お役立ちコラム お墓の色々
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- 供養をきわめる -
お盆飾りの精霊棚(盆棚)とは?飾る時期・必要なもの・一般的な飾り方まであわせて解説

お盆の時期になると、ご自宅に故人やご先祖様の精霊(しょうりょう)をお迎えするために精霊棚(しょうりょうだな)を飾る風習が日本にはあります。
しかし、現在においては住宅事情や生活スタイルの変化から、「新盆の時にだけ飾る」「まったく飾らない」というケースも増えてきました。昔は夏の風物詩といっても過言ではないくらい、どこの家庭でも飾り付けられていたので、詳しい方もいらっしゃるかもしれませんが、多くの方は記憶の片隅にあるくらいで詳しくはわからないのではないでしょうか。
そこで今回は、精霊棚の基本的な意味から、飾る時期や場所、必要な飾り物とその意味、そして一般的な飾り飾り付けかたまでをまとめて詳しく解説します。
精霊棚(盆棚)とは
精霊棚(しょうりょうだな・せいれいだな)とは、お盆の期間中に、ご自宅にご先祖様や故人の「精霊」をお迎えし、お供え物をして供養するための祭壇のことです。お盆は、ご先祖様や故人の魂が、一時的に自宅に戻ってくるとされる期間であり、その魂をお迎えするための特別な場所として精霊棚が設けられます。
「精霊」とは、仏教の言葉で、祖先の霊や、故人の死後における魂を指します。この精霊たちをお迎えするための棚であることから「精霊棚」と呼ばれています。また、お盆に設置することから「盆棚(ぼんだな)」という名称でも広く親しまれており、地域によっては「祭壇(さいだん)」や「先祖棚(せんぞだな)」と呼ばれることもあります。
精霊棚を飾る時期・タイミング
精霊棚を飾りつけ始めるタイミングは、特にきまりはありませんが、一般的にお盆の初日までに準備するべきとされています。地域によってお盆の期間は以下のように異なりますので、
・全国的な「旧盆」では8月13日~16日
・関東を中心とした一部地域の「新盆」では7月13日~16日
・沖縄を中心とした一部地域の「旧暦盆」では旧暦の7月13日〜16日(地域によっては15日まで)
お住まいの地域の慣習に合わせて「お盆の入り(初日)」に間に合うように早めに準備しておくと良いでしょう。
精霊棚の片付けは、お盆の最終日である16日の「送り火」を終えた後に行います。送り火は、故人やご先祖様の霊を無事にあの世へお送りするための大切な儀式です。「あの世へ迷わず帰れるように」と願いを込めて送り火を終えたら、感謝の気持ちを込めつつ精霊棚を片付けます。
なお、故人が亡くなってから初めて迎えるお盆を新盆(にいぼん・あらぼん・しんぼん)や、初盆(はつぼん)と呼びます。新盆の際は、家族や親族が集まって盛大に供養することが一般的ですので、通常のお盆よりも準備期間が必要で、お盆の月の上旬ごろから飾り付け始める場合が多いようです。
2025年のお盆の期間や迎え火・送り火、新盆についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
◆最大9連休!2025年(令和7年)のお盆はいつからいつまで?◆家族の絆を深めるお盆の過ごし方◆
精霊棚を置く場所
精霊棚を置く場所は、地域の慣習や住宅事情によってさまざまで、室内でば仏壇の脇や床の間、玄関、室外では庭先やお墓の前などにも設けられることがありました。
近年では、都市部を中心に「室内に精霊棚を置くスペースがないし、庭もない」といったような住宅事情によって、仏壇の前や横に経机や小さい机などで棚を作り、精霊棚とすることが多くなっています。
ここで大切なのは、スペースの有無や大小に関わらず、「ご先祖様をお迎えし、感謝を伝えたい」という想いです。それぞれの家庭事情にあった家族みんなが落ち着いて手を合わせやすい場所を選びましょう。
精霊棚飾りに必要なものと飾り方、並べ方
精霊棚に飾るものや飾り方、並べ方は、地域や家庭ごとの風習、宗派によって異なりますが、ここでは一般的な精霊棚の飾り付けに必要なものとその飾り方、並べ方を紹介します。
全体の並べ方
精霊棚にはひな壇式のタイプと平机のタイプがあります。細かい並べ方は様々ですが、ひな壇式の場合、一般的には三段式で、最上段にお位牌、中段にお盆のお供物、下段に香炉やお鈴、ロウソク立てを並べます。平机の場合は正面の奥にお位牌、真ん中にお盆のお供物、手前に香炉やお鈴、ロウソク立てを並べます。
必要なもの・飾り方
棚やお位牌、常日頃からお仏壇前に置いてある香炉やお鈴、ロウソク立、花立以外にも精霊棚の飾りつけに必要なものがあります。順に紹介していきます。
- ゴザ(真菰)
ゴザ、特に「真菰(まこも)」で編まれたすだれ状のゴザは、笹竹と対で精霊棚の結界として用いられます。真菰は、古くからお釈迦様由来の伝承から神聖な植物とされています。
飾り方:精霊棚全体を覆うことのできる大きさの真菰のゴザがあれば一番ですが、小さいタイプの場合は、お盆のお供物の下に敷き、精霊棚全体は清潔な白い布やい草製のゴザで覆います。
- 敷物
真菰のゴザが小さい場合やない場合に、精霊棚にかける敷物です。一般的には、白い布やい草のゴザが用いられます。これは、清らかさを表し、ご先祖様の霊が安心して滞在できるようにとの願いが込められています。
飾り方:精霊棚全体を覆い、しわにならないように丁寧に敷き詰めます。
- 笹竹
精霊棚の四隅に立てる笹竹は、真菰のゴザと対で「結界」を意味し、笹竹に縄を張りめぐらし、邪気の侵入を防ぎます。
飾り方:精霊棚の四隅に、葉が付いたままの笹竹を立て、上部をつなぎ合わせるように縄を張って四角い結界とします。笹竹がない場合は、木製の柱などで代用することもあります。ひな壇式の場合やスペースが狭い場合は奥に対で二本のみ立て、上部を縄でつなぐことが多いようです。
- 真菰縄
真菰縄(まこもなわ)は、真菰を編んだ縄のことで、笹竹に張り巡らせることで結界の意味合いを持ちます。精霊棚への邪気の侵入を防ぎ、清浄な空間を作り出します。
飾り方:笹竹と笹竹の間を繋ぐように、精霊棚の周囲に真菰縄を張ります。
- 盆提灯
盆提灯(ぼんちょうちん)は、故人やご先祖様の霊が迷わず自宅に帰ってこられるように、道しるべとなる灯りです。故人の冥福を祈り、感謝の気持ちを伝える意味も込められています。種類は、絵柄が描かれたものや、シンプルな白い提灯など様々ですが、仏教においてのお供物の基本「五供」のうち「花」と「灯燭」を表すとして、花が描かれているものが多いです。
飾り方:昔は多ければ多いほどいいとされていましたが、精霊棚の両脇に一対で飾るのが一般的です。
仏教のお供えの基本である五供についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
- 素麺
素麺(そうめん)は、故人があの世から戻ってくる際に使用する馬の手綱に見立てられたり、極楽浄土への長い旅路の途中で食べる食料として供えられたりします。細く長い麺は、故人との縁が長く続くようにという願いも込められているようです。
飾り方:束ねたまま、茹でずに乾麺の状態で、精霊棚中央または中段にお供えします。
- 精霊馬・精霊牛
精霊馬(しょうりょううま)はキュウリで、精霊牛(しょうりょううし)はナスで作り、それぞれ割り箸や爪楊枝で足をつけます。
キュウリの馬は、お迎えに際して、できるかぎり早い再会を望んで、ご先祖様が少しでも早く自宅に帰ってこられるように、ナスで作る牛は、お送りに際して、再びの別れをなごり惜しんで、できる限りゆっくりとした足並みながらも、たくさんの供物を運べるようにとそれぞれに「お迎え」と「お送り」に際しての願いがこめられています。
飾り方:精霊棚の中央または中段に飾ります。迎え盆には頭を仏壇側へ、送り盆には頭を玄関側へ向けて置きます。
精霊馬・精霊牛の作り方など詳しくは以下の記事をご参考にしてください。
- ほおずき
ほおずきは、提灯に見立てられ、故人やご先祖様の霊が自宅に戻る際の目印となる灯りの役割を果たすとされています。また、鮮やかな朱色は、お盆の飾りを華やかに彩ります。
飾り方:精霊棚の飾り付けのアクセントとして、笹竹の間に張った真菰縄に吊るしたり、カゴに入れたりして飾ります。カゴに盛る場合は精霊棚の中央または中段に飾ります。
- 水の子
水の子(みずのこ)は、洗ったお米にナスやキュウリを細かく刻んで混ぜたものです。ご先祖様の喉の渇きを潤すという意味を持ちます。地域によっては水に浸した禊萩(みそはぎ)と言う花から水の子に水をふりかける儀式をおこなうことで「餓鬼道に落ちた人々が飢えに苦しむことがなくなる」という供養になるともいわれています。
飾り方:蓮の葉(ない場合は小皿)の上に少量ずつ盛り付け、精霊棚にお供えします。
- 閼伽水
閼伽水(あかみず)は、清らかな水のことで、空間を浄化し、あの世から一緒についてきた悪霊を祓うとされます。
飾り方:蓮の葉を用意し、浄水を注ぎ、精霊棚にお供えします。蓮の葉がない場合は湯呑みなどで代用します。この水を禊萩に含ませ迎え火や送り火を消す際にも使います。
- 盆花
盆花(ぼんばな)は、故人やご先祖様への供養の気持ちを表すために供えられる花です。菊、百合、リンドウ、ホオズキなどがよく用いられます。故人が生前好きだった花を供えることも可能です。故人やご先祖様を想いながら花を選ぶこと、その行為自体が故人やご先祖様に対する供養になります。近隣の野山で禊萩などの精霊花を摘み、それを精霊棚に飾ることで、盆花を依り代としてご先祖様が帰ってくるとされる「盆花迎え」という風習を起源とするようです。
飾り方:花立に活け、精霊棚の供物の脇などに飾ります。
夏のお盆のころにおすすめの供花についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
お盆の故人やご先祖様のお迎え・お送りは精霊棚を中心に行いますので、仏壇への特別な飾りつけは一般的には必要なく、お参りも精霊棚前で行うこととなります。
ただし浄土真宗の場合は、通常精霊棚を設けませんので、仏壇前に盆提灯を飾って、お供えをいつもより多めにするなどしてお盆の飾りとします。
精霊棚の飾りつけをしない浄土真宗のお盆の過ごし方についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
◆浄土真宗ではお盆をどう過ごす?盆提灯や飾り、歓喜会について解説
ご先祖様へ感謝の心を
今回は精霊棚(盆棚)について詳しくまとめてきました。
精霊棚は、お盆の期間中にご先祖様の精霊をお迎えし、供養するための大切な祭壇です。精霊棚の飾り方は地域や宗派によって異なりますが、お供えされたすべての飾り物には、ご先祖様への供養の想いや感謝の気持ちが込められています。
ご先祖様を敬い、感謝の気持ちを伝えるためにも、今年の夏はぜひお子さんも一緒に家族みんなで精霊棚を準備し、家族そろってお墓参りに行ってみてはいかがでしょうか。
お盆やお墓参りの意味、命のつながりを優しく伝えてくれる絵本もたくさんあります。お子さんと一緒に読みながら、家族でお盆の計画を話し合ってみるのもおすすめです。