はおいもに密着しにくく、小さすぎる石は焼き上がったおいもの蜜にくっついて取り除きにくくなってしまいます。適度な隙間を作りつつ熱をしっかり伝えるには、直径2〜4cm程度のサイズが最適とされています。
奥深い石の種類について、こちらの記事で解説しています。
◆石にはどんな種類がある?代表的な岩石と特徴を分かりやすく解説します
お墓によく使われる石には色々な種類が存在します。こちらの記事で解説しています。
自宅で石焼きいもは作れる?
「おうちでもお店のような本格的な石焼きいもを作ってみたい」という方も多いのではないでしょうか。現在では、自宅のキッチンやアウトドアで気軽に使える石焼きいも用のアイテムが手軽に手に入ります。
石焼きいもに使う石は、次のような場所や方法で購入できます。
ホームセンターや園芸店
園芸コーナーや建材コーナーで販売されている「玉砂利(3号サイズ程度)」や「溶岩石」が入手しやすくおすすめです。
ネット通販
ECサイトでは「石焼きいも用の石」として、熱に強い天然石や溶岩石が小分けで販売されています。また、専用鍋と石がセットになった商品も市販されているため、初めて挑戦する方にはセット商品が手軽で安心です。
砂利はお墓の周りにもよく使われます。お墓の周りに砂利を敷く理由や効果については、こちらの記事で詳しく解説しています。
石焼きいもにベストな「さつまいも」の選び方
石だけでなく、使うさつまいもの「状態」によっても焼きいもの仕上がりは大きく変わります。
秋口に出回る採れたての新芋は水分が多く、ほくほくした食感になりがちです。さつまいもは収穫後に貯蔵・熟成されることでデンプンが糖化し、甘みが増していきます。しっとり甘い焼きいもを味わいたい場合は、じっくり熟成された晩秋から冬にかけての時期のおいもを選ぶのがベストです。
ほくほく感が特徴の紅あずまなどは、収穫後に時間をかけてゆっくり甘くなっていきます。熟成が進む夏頃の時期に使用すると、旨味とほくほく感のバランスが取れた美味しい焼きいもに仕上がります。
川原や庭の石を使っても大丈夫?
「わざわざ石を買わなくても、近くの川原や海辺、お庭で拾った石を使えばいいのでは?」と思う方もいるかもしれません。
しかし、拾ってきた石を加熱して使うのは非常に危険であるため、拾った石の使用はおすすめできません。その理由は次の2点です。
加熱による破裂(爆発)やひび割れの危険がある
川原や海岸にある石(特に堆積岩など)は、肉眼では見えなくても内部に微細な気泡や水分を多く含んでいます。
これを火にかけて加熱すると、内部の水分が膨張して蒸気圧が高まり、石が激しく弾け飛んだり、爆発(破裂)したりする危険があります。飛び散った石片や高温の蒸気で大ケガをしたり、調理器具を破損させたりする恐れがあるため、非常に危険です。
また、野外の石には成分が不透明なものも多く、加熱によって思わぬ成分や匂いが発生するリスクも否定できません。
法律や条例で石の採取が禁止されている地域がある
自然の中にある石を勝手に持ち帰る行為は、法律や地域の条例に違反する可能性があります。
・河川法や海岸法などによる制限:河川敷や海岸の石・砂利は、防災や環境保全、漁業権の保護などの観点から、無断での採取が厳しく禁止されているエリアが多く存在します。
・国立公園や他人の所有地:自然公園法や他人の敷地からの持ち出しは、処罰の対象となることがあります。
軽い気持ちで持ち帰ってしまうと、環境破壊につながるだけでなく法律上のトラブルに発展することもあるため注意が必要です。
まとめ
さつまいもは、古くから日本人の食卓を温め、庶民の生活を支え続けてきた伝統的な食べ物です。そして、そのおいしさを包み込んで届けてくれるのが「石」でした。
寒さが厳しくなる季節、熱々の石の中でじっくり焼かれた石焼きいもを手に取ると、お腹だけでなく心までホッと温まるような優しさを感じます。石焼きいもが世代を超えて愛され続けているのは、おいしさだけでなく、そうした「温もり」が私たちの暮らしに寄り添ってきたからかもしれません。
この「暮らしを支えるさつまいも」と「温もりを伝える石」の組み合わせと同じように、私たちは昔から、大切な人への変わらぬ想いを「石」に託してきました。それが「お墓」です。
時代を超えて想いを守り続けるお墓も、食べる人の心をホッと温める石焼きいもも、どちらも「石」を通して私たちの暮らしや心に寄り添っています。
もし、ご先祖様や大切な故人が石焼きいもの好きな方だったなら、ほくほくの焼きいもを持ってお墓参りへ出かけてみてはいかがでしょうか。石の温もりを感じながら手を合わせる時間は、きっと心温まるひとときになるはずです。
私たち石材店は石のプロです。焼きいもにぴったりの石があるように、お墓にもご家族の想いや風土に寄り添う最適な石があります。お墓づくりやお墓参りのことで気になることがあれば、ぜひお気軽に石材店にご相談ください。
お墓参りに持っていくお供え物のマナーや石材店はどのようなところかについてはこちらの記事でご紹介しています。あわせてお読みください。またお墓について気になることがあるという方は、お気軽にご相談ください。