お役立ちコラム お墓の色々

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- 供養をきわめる -

「あの世離婚」夫と同じお墓・義実家のお墓に入りたくないときはどうする?

墓地・墓石コラム

「あの世離婚」夫と同じお墓・義実家のお墓に入りたくないときはどうする?

様々な価値観が尊重されるようになってきている現代、「家」「家族」「結婚」などについても考え方は多様化しています。更に亡くなった後のお墓のあり方や供養についても、それぞれの個性や選択が尊重される時代になっています。
そのような流れの中で、近年、生前は一つ屋根の下に暮らしていても夫と別々のお墓に入る、「あの世離婚」を選択する女性が増えていると話題になっています。

供養の形には、どのような選択肢があるのでしょうか?今回は、「あの世離婚」を考えた時、どのような方法があるのか?押さえておくべきポイントはどんなことか?ということについてお伝えしていきます。

「あの世離婚」とは

「あの世離婚」とは、夫婦で別々のお墓に入ることを指す言葉です。近年、夫に先立たれた妻が夫とは別のお墓に入る、妻が自分だけのお墓を建てるなど、夫や義理の両親とは別のお墓に入ることを望む女性が増えてきたことで、耳にすることが多くなりました。

「あの世離婚」をしたいと思う理由

あの世離婚を望む理由は様々ですが、「亡くなった後まで一緒にいたくない」「自由になりたい」などの理由が多いようです。また、夫とは仲がいいものの「義理の両親や夫の先祖と同じお墓に入ることに違和感がある」「夫の実家の宗教を受け入れられない」などの理由もあるようです。

増えてきた背景

日本では、男性が家族の代表として先祖代々「家」を引き継ぎ、妻は夫の家に入ることが基本と考える時代が長くありました。現代でもその名残はありますが、時代が変わり様々な価値観が尊重されるようになってきたことで、「自分らしい生き方」や「自分らしい供養の形」について考える女性が増え、生前に離婚するほどではないにしても、死後くらいは縛られていた価値観から解放されたいと思う人が増えています。このように、画一的だった価値観が多様化してきていることが背景としてあるようです。

どんな方法がある?「あの世離婚」を叶える供養の形

家(いえ)のお墓に入ることが基本だった昔と違い、近年では様々な供養の種類や方法があり、選択の幅が広がっています。「あの世離婚」を希望する場合は、どのような選択肢があるのか?関連する記事と合わせて紹介します。

自分だけのお墓を用意する

自分だけ、一人だけで眠るお墓の形を「個人墓」といいます。手ごろな価格で複数のパターンから選べるものや自由に好きなデザインを選べるものもあり、自分好みのお墓を建てたい方におすすめです。残される人の負担を考えて、供養や管理を霊園や墓地が代わりに行ってくれる「永代供養」のサービスがついた個人墓を選ぶ方が多いようです。1人用の納骨堂、樹木葬を利用する方もいらっしゃいます。

夫婦墓にする

「あの世離婚」を望む理由が、義父母との関係や、夫の実家の先祖代々の墓に入ることへの違和感などであり、夫婦仲は良いということであれば、夫婦だけのお墓を建てるという方法もあります。こちらも、お墓を継承しない、永代供養付きのお墓を選ぶ方が多いようです。二人分の区画を購入して、納骨堂や樹木葬を利用する方法もあります。

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実家のお墓に入る

「夫や夫側の家族ではなく、実の両親や家族と同じお墓に入りたい」と考える場合や、子供がいない場合などには、実家のお墓に入るという選択をする方もいらっしゃいます。

この場合、実家の家族やお墓の持ち主(祭祀承継者)から理解と承認を得る必要がありますので、事前の相談が必要です。墓地や霊園によっては、名字の違う人、宗教や宗派が違う人は同じお墓に入れないなどの規約を定めている場合もありますので、その辺りも確認するようにしましょう。

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永代供養墓を選ぶ

「あの世離婚」を希望する場合は、永代供養付きのお墓を選ぶ方が多いようです。永代供養とは、霊園や墓地の管理者が遺骨を預かって、家族に代わり供養や管理を行ってくれるという供養方法のことです。「一代限り」が基本のお墓であり、継承者がいなくても建てることができる、永代供養料を支払うことでその後の維持管理費が必要なくなるといったメリットがあります。ただ、事前に定めた期間が過ぎると、遺骨を合祀墓に移し合同供養されるのが一般的となっており、その後は遺骨を取り出すことが難しくなるため、それでも後悔しないのか、よく考える必要があるでしょう。

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あの世離婚を考えた時に取れる手段

本人が望む「あの世離婚」でも、亡くなった後の手続きや供養は残された人にしてもらうことになります。残される人の負担を減らし、できるだけトラブルを避けて希望を叶えるために取れる手段を、いくつかご紹介します。

遺言書

死後に効力が出るものといえば「遺言書」が思い浮ぶという方も多いと思います。遺言書は、相続に関する意思を示すための書類で、法的拘束力があるのは相続や財産の処分などの限られた内容のみとなりますが、その他に、希望する埋葬方法などを記すこともできます。
法的拘束力がないとはいえ、正式な書類として書き記しておくことは、残された人に想いを伝えるために意義のあることと言えるでしょう。

遺言を正しく伝えるための、遺言書の保管方法や注意点

死後事務委任契約

死後事務委任契約とは、あなたが亡くなった後の様々な事務処理を、事前に委任できる契約です。
残された家族や親族が、希望通りの供養をしてくれるのであれば必ずしも必要ではありませんが、葬儀や供養については遺言書に書いても法的拘束力がない部分となるため、契約しておくと安心です。

親族や知人に頼むこともできますし、弁護士や司法書士などのほかに税理士、行政書士、NPOや企業、一部の社会福祉法人など、死後事務の委任を受けている団体もたくさんありますので、必要に応じて利用すると良いでしょう。

「遺言」と似ているけど違う。「死後事務委任契約」とは

エンディングノート

「エンディングノート」に書いておくのも一つの方法です。あくまでも、本人の希望や情報を整理して書き残すものなので、法的効力はありませんが、埋葬に関する情報や、希望する墓地や霊園の場所などを詳しく書いておくことで、埋葬や供養をしてくれる家族や親族の負担を少しでも減らすことができます。前述した遺言書や死後事務委任契約に関する情報も、まとめておくと良いでしょう。

エンディングノート・遺言書・遺書の違い〜それぞれのメリット・デメリットとは〜

あの世離婚を考えた時の注意点

事前に周囲の関係者に希望を伝え、理解を求める

一人一人が入るお墓について法的な決まりはありません。しかし、「夫とお墓に入らない」「嫁ぎ先のお墓に入らない」ということは昔からの慣習と異なるために、親族などからの理解を得ることが難しい面もあります。
また、遺言書や死後事務委任契約があっても、家族がそのことを知らずに、手続きや納骨を進めてしまうということも少なくありません。

希望する供養の形があるのなら、自分や家族だけで決めたり、一方的に遺言書などに書いたりするのではなく、事前に家族や近しい親族など関係する人たちとしっかり話し合い、遺恨が残らない形にしておくことが重要です。その上で、本人の意思と分かるよう、遺言書やエンディングノートに書いておくと良いでしょう。

また、前述したように実家のお墓に入りたい場合には、お墓の持ち主にあたる「祭祀承継者」の承諾が必要であり、自分の意思だけでは決めることができません。実家の家族や親族にも事前に気持ちを伝えて理解を求めるとともに、埋葬可能かどうかを相談しましょう。

残される人に負担がかからないよう配慮する

あの世離婚を望む方は、家族や親族にお墓の管理や供養、継承と言った負担をできるだけかけないようにと、永代供養墓を選ばれる方が多いようです。
しかしその場合でも、夫や夫の実家のお墓以外に個人のお墓を離れた場所に建てると、子や孫など残された家族がお墓参りをしたい場合、2か所へ足を運ぶことになり、行き来の負担などが増えるかもしれません。

また、実家のお墓に入る場合には、子どもが将来、複数のお墓を守っていくことになる可能性があることも考慮しましょう。

お墓に入るのは自分ですが、亡くなった後の納骨や法要、お墓参りを行うのは、残される家族や親族です。関わる人たちの負担なども考慮しながらよく話し合い、お墓の残し方や供養の形を検討すると良いでしょう。

まとめ

人が亡くなった後、「ここのお墓に入らなければならない」という法律はなく、夫と違うお墓に入ることも可能です。
とはいえ、これまで大切にされてきた価値観と異なることを周囲に受け入れてもらうのは、簡単ではない場合もあります。夫や夫の家族と別々のお墓に入りたいと考えている方は、トラブルを避けるためにも事前の準備を行い、家族とよく話し合いましょう。

家庭の事情は様々で、供養や埋葬方法に「これが正解」というものはありません。自分を含めた家族が納得できる方法を考え、「自分らしい」エンディングを見つけることが大切といえそうです。

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