お役立ちコラム お墓の色々

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御詠歌(ごえいか)とは〜起源や葬儀との関係を紹介〜

供養・埋葬・風習コラム

御詠歌(ごえいか)とは〜起源や葬儀との関係を紹介〜

仏教には、寺院や霊場の巡礼の際に唱える「御詠歌」と呼ばれる和歌があることをご存知でしょうか。地域によっては葬儀の際に唱える風習があるところもあり、故人の供養とも関わりがあります。
御詠歌とはどのようなものなのか、その特徴や御詠歌に関わる風習などについて紹介していきます。

御詠歌って何?

御詠歌とは、仏教の教えを五・七・五・七・七の和歌にし、節(ふし/旋律・メロディー)をつけたもので、一般の仏教の信者などが寺院や霊場の巡礼の際に唱えたり、地域によっては法要などの際に唱えたりする歌のことです。仏の徳や教えを讃える意味があります。五七調あるいは七五調の詞に曲をつけたものを「和讃」(わさん)と呼びますが、これも含めて広い意味で「御詠歌」と呼ばれることもあります。
「詠歌」とは元々、声を長く引き延ばして詩をうたうことです。日本では和歌を詠むことや和歌そのものを意味していましたが、現代では巡礼歌のことを指す言葉となっています。
聞くことでも功徳を得られるとするお経とは異なり、自分で唱えることで功徳が得られるとされています。

御詠歌の特徴

前述したように、五・七・五・七・七の31文字のものが一般的です。哀調を帯びた節まわしが特徴で、「詠歌」の意味にもあるように声を長く引き伸ばして歌われます。鈴(れい/金属製の小さな鐘の中に舌(ぜつ)と呼ばれる重りが吊るされ、上部の柄を持って振り鳴らす法具)や鉦(かね/鉦鼓(しょうこ)とも呼ばれ、金属製の小さな皿状で台座に伏せてのせ、撞木でたたき鳴らす法具)などを鳴らしながら歌われ、流派によっては他の楽器が使われることもあります。
31文字の御詠歌の中でも四国八十八ヶ所霊場の御詠歌や他の和讃では、例えば「唱え奉る(となえたてまつる)第一番霊山寺の御詠歌に~」のように、「唱え奉る〇〇(歌の名称など)の御詠歌(またはご和讃)」という節から歌い出すようになっています。

御詠歌の起源と歴史

御詠歌は、仏の教えや高僧の功績などを讃えたり伝えたりするためにインドで作られた、サンスクリット語の讃歌「梵讃(ぼんさん)」が起源とされています。これが中国に伝わったことで漢語を用いた「漢讃(かんさん)」が作られ、さらにこの文化が奈良時代に日本に伝わり、日本語に節をつけた「和讃(わさん)」が生まれました。
鎌倉時代以降、和歌が「仏教で用いる呪文の一種」であるとする考え方が生じ、さらに寺院・霊場巡礼の際に唱える巡礼歌として民衆に広まったものが今の御詠歌になったと考えられています。また、現在の歌い方は江戸時代初期以降に確立したと言われており、更に明治以後、金剛流、大和講、一定節などの流派が生まれました。
歌の出典を辿れるものは少なく、西国(さいごく)三十三所のものがもっとも古いとされています。

巡礼と御詠歌

全国の巡礼地の霊場にはそれぞれ、御本尊を讃えるなどの意味を持つ御詠歌があります。
御詠歌と関わって代表的な巡礼地としては、四国八十八所や西国三十三所が有名です。
いくつかの御詠歌をご紹介します。

西国三十三所:第1番札所、青岸渡寺(せいがんとじ)の御詠歌

青岸渡寺は日本三名瀑の「那智の滝」を見渡せる寺院です。
●補陀洛(ふだらく)や 岸打つ波は 三熊野(みくまの)の 
那智(なち)のお山に ひびく滝津瀬(たきつせ)

四国八十八ヶ所:第1番札所、霊山寺(りょうぜんじ)の御詠歌

巡礼の中でも弘法大師(空海)の足跡を巡る四国八十八か所巡礼は「遍路」と呼ばれます。全行程およそ1460キロといわれる遍路の最初の寺院「発願の寺」がこちらです。
●霊山の 釈迦のみ前に巡り来て
よろずの罪も 消えうせにけり

四国八十八ヶ所:第85番札所、八栗寺(やくりじ)の御詠歌

四国八十八ヶ所の御詠歌からもう1つ。
香川県高松市牟礼町には、私たちお墓きわめびとの会の展示場がございます。そのすぐ近くにも四国八十八ヶ所巡礼のお札所となっている八栗寺がありますので、そちらの御詠歌もご紹介します。
●煩悩を 胸の智火(ちか)にて 八栗(やくり)をば
修行者ならで 誰か知るべき

日本を代表する巡礼行「日本百観音」についてもこちらの記事でご紹介しています。
日本百観音とは?日本の名刹を巡る観音巡礼の旅

宗派・流派を紹介

御詠歌には宗派ごとに流派があり、現在も作られ続けています。代表的な宗派・流派を紹介します。

天台宗系

叡山流

真言宗系

大和流(実際は特定の宗派には属さない組織)
高野山真言宗の金剛流
智山派の密厳流
豊山派の豊山流
東寺派の東寺流
大覚寺派 の御所流

臨済宗系

妙心寺派の花園流
南禅寺派の独秀流
円覚寺派 - 鎌倉流
建長寺派 - 鎌倉流
東福寺派 - 慧日流

その他

浄土宗系…吉水流、西山派の西山流
曹洞宗系…梅花流
融通念佛宗系…魚山流

中には西洋音楽でいう長調の曲が多い、琴と尺八を用いるなど、特徴的なものもあります。

宗派が違うと葬儀やお墓にも違いがあります。こちらに詳しくまとめています。
宗派によるお墓の違い一覧

御詠歌はどんな時に歌うのか

霊場巡礼の時

御詠歌は巡礼歌とも言われるように、巡礼などで御詠歌のある寺院や霊場に参拝したときに歌われます。また、寺院や宗派により法会(僧侶や信徒など多くの人が集まり供養や説法をする行事)の際に歌われることもあります。お経と共に奉納することが一般的です。

葬儀や法要

現代ではあまり見られなくなってきましたが、地域によっては、故人の供養のために葬儀や法要で御詠歌を歌う風習があります。

近畿地方では、四十九日を迎えるまで毎晩、家族や親族で御詠歌を唱える風習があり、お盆にも家に集まった家族や親戚で歌われることもありました。最近では、7日ごとの忌日法要だけにする、省略し行わないなど、あまり行われなくなっています。

福井県には、 「講」 という同じ仏教宗派や地域の人々の集まりがあり、講に属する女性たちが、葬儀の際に御詠歌を唱えるという慣習が残っているところもあります。

現代ではあまり見られなくなってきた風習ですが、近畿地方や福井県での葬儀の際にはこのような習慣が残っていることを心に留めておくと良いでしょう。ご家族の葬儀などでどうしたら良いか悩む時には、僧侶や親族、地域の方に相談してみましょう。

供養の意味や種類、四十九日法要についてはこちらでも紹介しています。
そもそもご供養の意味とは?
きちんと知りたい、四十九日法要の意味やマナー


御詠歌には、宗派・流派や寺院の特徴を感じられるものや、私たちの心を穏やかにしてくれるものが多くあります。日常であまり触れる機会がない方も、寺院に立ち寄った際に巡礼者たちが歌うのを耳にすることもあるかもしれません。そうした機会には、節まわしや歌詞に耳を傾けて仏教や日本文化の風情を感じてみてください。


寺社仏閣の雰囲気や歴史に触れることが好きな方には、各地の有名な史跡や文化財についてもご紹介しています。
◆ファンなら一度はお参りしたい異人のお墓
・戦国編・幕末編・京都編

◆一度は見ておきたい重要文化財シリーズ
・奈良の旅編・滋賀の旅編・京都の旅編・大分の旅編
世界三大墳墓のひとつは日本に!仁徳天皇陵とは?

四国八十八ヶ所の御詠歌でも紹介しましたが、85番札所の八栗寺がある香川県高松市牟礼町牟礼には、お墓きわめびとの会が運営する墓石の展示場があります。(八栗寺から車で約12分)業界トップクラスのサプライヤーがご提案する墓石を一堂に集めた「日本で唯一の国産墓石ショールーム」です。高松へお越しの際には、ぜひ一度足をお運びください。
ご案内はこちらです。
お墓きわめびとの会ショールーム