お役立ちコラム お墓の色々

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実家の墓地は大丈夫?田舎の山や田畑にある墓地「みなし墓地」の相続はどうする?

墓地・墓石コラム

実家の墓地は大丈夫?田舎の山や田畑にある墓地「みなし墓地」の相続はどうする?

「お墓」というと、墓地・霊園といったお墓のために用意されている区域や土地に建てられるものだと考える方が多いのではないでしょうか。しかし、地方や田舎の方に行くと、集落の近くの山や個人が所有する田畑などの敷地内にお墓が建てられているところがあります。そのようなお墓の所有者や相続についてはどのように決められているのでしょうか?
一般に言われる墓地の場合との違いや、相続方法などについて紹介していきます。

墓地の種類

一般の墓地の種類は大きく分けて3つ

墓地の種類は、大きく分けると3種類があります。具体的には「寺院墓地」「公営墓地」「民営(民間)墓地」があり、それぞれ経営主体が違います。法律に則って許可を得た場合にのみ墓地を経営することができるため、個人がお墓を建てる場合には墓地や霊園を経営する寺院や自治体・公益法人と契約し、その敷地にお墓をつくるのが一般的です。

山や田畑に建てられた墓地「みなし墓地」

前述した、墓地や霊園にある一般のお墓の他に、地方や田舎の方へ行くと、山の中や、個人が所有する田畑などの敷地の中に建てられている個人墓地が存在します。
また、集落墓地、部落墓地、村墓地などと呼ばれ、地域や自治会・複数の人が管理者や所有者となって建てられている野墓地・共同墓地もあります。
これらのような個人墓地や、地域・自治会などで管理されている野墓地・共同墓地のことを「みなし墓地」と呼び、一般に言われる墓地や霊園に建てられているお墓と区別されています。

「みなし墓地」について

墓地に関わる法律と合わせて、「みなし墓地」について詳しく解説していきます。

お墓を建てられる場所は法律で決められている

現在のお墓のほとんどは、昭和23年(1948年)5月31日に施工された「墓地、埋葬等に関する法律」(以下「墓埋法」)の決まりに則って運営・管理されており、許可されている墓地以外の場所に建てることはできません。
ここまで書いてきた「墓地や霊園にある一般のお墓」も、この現在の法律に沿って建てられ、管理運営されているお墓を指しています。

墓埋法:第10条
『墓地、納骨堂又は火葬場を経営しようとする者は、都道府県知事の許可を受けなければならない。』

墓埋法にはこのように書かれており、基本的には都道府県知事の許可を得た寺院(宗教法人)や自治体・公益法人しか墓地を運営することができませんし、たとえ個人が所有する敷地内であっても、自由にお墓を立てることはできない決まりになっています。

埋葬や墓地・霊園に関する法律、建墓のルールについてはこちらに詳しくまとめています。
墓地・霊園に関する法律を解説します。建墓のルールを確認しましょう。

昔はどこにでもお墓を建てることができた?

前述の通り、現在は、墓地と決められている場所以外で自由にお墓を建てることはできません。しかし日本では、昔からお墓を建てて故人や先祖を供養する文化があり、比較的自由な場所(衛生面や住民に迷惑にならないかなどは考慮された)に墓が建てられていましたし、昭和23年に埋葬法が施行されるより前には個人や一族、地域といったコミュニティでも墓地を作ることが可能でした。

お墓の歴史についてはこちらも参考になさってください。
いつからある?日本のお墓、墓石の歴史とは

昔から使われている墓地を現代でも認める法律

墓地についての新しい法律はできましたが、その規定に外れるからといって、先祖代々守ってきたお墓を急に廃止することもできません。ですから、新しい法律の運用を進めつつも、習慣的に個人や一族、地域コミュニティなどで管理してきたお墓を守れるような条項も作られました。

墓埋法:第26条
『この法律施行の際現に従前の命令の規定により都道府県知事の許可をうけて墓地、納骨堂又は火葬場を経営している者は、この法律の規定により、それぞれ、その許可をうけたものとみなす。』

これは、「現在の墓埋法によれば、決められた場所以外にある個人墓地などは認められないけれど、法律施行以前に許可されていた墓地は、今の法律でも許可されているとみなします。」という意味です。

「みなし墓地」

このように、昭和23年の墓埋法施行より以前から使われており、かつ当時の厚生省の許可を得ていた(自治体で認められていた)墓地を、「埋葬法で許可されているとみなす墓地」ということで「みなし墓地」と呼んでいます。

なお、「みなし墓地」には、個人墓地だけではなく、習慣的に地域や自治会などで管理され集落墓地、部落墓地、村墓地とも呼ばれる野墓地(のぼち)や共同墓地も含まれます。

みなし墓地の相続(継承)

一般の墓地とみなし墓地の違い

一般の墓地とみなし墓地のお墓の相続(継承)については、お墓のある土地に関わる権利に違いがあります。
一般のお墓は、寺院や団体が所有する土地の一部についての「使用権」(永代使用権)を取得しているのに対し、みなし墓地の場合はその土地の「所有権」を取得しています。
地区や自治会で運営する野墓地や共同墓地についても、運営する人たちの共同名義で「所有権」を取得しているということになります。

一般のお墓の相続(継承)方法

一般のお墓の相続(継承)については、まず民法によって定められた方法で、「祭祀承継者」(「祭祀財産」を受け継ぐ人)を決め、その後必要書類を揃えて、墓地や霊園での名義書換(めいぎかきかえ)の手続きをおこないます。
「祭祀財産」とは祖先を祀るために必要となる財産で、他の相続財産と違い分割できないため継承者を一人に決める必要があります。

一般のお墓は、お墓の敷地についての「所有権」ではなく「使用権」を配布しているだけの場合が殆どなので、墓地の管理者の規定に従い手続きをすれば良いということになります。

なお、お墓は「祭祀財産」という相続税の非課税財産に分類されるため、相続税はかかりません。

お墓相続の詳しい決まりや流れについてはこちらの記事をご覧ください。
お墓の相続(承継)の流れを解説します
お墓が相続税対策(節税)になるってホント?税金について解説

みなし墓地の相続(継承)方法

前述した通り、みなし墓地を持っている場合は一般のお墓と違い、その土地の「所有権」を取得しています。

そこで、みなし墓地の相続・継承の際には、祭祀承継者を決定した後、その土地の所有者の登記名義変更手続きを行うことになります。(継承者の決定については本来、一般のお墓の場合と同様に、民法に沿って祭祀承継者を決めるのですが、実際は遺産分割協議の中での話し合いで決定されることが多いようです。)

個人墓地については、法律上、「個人墓地は個人の持ち物であり、名義人が死亡した場合は使用許可が失効する」とされています。つまり、一度廃止してからもう一度許可を得る必要があるということになります。しかし、これは現実的ではないため、「祭祀財産」として名義変更のみで継承されることが通例となっています。

みなし墓地の所有者などについては、行政の「墓地台帳」に記載されていますので、行政の窓口で所有者や手続きの方法などを確認し、変更の手続きを行いましょう。

地域や自治会が運営する共同墓地の場合は、管理者がわからない場合もあります。そのような場合は、その地域に長く住んでいる方や、地域の事情に詳しい地元の石材店に聞いてみると良いでしょう。

なお、みなし墓地で土地の所有権を有する場合でも、「祭祀財産」となり相続税はかかりません。また、『登記上の地目が「墓地」の場合、固定資産税は課されない』という法律も存在し、相続後の固定資産税もかからないことになっています。

みなし墓地の相続(継承)に関わる注意点

法律施行前から建てられていたお墓の中には、実は法律上の手続きを踏んでいないという墓地も存在します。つまり、「みなし墓地」として登録されていない「無許可墓地」ということです。
この場合、法律に反していることになり、相続(継承)の手続きをすることができません。

ちなみに、無許可墓地は違法なため、「半年以下の懲役刑もしくは5000円以下の罰金」という罰則も定められています。しかし、悪意なく先祖代々守ってきたという場合が多いため、必要な書類を提出し承認されれば、みなし墓地として追認してもらうことも可能なようです。

みなし墓地のリフォームや改装・墓じまい

みなし墓地がありながら、「キレイにリフォームをしたいけど、山にあるのでなかなか手がつけられない。」「お墓のある地元には日頃から管理する人がいない。」「遠いし管理ができないのでなんとかしたい。」という方もいらっしゃるかもしれません。
そのような場合、みなし墓地であっても、リフォームや改装(移動や引越し)・墓じまいをすることは可能です。
ただし、改装の場合は現在の法律で許可されている墓地以外への移動は認められていませんので、その点は覚えておきましょう。

どのような作業が必要になるかなど、場所によっても変わりますので、地元の石材店に一度相談してみるのも良いのではないでしょうか。

お墓のリフォーム・改装・墓じまいについてはこちらの記事もご覧ください。
お墓のリフォームについて詳しく解説します
お墓の移動、引っ越し(改葬)について知っておくべきポイント
墓じまいの費用相場や手続きについて紹介します

まとめ

今回は、一般に言われる墓地や霊園ではなく、山や個人の敷地に建っている、昔から個人や地域で管理してきた墓地について詳しく紹介しました。
時代が変わり新しい制度が作られていく中でも、先祖代々受け継がれてきた文化も大切に守られています。

もしかしたらあなたの田舎の墓地も「みなし墓地」かもしれません。一度確認しておかれることで、万が一の時に慌てなくて済みますしご自身や家族の安心にもつながると思いますので、折を見て情報を集めてみるのも良いのではないでしょうか。

相続についてはこちらの記事も参考にされてください。
より良い終活のために知っておきたい「相続」について