お役立ちコラム お墓の色々
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- 供養をきわめる -
自宅にお墓を建てることはできる?手続きや注意点を解説

お盆やお彼岸に、遠くにあるお墓へお参りに行くことが大変だと感じることありませんか?
そんなとき「自宅にお墓があったら寂しくないしお参りも楽になるのに」と思うこともあるでしょう。
では、実際に自宅にお墓を建てることは可能なのでしょうか。
結論から言うと、自宅にお墓を持つことは可能です。ただし、すでにあるお墓から遺骨を取り出して自宅に移したいと考えている場合には、法律に合わせて対応する必要があります。
そこで今回は、自宅にお墓を建てる方法や注意点について解説します。
自宅にお墓を作ることは問題ないの?
上記のとおり、自宅でお墓を建てること自体は問題ありません。ただし自宅の庭など屋外の場合、お墓自体は建てることは法律上可能ですが、遺骨を納めることはできません。遺骨を自宅に安置しておきたいという気持ちがある場合は、代わりの方法を考える必要があります。
自宅の庭にお墓を作れない?
「自分が持っている土地だからお墓も自由に作っていいのでは?」と思うかもしれませんが、「墓地、埋葬等に関する法律」(通称:墓埋法、埋葬法)により、都道府県知事の許可を得ている墓地以外に遺骨を埋めることはできません。
つまり、自分の土地にお墓は建てられるものの、遺骨は納められないのです。
墓石だけを建てたいと考えているなら、法律上は問題ありません。ただし近所の人たちの気持ちに配慮することも忘れないでください。家の近くにお墓が建てられることを望まない人もいます。
近隣の人々と話し合って納得してもらう方法もありますが、墓石を建ててから何十年も経ち、近所の人たちの顔ぶれが変わったときに問題になる可能性があることも考えておきましょう。
なおペットの埋葬に関しては法律の規定がないため、自分で所有する土地に遺骨を埋めても違法にはなりません。
とはいえ、近所の庭に動物の遺骨が埋まっていることに抵抗感を持つ人もいるでしょう。近所付き合いなどに支障を来さないよう、よく検討することをおすすめします。
お墓や埋葬に関する法律については、以下の記事で詳しく解説しています。
◆墓地・霊園に関する法律を解説します。建墓のルールを確認しましょう。
ペットのお墓を作ることを検討している場合は、以下の記事も参考にしてみてください。
室内なら室内用のお墓を置ける
屋外とは異なり、リビングなどの屋内ならお墓を建て遺骨を納めても法律上の問題はありません。
とはいえ一般的なサイズのお墓を家に建てることは現実的ではありません。そこで自宅墓(じたくぼ)、宅墓(たくぼ)、家墓(いえはか、いえぼ)などの呼び名がある、自宅用に作られたミニサイズのお墓が登場しており、利用者も増えてきています。
遺骨が入った骨壺を置くだけでなく、一般的なお墓によく使われる御影石などで作られたミニ墓石を設置することで、「ここにお墓がある」という安心感を得られます。
仏壇に位牌を置いて故人を供養し、ときには手を合わせて心を落ち着けた経験がある人もいると思いますが、それに近い感覚と言えるでしょう。
ミニサイズのお墓は、自宅にいながらにして、従来のお墓参りに近い供養ができる点もメリットです。一方、「遺骨は土に還さないと成仏できない」という考えから自宅墓に抵抗がある人もいることには注意しましょう。
かつては四十九日などの限られた期間のみ遺骨を自宅で保管し、その後はお墓に納めるケースが大半でしたが、現在はある程度気持ちの整理がつくまで納骨せず、遺骨を自宅に安置することも珍しくありません。
そういった一時的な保管やずっとそばにいたいという気持ちに寄り添う形で、「自宅供養」「手元供養」は多様化しています。分骨して一部をお墓に納めたら残りをキーホルダーに入れて持ち歩く、手元供養用の小さな仏壇に安置するなど、さまざまな方法があります。もちろんペットの遺骨も、人間と同様に自宅供養や手元供養が可能です。
手元供養の詳細については、下記の記事をご覧ください。
なぜ自宅の敷地にお墓を建てている家がある?
住宅の敷地内ではないかと思われる場所にお墓が建っているのを見たことがある人もいるかもしれません。これはみなし墓地という、現代では例外的な存在となっているお墓です。
お墓や遺骨に関係する法律である墓埋法は昭和23年(1948年)に制定されましたが、もちろんその前から全国各地にお墓は建てられていました。墓埋法ができたからといって、それ以前に建てられ、大切にされてきたお墓を解体させたり移転させたりすることは現実的とは言えません。
そこで墓埋法の基準に合わなくても、制定前に建てられたお墓については今まで通り利用できるよう認め、「墓地台帳」に記載する措置が取られました。
これはあくまで例外的な措置であるため、今から新たに同様の墓地を作れるわけではないと考えておきましょう。
なお、1948年より前から利用されてきたお墓でも、必要な許可を得ていない場合は、無許可墓地になってしまいます。無許可墓地の利用は違法であり、罰せられる可能性があるため、もし親戚の家の敷地や田畑などにお墓があったら、念のため市町村など行政の窓口に問合せ墓地台帳に記載されているか確認するよう勧めてみましょう。
みなし墓地については、以下の記事で詳しく解説しています。
自宅に遺骨を移動させる方法と手続き
実は現在あるお墓から勝手に遺骨を取り出してそのまま自宅に移すことは法律上できません。
まだ納骨していない遺骨ならそのまま自宅で手元供養することが可能ですが、すでに納骨した遺骨をすべて取り出して自宅で保管したいと思っても、法律上必要な許可が下りないのです。
そのため現実的な対応としては、お墓から遺骨を取り出して分骨し、一部を自宅に置き、残りはどこかしらのお墓に納めておくという形になります。
今のお墓を残すか残さないかで必要な手続きが変わるため、順番に解説していきます。 なお、一度納骨された遺骨を移動する(改葬する)ときは必ず許可を得る手続きが必要です。もし無許可で遺骨の移動などを行ってしまうと違法と見なされる可能性もあるため注意してください。
今あるお墓を残す場合
1.分骨証明書を受け取る
まずはお寺や霊園などのお墓の管理者に相談した上で、分骨証明書を受け取ります。宗派などによっては僧侶に依頼してお経を唱えてもらうケースもあるため、あわせて確認しておきましょう。
なお墓地によって異なりますが、分骨証明書の発行に当たって新たな受け入れ先の承諾書類が必要となるケースもあります。
また、分骨証明書がないと、のちに自分たちで遺骨を管理できなくなったときに再度納骨することができなくなるため、証明書をもらわないで自分たちで分骨してしまうことは大きなリスクとなります。もし新たな受け入れ先の承諾書類を求められたら、あきらめることも含めて検討しなおしましょう。
2.石材店への作業依頼
分骨時には墓石を移動させる必要があるため、事前に石材店に相談し、作業を依頼しておきます。
3.遺骨の取り出し
墓石の下にある、遺骨を納めた場所(カロート)から遺骨を取り出し、分骨用の骨壺に入れます。
4.自宅で供養する
分骨後は、手元供養用のセットやミニサイズのお墓などを利用して供養しましょう。
しかし将来、自分自身が高齢になったときなどは、自宅にある遺骨をどこかに納骨することになるかもしれません。その際は、納骨するために分骨証明書が必要となるため、紛失しないよう大切に保管してください
今ある墓を墓じまい・移転するケースでも同様です。
今ある墓を墓じまい・移転する場合
1.分骨証明書と埋蔵証明書の受け取り
まずは現在お墓があるお寺や霊園に、改葬(遺骨の移動)と分骨を行いたいことを相談し、分骨証明書と埋蔵証明書を受け取ります。
指定石材店の有無や閉眼供養などの詳細も確認しておきましょう。
2.遺骨の移転先を決める
墓じまいやお墓を移転させる手続きを進めるに当たって、遺骨の納骨先を決める必要があります。納骨先として自宅など自分たちが所有する土地を指定することはできないため、自分たちに合った霊園や墓地を実際に見学してじっくり探しましょう。
3.墓地使用許可証の受け取り
遺骨の納骨先が決まったら、管理者に相談して墓地使用許可証を発行してもらいます。受入証明書など呼び名が異なるケースもありますが、遺骨を受け入れてもらえることを証明する書類であれば問題ありません。
4.改葬許可証の申請と受け取り
現在納骨されているお墓が建っている市町村に改葬許可申請書を提出し、改葬許可証を受け取ります。墓地使用許可証と埋蔵証明書がないと改葬許可の申請はできないため注意しましょう。
5.石材店への作業依頼
墓じまいやお墓を移転させる際には、遺骨を取り出したり墓石を撤去したりする作業が必要なため、石材店に相談して依頼しておきます。
6.閉眼供養や遺骨の取り出しなどを行う
閉眼供養などを行い、遺骨を取り出します。遺骨を取り出す際、家に安置する分とお墓に納める分を分けておきましょう。
7.新しいお墓への納骨
移転後のお寺や霊園に改葬許可証を渡し、新しいお墓に遺骨を納めます。自宅用に分けた遺骨は、自宅用のお墓に納めるなどして供養しましょう。
お墓を移転する際の流れは下記の記事で詳しく解説しています。
◆お墓の移動・引っ越しってどうやる?できる?詳しく解説します
改葬時のチェックリストも活用してください。
お墓をどう管理していくのかよく検討を
自宅の庭に従来のような遺骨を納めたお墓を建てることはできませんが、室内用の小さなお墓を利用するなどの方法で、従来の感覚に近い供養を行うことは可能です。
ただし一度納骨済みの遺骨を自宅に移したい場合、さまざまな手続きが必要となり費用もかかるため、慎重に検討しましょう。
また遠方へのお墓参りが大変な場合は、お墓参り代行を利用するという手もあります。
お盆やお彼岸など家族・親戚が集まったときに、先祖代々のお墓をどう守っていくか、お墓の相続(承継)は誰が行うかなどを考え話し合ってみてはいかがでしょうか。
家族や親戚の間でも、さまざまな意見があるでしょう。よく話し合った上で、皆が納得できる供養の形を探してみてください。
お墓参り代行については、下記の記事で詳しく解説しています。また、お墓の相続に関しての記事も合わせてご参考になさってください。