お役立ちコラム お墓の色々

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- 供養をきわめる -

枕飾りとは?宗教別の配置・飾り方と基本のしきたり・注意点も併せて解説

葬祭基礎知識

枕飾り(まくらかざり)という言葉を聞いたことはあるでしょうか?

身近な人の不幸を体験した人でなければあまり耳にする言葉ではないかもしれません。ただ言葉自体は聞いたことがなくとも、テレビ画面や映画館のスクリーンで亡くなられた方の枕元に置かれた祭壇を見たことがある方は多いのではないでしょうか。

枕飾りは、故人を供養するための重要な儀式に必要なものの一部として、通夜前に一番に準備されるものです。しかし、昨今では自宅で故人の遺体を安置することはほとんどなくなり、自分で準備することもほぼなくなりました。

基本的には葬儀社に任せておけば用意してくれるものなので、自分で完璧に把握しておく必要はないものの、故人を見送る大切な儀式の一つなので、正しい理解を深めることが大切です。また、万が一自分で用意しなければならなくなった際にもあわてずに準備できるでしょう。

そこでこの記事では、枕飾りの基本的な意味や目的、宗教によって異なる配置方法やしきたり、そして実際の飾り方や注意点についてご紹介します。

枕飾りとは?

枕飾りとは、遺体を安置してから通夜までの間、故人が安らかに旅立つことができるように供養の一環として故人の枕元に飾られるお供え物一式の総称です。

通夜から葬儀・告別式の際に設けられる本祭壇(通常は本をつけず祭壇と呼ばれます)の前に設置される祭壇であることから仮祭壇とも呼ばれ、故人への供養だけではなく、通夜の前に駆けつけてくれる人々が手を合わせるための祭壇としての役割も担います。故人の枕元に飾り物を整え、心を込めて故人の穏やかな旅立ちを祈ります。

日本の各宗教に共通するものですが、宗教や地域によってその形式や内容は異なります。

枕飾りを行うタイミング

枕飾りは、人が亡くなり、安置場所に搬送された直後からご遺体の枕元に設置されます。安置場所とされるのは一般的に自宅や葬儀場で、安置されてから通夜の準備でご遺体が移動されるまでの間飾られます。ご遺体が安置場所に到着し枕飾りを飾る前や、納棺前に「湯灌(ゆかん)の儀」を執り行うこともあります。

湯灌の儀とは?意味や歴史、流れについて解説します

枕飾りと「後飾り」「枕勤め」「枕経」「枕花」の違い

枕飾りと混同されやすい言葉に「後飾り」があります。また同じ枕から始まる葬儀にまつわる言葉で「枕勤め」「枕経」「枕花」というものがあります。これらはすべて葬儀にまつわる言葉ですがそれぞれ異なる意味を持っています。

  • 後飾り(あとかざり)
    葬儀後、49日の忌明けまでの期間、火葬後のご遺骨を安置する祭壇のことで、後祭壇とも呼ばれます。枕飾りと異なり、仏壇の前に設置され、一般的には忌明けとともに回収されますが、納骨するまで設置しておく場合もあります。
    近年仏壇のある家庭も減ってきている中で、遺骨を安置する祭壇を設けるという意味では、増加傾向にある手元供養も一種の後飾り(後祭壇)といえるかもしれません。

 ◆多様化する自分らしい供養方法「手元供養」とは

  • 枕勤め(まくらづとめ)
    仏式の葬儀において、枕飾りの準備が整った後、枕飾りを回収するまでに行う一連の儀式のことを指します。
    まず僧侶を招いてご遺体の枕元で枕経をあげてもらい、故人の安らかな旅立ちを祈ります。その後も遺族の手で線香とろうそくの火を絶やさないようにします。葬儀までの間いろいろとあわただしい中ですが、ご遺族のだれか1人は故人の傍にいてあげられるとよいでしょう。

  • 枕経(まくらきょう・まくらぎょう)
    枕飾りを設置した後に僧侶を招いて唱えていただくお経のことを指します。単に宗教的な意味合いだけでなく、残された人々にとっても故人との別れを深く感じ、精神的に整理をつける大切な時間といえます。
    僧侶が読経している間、遺族も参加し、故人の冥福を祈ります。

 ◆枕経とは?行うタイミングと流れ・必要な準備・基本マナーもご紹介

  • 枕花(まくらばな)
    枕飾りに添えられる花で、ご遺体が納棺されて葬儀会場に運ばれた後も故人の傍に飾られます。故人とごく近しい間柄の方が贈るものとされており、故人への深い哀悼の意を表するとともに、遺族の悲しみにも寄り添います。

 ◆枕花、供花、献花、花輪…お供えの花の違いをまとめました

仏教における枕飾りの準備方法

仏式の枕飾りの場合、浄土真宗以外の枕飾りには宗派の違いはほぼありません。以下にあげる特定の物を用意し、正しく配置する必要があります。日本では大多数の葬儀が、仏教の教義に基づいて行われますので、まずは仏教における枕飾りを解説していきます。

準備するもの一覧

仏式の枕飾りには、白木の台または白地の布をかけた台とお鈴、「五供(ごく・ごくう)」と呼ばれる仏教で基本とされるお供え物が必要です。以下で詳しく見ていきましょう。

  • 白木の台または白地の布をかけた台
    まずはお供え物を置くための台を用意します。台の大きさはあまり大きすぎず、小さすぎずの半畳~1畳程度が理想です、台を置ける場所にあわせて選びましょう。
    足つきの白木の台が一番いいですが、普通のテーブルに白地の布をかけて代用しても問題ありません。

  • お鈴(りん)とりん棒
    鉢型の仏具、お鈴には、故人への祈りや供養の心を音に乗せて故人に伝えるとともに、邪気を払い、空間を清め、遺族・参列者の心を落ち着かせると同時に心を引き締め、厳かな空間を作り出す役割があります。
    お鈴を打ち鳴らす際に用いるりん棒とセットで準備します。

  • 「香」線香と香炉、線香立て
    仏教において、仏様や故人の食べ物は「香」すなわち香りとされています。その為お線香は、故人への供養や故人を導いてくださる仏様への感謝として欠かせないものになっています。その他にも邪気を払い、空間を清め、遺族・参列者の心を落ち着かせると同時に、あの世とこの世を繋ぐという役割もあります。
    線香を焚くための香炉と線香を置いておくための線香立てをセットで準備します。火をつけた線香は香炉の中央に1本立てます。浄土真宗の場合は寝かせましょう。

 ◆仏事で「お香」を使うのはなぜ?〜仏教におけるお焼香、線香の意味や歴史を解説します〜

  • 「花」花瓶と生花(樒や菊など)
    お線香と同様の理由でよい香りを放つ花もまたお供えとして欠かせないものです。また美しい花が時間の経過とともに枯れていくさまが仏教の教義である諸行無常を表すともいわれます。
    花をさすための花瓶とセットで準備します。花瓶はできれば単色無地のもの。花は樒(しきみ)や菊、スイセンなどを供えます。

 ◆なぜ?お墓に花を供える理由とは?

  • 「灯燭」燭台とロウソク
    ロウソクに火を灯してお供えする理由は、故人が道に迷わないためとされています。また、仏様の御心を照らし、遺族・参列者の心の迷い消すともいわれています。
    火の灯ったロウソクを立てる燭台とセットで1対準備します。ロウソクの色は白、燭台の色は黒、金、白のいずれかから選びましょう。

  • 「浄水」水とコップ
    お墓参りの際や仏壇へのお供えの際には故人や仏様の喉を潤すという意味で水やお茶または故人の好きだった飲み物がお供えされますが、ここでのお供えは「食欲」という欲からの解放、すなわちこの世の執着を浄化するという意味を持ちます。
    水を入れるためのコップまたは湯呑とセットで準備します。浄水とは言いますが、水道水で問題ありません。

  • 「飲食(おんじき)」一膳飯・枕団子と器
    こちらも浄水同様に普段のお供えと意味が異なります。普段のお供えではご先祖様への感謝を伝え、炊き立てのご飯で湯気を召し上がっていただくというような意味を持ちますが、枕飾りの場合はこの世への執着心の浄化です。
    炊き立てのご飯、米粉で作った団子とそれらを盛り付ける容器とセットで準備しましょう。炊き立てのご飯は一合を山のように高く盛り付けて、山のてっぺんにお箸を立てます。枕団子の数は地域によって異なりますので、葬儀社やご近所に確認すると良いでしょう。六道を表す6個、六道と浄土を表す7個、十三仏を表す13個、四十九日の審理を表す49個などが一般的です。どの場合もご飯同様に山の形になるように盛り付けます。

浄土真宗の場合、往生即成仏、すなわち亡くなるとすぐに成仏し阿弥陀如来の導きで極楽浄土に至るとされているので、執着を浄化する必要がなく、「浄水」と「飲食」は不要とされますが、お供えしてもマナー違反とはなりません。また地域によって「守り刀」が追加されるなど多少の様式の違いはありますが、基本的には上記の一式を覚えておけば安心です。

配置方法・飾り方

枕飾りは、仏壇の近く、または故人の枕元に配置します。以下の配置で飾るのが一般的です。

手前と奥の二列で並べます。

奥側は、左右の端にロウソクを立てた燭台、真ん中にお椀に盛った一膳飯、一膳飯の向かって左側に花をさした花瓶、右側に水を並べます。

手前側は、向かって左から順に、器に盛りつけた枕団子、線香立てにさした線香、香炉、お鈴。りん棒はお鈴をたたきやすいようにお鈴の手前に置きます。

仏教以外の枕飾りのセット内容と配置方法

枕飾りは仏教だけでなく、神道やキリスト教でも行われています。それぞれの宗教における枕飾りの方法について見ていきましょう。

神道(神式)の枕飾り

神道の枕飾りでは、八本の足がついた八足机と呼ばれる白木の机と、三方と呼ばれる台、花瓶と榊、ロウソクと燭台、御霊代、神饌と呼ばれる神様へのお供えが必要です。

神饌を常饌と呼ばれる調理済みの普段の食事と同じようなものにして、故人の好きだった食べ物を置く場合もあります。仏教の線香の代わりに洗米を桧枡に移す献米を行います。

仏式同様手前と奥の二列で並べます。

  • 八足机
    祭壇となる神具です。まずこれを設置します。
  • 三方
    神饌または常饌をのせるための台です。これを八足机の上、手前中央に設置します。
  • ロウソクと燭台
    仏式と同じで1対用意します。ロウソクの色も仏式と同じで白としましょう。これを三方の左右に置きます。
  • 御霊代
    故人の魂が家の守り神になり、子孫を見守るために、霊魂の依り代となる重要な神具です。これを三方の奥、奥側中央に設置します。
  • 花瓶と榊
    仏式とは異なり花や樒ではなく榊を用います。1対準備し御霊代の左右に配置します。
  • 神饌
    塩、水、洗米、御神酒をさします。三方の上に配置します。水を中央に配置し、手前向かって左に器に山形に盛った塩を、右に器に盛りつけた洗って乾かした洗米を配置します。器にうつした御神酒を1対用意し奥側左右に設置します。

地域によっては仏式の枕飾りを飾って、献米のみ神式で行うこともあるようです。

キリスト教の枕飾り

キリスト教では、本来枕飾りを行うことはあまり一般的ではありませんが、日本においては臨終の儀式で用いられた十字架、聖書、花瓶と白い花、ロウソクと燭台、カトリック教徒のみ精油を、布をかけた台の上に設置して枕飾りとすることもあるようです。本来行わないので特に決まりがあるわけではないようですが以下のように設置されることが多いそうです。

黒か白の布地をかけた台をまず設置し、手前と奥2列に用具を配置します。

奥側中央に十字架、その左右に花瓶に刺した白い花、奥側左右の端にロウソクを立てた燭台を置きます。

手前側には、カトリックの場合は向かって左から順に、精油、聖書、パン、水を。カトリック以外は精油を除いた3つを手前に配置します。

枕飾りの基本的なしきたりと注意点

ロウソクの火と線香の煙は絶やさない

枕飾りではろうそくの明かりを灯し、線香を焚くことが一般的ですが、その火と煙が絶えないように常に気をつけることが重要です。近年では燃焼時間の長い線香もあるので、負担軽減のため、そういったものを使う選択肢もありますが、できるかぎりご遺族のだれか1人は故人の傍にいて故人と語らうとともに火の見守りもできるとよいでしょう。

一膳飯(ご飯)は高く盛り付ける

一膳飯は、炊き立てのご飯をできるだけ高く盛り付けることが理想です。ごはんの高さによってこの世への未練を遮るという意味合いから高ければ高いほど良いとされています。納棺までの間、できるだけ高く盛りつけた炊き立てのご飯を、毎日供えられるといいでしょう。

共通するのは故人を思いやる供養の気持ち

どの宗教においても、どの地域においても、故人を見送る際に準備される品々や儀式には、様式や作法に違いはあれども、見送る側から故人に向けた哀悼の意や、故人が安らかに旅立てるように願う気持ち、供養の気持ちが存分に込められています。

そういった故人を想う気持ちが込められ、形にされた意味や様々な思いが込められた作法を知ることで、故人へ向けた供養と感謝の気持ちがしっかり伝わるよりよい最後の別れができるかもしれません。

供養の場で大切な、合掌や数珠についての記事もございます。あわせてご覧ください。